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(2)分野別状況
 歴史・文化・自然資源等を既存資料からリストアップしてみると(資料編:4対象地域における文化資源一覧)、件数としては、行・祭事、公園・施設など『文化』のジャンルに該当するものが最も多い。次いで、神社・仏閣や史跡等の『歴史』資源も少なくない。山岳や湖沼、動植物等の『自然』資源は、他の2ジャンルに比べると件数が少ない。
 
(1)歴史資源
<神社・仏閣>
 歴史資源のなかでは最も件数が多い。笠間稲荷神社(笠間市)、雨引山楽法寺(大和村)、月山寺(岩瀬町)、磯部稲村神社(岩瀬町)をはじめ、文化財の宝庫となっている社寺も少なくない。
 古代、歌垣の舞台となった筑波山神社(つくば市)、行基が開基したといわれる小山寺(岩瀬町)、親鸞が家庭を持って滞在し教行信証を著した西念寺(笠間市)、小栗判官鎮魂の寺小栗内外大神宮(協和町)をはじめ、特徴ある「いわれ」をもつ社寺も少なくない。
 
<史跡等>
 歴史資源のなかで次に件数が多いのが、史跡や伝統的建造物などである。「常陸国風土記」等に名をとどめる新治郡の郡衙・廃寺跡(協和町)、南北朝時代の関城跡(関城町)、奈良時代に端を発し江戸時代に栄えた下館、中世から栄華を誇った真壁、江戸幕府の要衝の一つ笠間、そして結城、宍戸(友部町)と、城跡の集積は、この地域一帯の特徴である。
 下館、結城、真壁、笠間、宍戸など、城下町のたたずまいを今に伝えるエリアも残っている。
 平将門伝説、親鸞の足跡、小栗伝説、安部晴明生誕の地など、固有な「いわれ」をもつ場所も少なくない。自由民権運動の加波山事件志士の墓(下館市)、満蒙開拓開拓青少年義勇団訓練所跡(内原町)など、近世以降の史実にふれる場所もみられ、有史以前から近代史に及ぶ歴史の痕跡が分布している。
 
(2)文化資源
<行・祭事>
 文化資源の中でも特に件数が多く、伝統的な祭、季節のまつり、地域おこしのイベントなど、バラエティに富む。
 伝統的な祭りでは、ご神体の大鉾が大洗まで渡る有賀神社の磯渡御(内原町)、雨引山楽法寺のマダラ鬼神祭(大和村)、大国玉神社の鍬の祭(大和村)、関城町や協和町の太々神楽、関城町や真壁町の火渉祭など、個性ある神事も少なくない。
 各所の桜まつり、つつじ祭り、菊祭り、祇園祭り、灯ろう流しなど、季節を彩る風物詩も各市町村でみられる。
 また、「やっぺえ」(下館市、結城市、関城町、明野町、真壁町、大和村、協和町、岩瀬町)、「どすこいペア」(関城町)、「町民ミュージカル」(明野町)はじめ、新しいイベントもみられる。
 
<施設>
 対象地域には、伝統工芸や芸術に関わる美術館・展示体験施設をはじめ、地域の歴史・文化・自然に根ざした公園などが多く分布している。
 特に、笠間市には、笠間焼を核に、多様な美術館・博物館等が集積している(笠間工芸の丘、茨城県陶芸美術館、茨城県工業技術センター窯業指導所、笠間日動美術館、田中嘉三記念館、スポーツカーミュージアム、石の百年館等)。
 結城市にも「染色資料館手緒里」、「稲城市伝統工芸館」などの施設が集積している。
 真壁町、岩瀬町、大和町、友部町などにも、その地の歴史や文化財を紹介する博物館・美術館がある。真壁町の歴史民俗資料館には、学芸員が4人常駐し、真壁城跡の発掘、城下町の伝統的建造物や伝統技術(藍染め、真壁塗り等)、伝統文化(人形浄瑠璃)の保存・復興などに力をいれ、広く広域の歴史にも光をあてている。
 町民ミュージカルが開かれる明野町には、大ホールのある文化センターが整備され、図書館併設で住民の文化活動の拠点となっている。
 「笠間芸術の森公園」、「笠間工芸の丘」、謡曲桜川で有名な岩瀬町桜川の「磯部桜川公園」、密集古墳群を擁する内原町の「くれふしの里古墳公園」、笠間・結城などの城址公園等々、地元の歴史や文化をベースに整備された公園も少なくない。
 
