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(2)教養型
ア. 生涯学習市場に乗り出した大学
 我が国の大学は今、確実に目減りしていくであろう財源を補うために、社会人教育を核とした新たな生涯学習機関への脱皮を余儀なくされている。18歳から22歳までの年齢層を中心に提供する教育から、有職社会人や高齢者、大学のない地域に暮らしていたり、身体に障害があるなど、何らかの理由で高等教育を受けられない人たち、あるいは大学入学予備軍としての小・中・高校生を対象とする教育へと、より幅広いレンジヘの展開が望まれている。
 
イ. 社会との連携・協働
 一方、こうした大学の都合とは無関係に、社会の側から高等教育の開放を求める外的要因が働いていることも確かである。しばしば「象牙の塔」などと椰楡されることがあるように、我が国の大学は以前からその閉鎖性が問題とされてきた。多くの大学は学問の独立を尊重するあまり、閉ざされた空間の中で高度な知の集積を築くことのみに専念し、社会との連携・協働には目が向けられてこなかった。
 実学重視で継続教育の風土を持つアメリカの大学と比べ、日本では理工系以外の分野でも産学連携の動きがさほど活発化しないことがそれを象徴しているし、リフレッシュ教育やリカレント教育、つまり社会人に対する再教育の重要性が早くから指摘されながら、一向に進展を見せてこなかったことなどに表れている。
 18歳人口の減少に伴い、豊富なコンテンツをバックグラウンドにした都市型キャンパスの開設導入など、大学が“生涯学習マーケット”に参入しつつあり、そうした動向を視野に入れながら、社会教育施設として地域になくてはならない存在となるよう、足場を固める時代が到来したといえよう。
 
図表1−5 大学が直面する現状と対策
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 現在は、大学を地域のシンクタンクとして活用していこうという、自治体、地域住民、企業のニーズが高まっており、こうした需要に呼応して、共同研究・受託研究、社会人入学、公開講座など、大学が地域や産業に貢献する幅広い活動も展開し始まっている。
 しかしながら、大学の持つ独立性が、未だに自治体や企業からみると「象芽の塔」になっていることも多く、今後、大学が持つ技術、情報、施設、人的資源などをさらに社会において有効活用していくことが期待される。
 従来の殻を破る意欲的な事例も見受けられるが、多くの大学においては、公開講座などの内容も文化・教養的なものが主であり、実社会に役立つ実践的な連携の可能性について、さらに検討・模索を積極的に進めていかなければならない。
 
参考文献
 
公益組織経営論 私立学校第3グループレポート
 
竹内洋著『学歴貴族の栄光と挫折』(99年中央公論新社)
 
文部省大学審議会のページ
 
株式会社霞出版社 学校法人経理研究会のぺ一ジ
 
中等教育と高等教育の間の「接続」の問題を取り上げた審議会議事録
 
高等教育フォーラムのホームページ
 
「アメリカのリサーチ・パークの歴史と実態」
 
代々木ゼミナール入試情報のぺ一ジ
 
代々木ゼミナール99年度私立大学入試状況
 
朝日新聞の記事より
1998年02月23日 朝刊学費頼み「脱却したい」 大學・お金の悩み:1(きょういく98)
1997年06月23日 朝刊 実学 めざせ実務家 大學・SFCの実験:3(きょういく97)
1994年09月16日 朝刊 授業の質を高める大学改革に(社説)
1994年02月17日 朝刊 受験生も私立大も必死 減る受験人口、強まる国公立志向 /神奈川
 
毎日新聞の記事より
2003年02月12日 朝刊 私大:「破たん予備軍」急増 処理の枠組み急務
 
個々人が論じているものとして







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