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[質問]先ほど、コミュニティビジネスカレッジの3ステップというお話がありましたが、最後の3番目のところは一体何なのでしょうか。
 
片岡 本当は事業計画だとかホームページを使って、みんなにわかるように発信しようなんていうのを一応は技術的にはやるのですけど、実のところは覚悟を教える。
 例えば光市というところに酒蔵コンベンショセンターをつくろうということで改装に1,000万要るわけです。その花本という社長が500万出すとします。300万は市民バンクが融資する。
 あと200万どうしましょうと言ったら、学生社長が10万円ずつ出すと10社で100万になるが、それでも100万円足りない。
 金子さんという21歳のとてもかわいい女の子が社長なのですけど、「わかりました。私が100万何とかしましょう」と言った。あと100万といったときに、おじさんたちは「事業計画がもう少し明確にならないと」とか、色々とぶつぶつ言って、結局出さないわけです。
 そうすると、山口大学3年の山崎さんという女の子が、「わからないんですか。覚悟なんですよ、覚悟。皆さんも自分も覚悟、やる人も覚悟。それがなければ始まらないじゃないですか」と、こう言って泣き出しちゃって、朝日新聞の記者が東京から取材に来て、「ああ、至福の時間でした」と言っていました。
 
[質問]すごく楽しいお話をありがとうございました。お伺いして、先ほど40代以上の方が社会的影響力を失ったほうがいいというような過激なことを仰いましたが・・・。
 
片岡 組織内での影響力です。
 
[質問]ただ、最初のところで、このまま日本が沈むのか、まだ大丈夫なのかというところで、あとはスピードの問題だとおっしゃりましたが、今まで女性の力を盛り立ててきて、今は若者の力を盛り立てようとしているのかなと思うんですけれども、さらにスピードアップするときに、40才以上の力というのが実はすごく大切なんじゃないかなと思っています。若者が頑張るのは勿論ですが、ぜひ、その方々にこそ頑張っていただけたらなと思うのです。
 コミュニティビジネスカレッジの話で、やめていくという方もいらっしゃるようなのですが、中には残る方もいる。そこの手ごたえというのですか、40才の方たちが、まだいるのだという話が聞ければ、私としても勇気づけられるかなと思っています。
 
片岡 どこで頑張るかということを私は言っているので、第一番目のセクターの、あるいは第二番目のセクターの中で管理職として頑張るな、と言っているのであって、地域で頑張ってくれていいのです。そういうソーシャル・アントレプレナーになりなさいと言っているのです。
 銀行だって、マスコミだって、行政だって、40才以上がいなければ、下の人はすごくハッピーになると思います。世の中をハッピーにしなきゃいけないということと、カレッジでも残った人たちの中に40才以上の人はたくさんいるけれども、その人たちはすごく素直です。
 私は、変わりやすい順番に女性、若者と働きかけ始めているわけですけれども、おじさんだけは難しいからやるまいと思ったのです。彼らはもう変わらないと思っていたのだけれども、変わりますね。すごく素直。
 さっき言ったように、若者とかそういうのから素直に教わり出しました。勿論だめな人はたくさんいます。しかし、3分の2ぐらいはそういう感じです。変わろう、パラダイムは変わっているのだ、自分も変わることは大事なのだと思っている人がその中から何人か出てくればいいんで、おじさんにもすごく可能性はあります。実は、今年の最大の驚きはそのことです。
 
[質問]コミュニティですが、例えば東京に住んでいるとしたら・・・。
 
片岡 どこにでもコミュニティはあるのです。隣の人とのコミュニケーション、あるいはバーチャル上でもあっていいわけです。想像力豊かだったらアジアでもいいわけです。
 
[質問]私は62歳で、小さい会社の社長をやっていますが、ある地域でコミュニケーションハウスを始めました。
 色々な人に集まってもらって、この日曜日にも大体34、5名集まって、エコマネーで地域をつくろうとか、市役所の連中にも来てもらって町を運営していこうとか議論しています。
 この活動がどんどん拡大しつつあって、会社をやめた人がその場所を使って、今、お店づくりをやろうとしています。農業を始めている人もいます。非常におもしろいのですが、先ほどのお金を集めるというサイドの話が極めて現実的に現状は難しいのです。
 我々の仲間で市会議員なんかも来ているんですが、「おまえは社長業で稼いでいるから当面はとにかくここを成り立たせるためには稼いできて投入しなさい」と。だから、資金源になっているような感じになっている。
 先ほど言われたような皆が盛り上がるミッション、共感、仕組みをつくるということ、ここまでもってくるプロセスがまだ私の中ではイメージできていない。
 福祉をやる人からみれば、10円、100円の話でしか物事が動かない。500円を超えるともう大変なのです。例えば、その建物は木造2階建てで24坪なのですが、一部屋をフルに会議で使う場合も、1人200円です。電気代も要りますし、ガス代も水道代も要りますから、半日使って最大1、000円という使用料をもらうのですが、これが高いと言う人がまだいる。
 ここのところ、感覚的にもう少し地域財を集める手法というのですか、これをお教え願えるとありがたいなと思っています。
 
