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〜水積成川、水到渠成〜
 時代は次々に新しい発想を求めます。
 新しい発想を見出すには、固定観念を捨て、すべての事象を相対化して見なければなりません。また、既成概念にとらわれることなく柔軟に物事を考えることが求められます。
 
 小さな水の流れも、集い合って流れてくると自然に土が削られ溝ができ、大河を形成します。やがて大河は大地を潤し、実りをもたらします。海へ流れ出ると、水蒸気となって大空に舞い上がり、雨となって緑の森に降りそそぎます。
 大地を湿らせた水は地下にたまり、幾重もの帯水層を形成し、源泉となって絶え間なく地上に水を送り出します。
 
 東京財団は、
新しい時代の到来を地下水脈のうちに予感し、
それに対応する方法を考え、
また同時に、対応できる人材を発掘し育て、
そして、新しい人達に意見交流と活躍の場を提供することを使命と考えます。
 “アイデア創出の源泉”となり、
日本の社会改善と意識改革に努めるとともに、
国際社会における知的貢献のイニシアチブを取りたいと考えます。
 
財団プロフィール
 東京財団は、日本財団(財団法人日本船舶振興会)およびモーターボート競走業界からの拠出金により、1997年7月1日に設立された民間公益法人です。その設立主旨は、四面を海に囲まれ、人や物質の移動を海上交通に依存する日本が、急速にグローバル化する今日の世界において、人類の直面する地球的諸問題を解決し、より良き国際社会を築くために、知的リーダーシップを取ることにあります。そのために、人文社会科学分野における高等教育と研究に関わる学際的、国際的活動を通して、国際性豊かな人材の育成と先駆的アイデアの創造を目的とする次の事業活動を実施しています。
 
研究推進活動
 社会、経済、政治、国際関係などの分野で私たちが直面する問題、また将来直面すると予想される問題に対し、民間独立の立場から解決のための方策を提示する研究プロジェクトを実施します。
 問題の本質を掘り起こすと同時に時代を先取りし、(1)将来の課題を発掘する「問題発見型」、(2)社会が直面している諸問題の解決に向けて、独自の施策を提案する「政策提言型」、(3)人々の意識や発想の転換を訴えかける「意識改革型」という3つのアプローチをとり、主に次のプロジェクトを実施しています。
 
―問題発見型
 「教育」は古くて新しい問題です。経済的には熾烈な国際競争にさらされ、政治的には相応の国際貢献を期待されている日本の現況にあって、将来にわたり豊かで平和な日本を維持するためには、次世代を担う日本の少年少女にどのような教育を与えるべきか、そもそも教育の目的とは何かという原点に立ち返りながら、現行の公教育制度に代わるべき新しい制度を模索するため、「日本の教育」研究プロジェクトを行います。また、人間形成に大きく係わる広い意味における教育では、「家庭や地域など社会の役割がより重要である」という人々の意識改革の必要性も訴えます。
 
―政策提言型
 当財団では、政府の中央省庁再編、続いて特殊法人改革のプロセスを検証し、それぞれの改革に関し独自の提言を行ってきました。特に、特殊法人改革については、政府が策定した整理合理化案に先立ち、個々の法人について改革の方向とその方法等(廃止・民営化等改革の方向および改革案、改革後の受け皿等具体的対処方針)に関する試案を提示し、世論を喚起しました。政府の特殊法人改革は、今まさに詰めの段階を迎えていますが、その動向を見極めながら、新たに公益法人改革研究プロジェクトを立ち上げ、一連の行政改革検証プロジェクトの集大成を計画しています。
 また、国際的なプロジェクトとして、日本とロシアを取り巻く国際関係、安全保障、経済協力など総合的な観点から両国関係を分析しながら、北方領土問題を解決して平和条約締結に至る道筋について、独自の提言を行うプロジェクトを実施します。これは、日本とロシアの関係が、2000年までに平和条約締結をめざすとした1997年のクラスノヤルスク合意にもかかわらず、その後むしろ後退している現実に鑑み、民間の立場から、閉塞状態にある両国関係の打開に向けて一石を投じようとしています。
 
―意識改革型
 公平性や効率性といった視点が先行しがちな社会福祉の議論において、一人ひとりの生きている人間への配慮、人間の尊厳に焦点を当てて、民間によるさまざまな新しい試みを検証しながら、「日本の社会福祉」研究プロジェクトを行い、福祉本来の姿を模索します。また、個人の尊厳を保つためには、自助の精神が不可欠であり、この意味で国民の意識改革が必要であることを訴えます。その上で福祉サービスの供給を主体としての国の関わり方を問い直し、民間との対比において、国の役割を考察します。
 これらの事業成果は、出版や映像などのメディアを使って発信されるほか、講演会、セミナー、国際会議などの開催により周知を図ります。さらには国会議員や官僚などの政策担当者とのネットワーク作りを通じて、政策形成プロセスへの働きかけを行います。時には、より大きなインパクトを与えることを狙って、海外の研究機関との共同研究という形で成果を発信することもあります。また事業によっては、国民一人ひとりに対する意識改革への提唱という形で成果の発信が行われます。
 これらのプロジェクトと並行して、研究基盤の整備のため社団法人政府資料等普及調査会と共同で「政策情報プラットフォーム」を制作しています。これは、行政関連情報、統計資料、審議会資料、調査報告書など、政府の政策立案に関わるさまざまな資料を独自に収集し、これらの政策情報をデータベース化して、一般の用に供することをめざしています。情報公開法の施行により、政府関連情報へのアクセスは飛躍的に改善された一方、申請主義など問題点も多々残されている現状を打破するために、さらなる情報公開に向けての一助とするものです。
 
人材発掘・育成プログラム
 先見性と独創性のある人材を発掘するとともに、若手研究者の育成もめざします。現在のところ6名の研究員が、「日本のNGOと外交政策」、「地域社会とグローバリゼーション」、「人権と安全保障」、「日本の対外情報発信」、「分権後の地方自治制度」、「イスラムと中東」といったテーマでそれぞれ研究を行っています。
 
奨学活動
 文化や価値観の異なる人々が、互いの独自性を尊重しながらも地球社会の利益のために共生するには、豊かな人間性と優れた指導力を備えた人材が必要とされます。当財団では、世界の諸問題に対する深い洞察力と果敢な行動力を持ち、政治や宗教の相違あるいは国の境を越え共通の利害のために貢献する人材の育成を目的に、人文社会科学および運輸・海事分野の大学院修学のための奨学金や各種奨励プログラムを提供しています。
 また、高等教育の国際化を支援するための各種研修・交流プログラムも実施します。これは、前述の人材育成を可能とする基盤の整備を民間非営利の立場から支援するものです。
 
ヤングリーダー奨学基金
 ヤングリーダー奨学基金(SYLFF)プログラムは、人文社会科学分野の大学院生を対象とする奨学金事業です。財団が直接学生に奨学金を提供するのではなく、日本財団(財団法人日本船舶振興会)から寄贈された基金の運用益を使って、大学が独自の運営委員会の決定により学生に奨学金を提供する点が特徴です。本事業全体の運営は当財団奨学事業部が担当しています。1987年にプログラムが開始されて以来、これまでに世界43ヵ国65大学(次頁リスト参照)に各々100万米ドルの基金が寄贈されました。2002年8月現在、奨学生の数は、全世界で約8,500名にのぼっています。また、当財団では、奨学金事業の運営のみにとどまらず、SYLFF奨学生や基金校の大学教職員等を対象とする様々なフォローアップ・プログラムを独自に実施して、基金校や奨学生の間のネットワークの活性化をめざしています。







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