<人物>
 文化人・芸術家の活躍が多くみられる。陶芸家の板谷波山(下館市出身)、画家の田中嘉三(笠間市出身)、山下りん(同)などを輩出したほか、親鸞の「教行信証」(笠間市に滞在)、青木繁の「日本武尊」(下館市に滞在)は、この地から誕生している。北畠親房が「神皇正統記」を書き上げたのもこの地(関城に滞在中)といわれている。
 北小路魯山人はじめ、庵や工房を構えてここで創作活動を展開する芸術家は、今もみられる。豪農・豪商などの財力がスポンサーとなって偉人たちの逗留を歓迎したという面もあろうが、物語性の高い歴史を含みながらなだらかに連なる里山や美しい田園風景が、人にイマジネーション、インスピレーションを与えるベースとなっているともとらえられる。
 
<地域間交流・住民活動等>
 友好姉妹都市交流は少ないが、教育姉妹都市(関城町と北海道訓子府町)、サミット参加(大和町:まほろばサミット、笠間市:忠臣蔵サミット)など、特徴的な動きがみられる。
 住民を主体とする地域活動としては、国際交流(笠間国際交流の会、内原町の交際交流ふれあいの会)などもみられる(県ホームページ「地域活動団体」より)。
 住民の文化活動では、「下館・時の会」(伝統的建造物の保存活用)、内原町「古文書研究会」などがあり、広く市町村外住民の参加もみられる。最近は、真壁町に「真壁町街並み案内ボランティア」が結成されている。その他、生涯学習関連の活動も活発にみられる。
 「やっぺえ」は、「ふるさと塾」の卒業生が中心となって実行委員会を結成し、民間主導で実施されているものである。
 
<特産物>
 国指定の伝統工芸として笠間焼、結城紬、桐下駄・桐だんす(結城市)がある。この他、宍戸焼(友部町)、石材・石加工品(笠間市、大和村、真壁町、岩瀬町)などがみられる。
 味覚としては、小玉すいか、いちご、ブドウ、メロンなど果物が多く、加工品もみられる。米やそばの生産もみられ、対象地域の農産物は、県の名産品としても有望視されている。郷土料理としては、栃木県方面から明野町など茨城県西部でよくみられる伝統食「スミツカレ」があるほか、祭事食などに伝統が残されている。猪鍋(笠間市)などもみられる。
 
<ルート>
 古くは水運と陸路を組み合わせたダイナミックな物資流通軸につながり、現在は国道50号、JR水戸線が東北軸と常磐軸をむすぶ関東平野奥部の東西軸に位置する。北関東自動車道の整備も進みつつあり、車中心の交通体系が発達しつつある。
 移動を楽しむ仕組みとしては、廃線となった筑波鉄道の後に整備された「つくばりんりんロード」はじめ、比較的平坦な地形条件の上に、複数のサイクリングロードが設定されている。笠間方面の山岳・丘陵部には、「関東ふれあいの道」もある。
 観光ルートは、市町村ごとに設定されているものが多いが、「筑波山麓ラブロード50石匠のみち」(岩瀬町)は、国道沿道に石のオブジェを配し、通行者の目を楽しませている。
 
(3)自然資源
<地形・地質>
 山岳・丘陵は、岩瀬〜笠間方面に吾国山をはじめ、仏頂山、雨引山、富谷山など300〜500m級の起伏があり、自然公園として保全されているほか、「稲田石切山脈」(笠間市)など石材生産の基地などもあり、地場産業とむすびついている。
 河川・湖沼は、結城・下館市境を流れる鬼怒川のほか、世阿弥の謡曲や紀貫之の歌で有名な桜川(岩瀬町)、白鳥が飛来する白鳥湖(友部町)等々がみられ、公園として人々の生活にうるおいを与える水辺も少なくない(岩瀬町の上野沼など)。
 
<動植物>
 笠間市楞厳寺(りょうごんじ)境内に、国指定天然記念物のヒメハルゼミが生息している。
 つつじ、藤、あじさい、さくらなどの名所も、寺の境内にみられるものが多い。
 
図表2−11 対象地域における主要な文化資源分布略図
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