片岡 今伺っていて、おっしゃるような仕組みづくりをどうやるかという、タウンマネジャーの学校をつくろうかなというのにぴったりな話だなと思いました。自治体なんかで破綻した3セクを立て直すためにも、そういう経営者をつくってほしいというニーズはすごくある。
 あと一つは、お金の問題ですが、やっぱり貸し借り勘定です。だから、中心になっている人がどれだけ貸し借り勘定をつくれるか。やっぱり中心になっている人が貸し借り勘定のキャパシティが大きければ金が集まってくるんじゃないでしょうか。秘訣はそれだけしかない。だから、たくさん稼いで、たくさん貸しをつくってください。本当にいい人生だと思います。
 
[質問]私は今、東京の郊外の町で市民活動のためのプラットフォームと、個人的にNPOを来春までに立ち上げようと準備しているのですが、先ほどの、地域でスクールなどを含めて、色々な起業をしようとする人たちのためにファンドをつくって、起業を支援するというくだりがありましたが、このファンドづくりの話がとても気になっています。
 ファンドでたくさんお金を積んでもうまくいかないみたいな話も他人から聞いたりするのですが、片岡先生が山口に行かれて、ここ3年ぐらいで色々な学生や地域の社長さんを学校で教えて、それにファンドをつけるという、そのファンドのほうの立ち上げを山口の地域でどういうふうにされたかというあたりを、ぜひもう少し突っ込んで伺えればと思います。
 
片岡 市民バンクではこれまで109件融資をして貸し倒れが1件もない。ファンドを集めるかぎは何かというと、成功事例です。
 2つ目がそれをおもしろがってくれる演出です。例えばケーキ屋さんに融資したら、利息のかわりにケーキが年に2回配当として来るとか、そういうようなおもしろさです。
 ですから、お金と思っちゃいけないのです。お金は単なる道具です。さっきの「アイデア、アイデア、アイデア」じゃないけど、おもしろいことと成功事例が信頼につながって、お金が集まってくるということです。
 
[質問]印刷屋を経営していますが、NPOとか市民活動とか全く関心がない中、少し縁があって来ました。お話を聞いて、これ、どこの国の話なのか、いつの時代の話なのだろう、何か、100年前なのか、100年後なのか、それとも10年後なのか明日なのか、何かすごく不思議な感じを持ちながら、不思議な体験をさせていただきました。
 先ほど大学生の女学生が「覚悟なんですよ」と言った、そこまでの覚悟を生むコアとなるミッションはどういうものだったのか、ミッションが強ければ何でもいいのか、今まで手がけられてきた事業の中で、コアとなっているミッションを幾つかご紹介していただければ、「あ、なるほど」と少し腹に落ちてわかるような気がするのですが。
 
片岡 今、おもしろいなと思ったのは、100年前なのか100年後なのかの話しで、自分でもそう思います。日本社会がどのぐらいの速さで沈むかによって、こういう社会にならざるを得なくなる。
 意外と沈み具合は激しいから、行政はほとんど予算を組めなくなるみたいなことがたくさん出てくると、いやが応でもNPOにシフトせざるを得ないのです。
 あと一つが、ミッションと言いましたけれども、本当のことを言うと、実は競争です。ものすごく強烈なクリエイティブ競争をやっています。アイデア競争であったり、成功事例競争であったり、そういうのに頑張っている連中はみんな意地っ張りです。
 その中で男はあまり参加できなくなっちゃっています。競争力に差があり過ぎて勝負にならないのです。男は「ちょっと変わった何とか君」とか軽く言われちゃう。そのぐらい学生の中で、一般社会もそうかもしれないけど、女性の競争心はすごい。
 そこに火がつくと、集団としてのエネルギーを持ちます。それで、年じゅう摩擦がすごい。その摩擦がエネルギーと熱を生むという感じかもしれません。
 例えば、ゲームですからルールづくりをやるわけです。地域の問題を解決する人たちが集まるステーションをつくろう、フィールド競技をやりましょうと決めると、それに向かってみんな、がーっと行くわけです。
 そのミッションへの思いが強いからと決まる要素はあまりなくて、競争で決まる。僕の言っていることは全部ゲームのルールですから。
 そのときにミッションというよりルールをつくって、フィールド競技かトラックかを参加者に決めてもらう。ぼくはいつもそうしているのです。市民選挙というと、市民選挙というルールの中でどうやろうかということが必要だと言っているわけです。参加者は勝手に競技をやっているわけです。
 最初はみんな「何やってるんだ、あいつ」とか言っている。「ああ、必要だね」と言う雰囲気ができてくると、「誰が先端か、あいつは随分飛ばしてる」とか評価される。
 だから、地域にそういうプラットフォームをつくりましょうというと、これはだんだんそうなってくるのです。行政が崩壊して、問題が解決できなくてみんな困っちゃうから。先見的なフィールドとルールを決める。
 40才以上の人たちというのは組織にいても暗いし、下からは嫌われるわけですから、そこに「じゃあ、おれもやるか」という人たちが集まってくるわけです。
 そういう人たちが参加し始めると、その中で競争が起こるわけです。だから、多分、稼ぎ競争からクリエイティブ競争への演出、プロデューサーが必要なのです。
 
[質問]表はNPOがやっているが、背後に大きな利益団体があって、ただお金がNPOを通してその団体へ流れていくという状態ができているのを色々と見る。そうすると、このNPO自体の存在、信頼性といったところが非常に問題だというのがありますが。
 
片岡 いいのです。NPOだからって全部信用できるのではなくて、一個一個見ればいいのです。私はほかのところに全然興味がないから、今言われたようなところは全然気になりません。もうほかのことは気にしなくていいのです。自分がやるだけです。







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