日本財団 図書館


(3)文化資源の今後の活用意向
(1)市町村毎の活用状況と今後の意向
 歴史、芸術、伝統工芸などがよく活用され、また、今後の活用意向も高い状況がうかがえる。
 市町村別にみると、文化資源を高次に活用している地域と、固有の文化資源を有しながらまちのイメージ形成等への結びつきは未だ弱い地域があるが、全体としては、既存の文化的要素を活かしたり、新しい文化を創造するための試みが広がる方向にある。
 下館市、笠間市、真壁町は、文化資源がまちづくりの核にあり、高次・複合的に文化を活用しており、今後の活用意向も高い。特に、笠間市は、陶芸を核とした「文化コングロマリット」地域と評価したい趣がある。
 他の町村では、固有性ある文化資源の賦存がありながら、必ずしもまちづくりのテーマとの結びつきは強くないが、コミュニティ形成、交流による地域活性化に、文化的事業を取り入れる姿勢もみられる(明野の町民参加型ミュージカル、内原町の資料館づくり等)。町村部では、市町村合併を視野に入れつつ、「まちとしての記憶」をどう先につなげていくか、切実な局面を迎えているとも考えられる。
 
図表2−17 文化資源の活用状況
市町村 まちづくりへの活用度
今後の活用意向
分野※
芸術 歴史 生活 産業文化 自然
結城市 ○町並み・伝統工芸   城下町   結城紬
桐下駄
 
下館市 ◎町並み・歴史
今後は芸術も(文化村・美術館計画あり)
板谷波山
田中嘉三
木村蕪山
青木繁
森田茂
薪能
城下町
三館
尊徳仕法
祇園祭   筑波山
鬼怒川
関城町 (資源があるが低活用)     どすこいペア 農業資料館  
協和町 古代の繁栄の歴史に注目しつつある   新治郡衙跡
小栗御厨
小栗祭   筑波山
明野町 ○住民参加の文化振興に力を入れつつある 薪能 安部晴明 町民ミュージカル   筑波山
真壁町 ◎町並み
今後筑波山に注目
歌人来訪 城下町
真壁城跡
祇園祭
人形浄瑠璃
石材・陶芸
真壁藍
筑波山
つくし湖
大和村 芸術(彫刻) 彫刻の里     石材 雨引山
加波山
筑波山ブナ
岩瀬町 ○石と桜 月山美術館
ラブロード50
行基 桜祭 石材
桜川・桜
笠間市 ◎陶芸 陶芸美術館
日動美術館
山下りん
北小路魯山人
笠間稲荷
笠間城跡
城下町
親鸞
陶炎祭等 笠間焼 佐白山
稲田石切山脈
友部町 今後コミュニティ形成に生かしたい   宍戸城跡
城下町
  宍戸焼  
内原町 今後取り組みたい
歴史資料館計画あり
  古墳群
満蒙義勇軍
伝説・方言
田園風景
有賀神社  
(注)
○:活用意向がみられる
◎:積極的な活用意向がみられる
※:
回答内容と添付資料より主要な資源を抽出
資料:
本調査の一環で実施した市町村アンケートへの回答及び添付資料より作成
 
(2)広域的活用状況と今後の意向
 各市町村とも、広域的な地域文化振興には、前向きな姿勢を示している。
 まず、対象地域における広域的なつながり方をみると、行政的には、広域市町村圏計画のほか、合併を意識した検討などがみられ、文化の共有化の視点からは、常陸国風土記の舞台、筑波山を囲む地域としての一体感などがみられる。
 また、市町村間をつなぐ「縁」として、イベントの存在が挙げられる。広域での体的発展を狙う「やっぺえ」、産業振興を狙う「ストーンフェスティバル」、住民の文化活動をベースとする「真壁郡親睦美術展」などが、市町村界を超えた範囲で実施されている。
 
図表2−18 広域的連携のようす
市町村 影響の強い広域行政圏域や運動 周辺市町村等との「縁」 文化振興で連携を強めたい地域
文化資源の共有意識 イベント
結城市 筑西広域圏計画     やっぺえ  
下館市 筑西広域圏の合併
筑西拠点都市地域基本計画
筑西東部地域振興事務研究会
筑波ブロック広域観光圏計画
二宮尊徳サミット
筑波山風景等
やっぺえ 笠間(芸術)
真壁・協和(歴史)
水戸・高崎(芸術)
関城町   やっぺえ  
協和町 古代新治国の範囲
小栗御厨の範囲
やっぺえ
真壁郡展覧会(親睦美術展)
広域圏
明野町    
真壁町 真壁氏統治国の範囲
伝統食(下館・協和・真壁・岩瀬・大和等)
古代道(新治郡〜筑波山)
筑波山一帯
大和村 関東ふれあいの道(筑波山系〜水郷地帯)
つくばりんりんロード(岩瀬−土浦)
やっぺえ
ストーンフェスティバル
筑西広域
真壁郡
岩瀬町   やっぺえ
ストーンフェスティバル
 
笠間市 水戸広域圏計画   常陸国風土記(笠間〜岩瀬・協和)
忠臣蔵サミット(笠間・真壁・全国約30市町村)
ストーンフェスティバル
陶炎祭(西茨城郡)
水戸広域圏
友部町       特になし
内原町 水戸市・内原町合併研究会 有賀神社の磯渡御(R50〜大洗R51)    
資料:
本調査の一環で実施した市町村アンケートへの回答及び添付資料より作成
 
 今後の広域的文化振興については、各市町村とも、基本的に肯定的である。広域的な中で分担することにより、特性の強化、共同的な人材確保が図れたり、効果的な広報活動が期待できる、相互に交流人口の拡大を狙うことができるなどがその理由である。
 一方で、広域連携の際には、費用負担や自治体の規模による力関係、会場や日程等の具体的な調整などを課題視する意向もみられる。
 フェアな関係の中で、共同体制による力の結集、交流促進による相互の活性化などが進むことが期待されているといえる。
 
図表2−19 アンケートにみる広域的文化振興の考え方
プラス面 マイナス面
広域的な中で分担や特性強化、連携、人材確保が図れる。一市町村よりパワーがある。
広域的推進で、周知・広報活動が期待できる。
広域的資源活用や施設利用で、相互交流・交流人口の拡大が狙える。
文化は一市町村で捉えられない。
地域間交流とともにその必要性は大きい。拠点施設を核とした文化情報網を築くなど、提供と交流の機会を創出したい。
費用負担の調整が難しい(市部の高負担化)。
共通イベントでは市部が占有しかねない。
やり方により、自主性・主体性が薄れる。
開催会場、日程調整等、課題は多いと思う。
(注)
◎は、同様の回答が複数みられた項目。
資料:
本調査の一環で実施した市町村アンケートへの回答及び添付資料より作成







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION