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マンガ・カリキュラム事業:早稲田大学国際部寄附講座報告書「マンガとアニメ:日本文化・社会の表現」

 事業名 基盤整備
 団体名 東京財団政策研究所 注目度注目度5


 学生―いくつか質問があります。アメコミの衰退がひどくて、見込みがなさそうなのには、本当に悲しくて落ち込んでしまいます。日本マンガの翻訳版に人気が出れば、滅亡しつつあるアメコミは、すっかり取って代わられてしまうのでしょうか。もし、アメコミにまだ希望があるのなら、日本人がやっていることをどうして試さないのでしょうか?カラー刷りをやめて値段を大幅に下げ、定期的に買えるようにするというようなことです。それに、フランク・ミラーのような人は、まったく違うスタイルを使っています。どうして、試してみないのでしょうか? 競争力を失わないための試みが十分でないと思うのですが。
 
 リービー―すばらしい点をついていると思います。まず第一に、アメコミの作者は皆、新しい機会を探していると思いますし、私達も彼らと話を始めています。アメコミの漫画家の中にも非常に才能のある人がいます。彼らは、絵はこう、ストーリーはこう、というように、マンガの一定の形式に慣れています。最大の課題のひとつは、あなたがおっしゃった点、つまりカラー対白黒です。この問題については、私達もアメリカ人漫画家によく話をしています。「白と黒をもう少し強調しようではありませんか」と。彼らも試してみたいのですが、不安なのです。
 課題のひとつは遠近感です。美術の専門的な話になってしまいますが、アメリカの漫画家は奥行きを出すために色を巧みに使います。しかし、線画や明暗を使う能力を失ってしまったのです。日本人漫画家は明暗を長い間使ってきました。ジッパートーン(陰をつけるために使うフィルムシート)などです。アメリカの漫画家はジッパートーンを使う能力を失ってしまいました。ですから、グレースケールは使うかもしれませんが、同じ効果は得られません。そこで問題になるのは、色を使わずにいかに奥行きを表現するかということです。そして、どのようにアメリカの漫画家をそれに慣れさせるかです。能力があってすぐに習得できる人もいるでしょうし、時間がかかる人もいるでしょう。白黒の線画だけでは、のっぺりとして読みにくいものになってしまいます。
 インディーズ版のアメコミを読んだことがあれば、すばらしいものがあることをご存じでしょう。しかし、これまでお話しした理由で、日本のマンガのような強さが絵にありません。しかし、変わるだろうと思いますし、私達もそうし始めています。DCコミックは私達のマンガが成功していることにひどく腹を立てています。私達がワーナーブラザーズの作品を扱おうとした時、DCコミックが反対しました。彼らは「そうはさせないぞ」と言いました。それで、ワーナーブラザーズとの話は行き詰まっています。DCコミックよりも私達の方が現在、市場シェアが大きいことが気に入らないのです。それでDCコミックは192ぺージの白黒マンガ本を、9ドル99セントで出版すると発表しました。アメリカの漫画家の作品を私達のフォーマット(出版形態)で出そうというのです。
 その結果どうなるかと言いますと、このフォーマットがすっかり標準規格になり、印刷もすべて白黒になって、書店のグラフィック・ノベル売場がSF小説売場のように拡大することになります。
 15〜20年前、SF小説の市場は小さなものでしたが、いろいろな動きが水面下であったおかげで、爆発的に伸びました。
 ですからアメリカの漫画家のことを見込みがないと思わないでください。非常に才能がありますし、ストーリーの書き方も心得ています。彼らはすべてを1ぺ一ジに詰め込もうとしますが、ストーリーが呼吸できるようにしなければなりません。ストーリーに息をさせ、時間をかけて日本人から学ぶことが必要です。しかし、彼らは必ずそれを身につけ、アメリカですばらしいマンガが作られるようになるでしょう。
 
 堀江―僕のところは逆に違うことをやっているんです。「北斗の拳」と「シティハンター」と「スラムダンク」をすべてカラーにしています。1月からアメリカで発売します。僕らはフルカラーで、それも平坦な塗り方ではなく、立体的な塗り方で、200ページ、17ドル95セントで、アメリカのコミックマーケットに出してみようと思っています。
 
 学生―アメリカのコミックはぺ一ジ数が少なくて、毎週カラーで出ています。それと同じにならないように、隔週あるいは月1回にして、フルカラーで「スラムダンク」のようなものを出すという案はどうでしょうか。
 
 堀江―面白いものを月刊で少しずつ読む感覚がよくわかりません。本当に面白かったら、毎週でも毎日でも読みたくなるでしょう。アメリカのマンガ雑誌は月刊誌がベースですが、「ドラゴンボール」を月刊誌で読んだら20年かかるのです。だから、そういう読み方でいいのかという疑問があります。
 日本の優れたマンガは、毎週読んで面白いように作られているんです。毎週読んで面白いということを、まず覚えてくれたらいいなと思います。うちの雑誌はアメリカでは220ぺージぐらいで、4ドル95セントで発行しますが、発行部数が増えたらもっと定価を下げようと思っています。できるだけ日本と同じ価格で出すのが夢です。そうしたらもっと読んでくれるのではないかと思います。
 この前ダークホースの社長が「RAIJIN」のサンプル版を見て、もしかするとアメリカ人にとって毎週この量では多すぎるかもしれないと言っていました。皆さん、どう思いますか。
 
 リービー―アメリカでの課題は、小売りの段階だと思います。長年かかって分かったことがあります。私達の会社のセールス担当チームは、アメリカのいろいろな業界から、経験豊富なセールスマンや小売業者を集めました。ビデオゲーム、エレクトロニクス、DVDやビデオ、本などさまざまです。日本では製造業者や出版社が大きな力を持っていますが、アメリカではかなり違います。出版社が毎日出版すると言っても、書店はどこもそんなことを望みません。欲しいのは売れるものです。小売店にとって、売場面積の1平方メートルが年間の売上や収入に直結しています。ウォールマートがこの考え方で有名です。すべてコンピューター化されていて、すばらしいものです。私達のセールスマンがウォールマートの仕入担当者に会いに行くと、こう言うのです。「私が受け持つ場所で、年間2千万ドル売り上げなければなりません。つまり、あなたの本を2週間に200万冊ずつ売らなければならないということです。売れることを保証してもらえるのなら、店に置いてあげます。」そういう考え方をする人達です。本を店に並べても、売れなければみんな返品になります。ウォールマートは一円だって払ってくれません。アメリカの小売店ではどこでも同じです。最初は店に置いて試してくれますが、売れなければ二度と置いてもらえません。
 ですから、小売店が何を欲しがっているのか注意して見つけ出さなければなりませんし、彼らと協力しなければなりません。
 
 堀江―もう1つ、アメリカのコミック雑誌がなぜ高くなるか教えましょう。日本の取次ぎは定価の60%台で仕入れてくれます。これに取次は10%前後の経費と利益を乗せて定価の80%ぐらいの値段で本屋さんに渡します。例えば、100円の雑誌なら、出版社は取次ぎから70円程度を受け取れるのです。しかし、アメリカの取次ぎは40%台で引き受けて、それに10%前後の経費と利益を乗せて、書店の利益が定価の50%ぐらいになります。流通経費と書店の取り分が大きすぎるから、出版社は定価を上げて出版するしかないのです。日本とは流通システムが違うので、どうしても本が高くなってしまう。僕もリービーも、流通システムがもっと出版社側に有利だったら値段を安くしてもいいんですけれど。
 
 学生―マンガ愛好家が自分で訳して、スキャナで取り込んでオンラインで公開しているのを知っていますか。
 
 堀江―よく知っています。うちの翻訳チームにチェックさせましたが、上手い人もいるし、下手な人もいる。ただ、うちの翻訳チームがなぜ日本にいるかというと、それぞれのマンガ作者の本当の気持ちを理解して翻訳しなければいけないからです。翻訳者は、わからないことがあれば直接作家に聞きますから、ニュアンスが的確に表現できるのです。インターネット上で翻訳しているものも、そのニュアンスをつかみきれていないものが多いですね。
 翻訳はどんなにうまくやっても必ず、ダメだというメールがたくさん来ます。それに耐えなければいけないですね。
 
 リービー―一言付け加えますと、それはすばらしいことです。どんどんそうしてほしいと思います。多くの人がマンガに抵抗を感じなくなれば、自分達で翻訳するようになり、マンガについてもっと学ぶようになると思います。皆にとって意義のあることです。なぜなら、そういう人が友達にマンガのことを話して、興味をかき立てるからです。音楽業界や、将来的には映画業界も、著作権侵害が本当に問題です。その点、出版業界は違いますので、私達は本当に幸運であると思います。ファンがフィクションを書いたりマンガを描くことは、もとになった作品を支えることだと私は思いますし、興味を深めることです。いいことだと思います。本当に興味があるファンには、日本語を学び、オリジナル版を読むことを勧めます。私達が出している英語版は、そこまではしたくないという一般大衆向けのものです。しかし、本当に興味があって、作品を学び、新しい作品を創り出したい人は、そうすることが一番いい練習だと思います。
 
 学生―翻訳チームは、日本人が何人で英語ネイティブが何人いますか。
 
 堀江―6人で、全員が英語ネイティブです。うちの翻訳責任者の考え方ですが、英語に直すときには、100%ネイティブでないと無理だと。実験したところ、99%ネイティブの日本人に翻訳させても、アメリカ人は総て日本人の翻訳だと見抜きました。
 
 リービー―私達の会社では、やり方がかなり違うと思います。時間とともに次第に変わってきたことですが、私達の翻訳者やリライターは現在、すべてフリーランサーです。正社員として雇わないおもな理由は、他の仕事をしていても、この仕事を試してみることができるようにするためです。フリーランサーを新規採用する試験を行っています。翻訳に興味があれば、私にメールを送っていただくか、私達のウェッブサイトをご覧ください。私達はいつも有能な翻訳者を探し続けています。今はおそらく20〜30人くらい翻訳者を使っていると思います。最近はもう正確な数字を把握していませんが、すべて本当に優秀な翻訳者です。日本人もいますし、アメリカ人もいます。どちらでも構いません。大切なのは、翻訳の質です。
 作業は二段階で行います。まず、翻訳段階です。オリジナルの言わんとするところをできるだけ漏らさないように翻訳します。次の段階はリライトです。なめらかな英語になるように翻訳を書き直します。このプロセスは編集者が監督します。翻訳に紛らわしいところがあれば、翻訳者に質問して徹底的に話し合います。そういうプロセスですが、とても難しいことです。堀江さんには6人の翻訳スタッフがいますが、幸運なことです。二つの言語を流暢に話し、ニュアンスが理解でき、ストーリーを書ける人は・・・つまり、リライターの仕事ということですが・・・なかなか見つかりません。三つすべてをこなせる人もいることはいるのですが、めったにいません。
 
 学生―日本のマンガが世界に拡大しつつありますが、具体的に何万部が売れているか、また5年先の展望をお話し下さい。
 
 堀江―実は「RAIJIN」は、今日がアメリカでの創刊日です。これから1ヵ月ぐらいの間に売り上げが報告されるでしょう。注文だけは1万部ぐらいきていました。「少年ジャンプ」は委託販売のゼネラル・ブックストアに配りましたから、アメリカ中で24万部出ました。ただ、たくさん返ってくるでしょう。それは1回書店に出して、戻ってきたものを買い取る作戦なのです。取次ぎは撒けば撒くだけ商売になりますから、市場の大きさに関係なく撒いたのです。
 たぶん今のアメリカのマーケットは、うまくやって2万から5万ぐらいのビジネスだと思います。週刊でも月刊でも。ただ、5年後はわかりませんね。どうでしょうか。
 
 リービー―5年後のことを質問なさったのだと思いますが、これまでの5、6年間は、市場規模が、少なくとも私達のビジネスは、毎年倍増してきました。私達の会社では2003年の予算を立て終わったばかりですが、また一年で二倍に成長する見通しです。マンガばかりでなく、アニメも扱っています。2月には最初のテレビ番組がマンガの時間帯に始まります。ですから、私達はかなり盛り上がっています。『Reign:The Conqueror』という番組ですから、探してみてください。アレキサンダー大王の話で、原作はピーター・チャンです。皆さんも覚えているかもしれませんが、彼は『Aeon Flux』も描いています。2月にAdult Swim(アメリカのアニメ専門局Cartoon Networkの大人向けアニメ時間帯)で始まります。
 しかし、出版が私達にとって一番大きなビジネスで、中核事業です。現在、よく売れているマンガは、グラフィック・ノベルのフォーマットで2年間に3〜5万冊販売しています。新刊は最初の年に平均1〜1.5万冊くらい売れます。5年後の目標は、それを10万冊に近づけることです。日本ではヒット作は100万冊売れます。グラフィック・ノベルの大ヒット作は、100万冊売れるのです。ですから、私達はいつもこう言っています。「今の50倍売ればいいだけじゃないか」と。
 もちろん日米では違いがあります。価格設定も、人口も違います。それらすべてを分析して、成長の見込みを考えています。先ほども述べましたように、アメリカの若い人が全員、少なくとも1冊のマンガを読めば、巨大市場になります。書店のマンガ売場は大幅に拡大されるでしょう。現在、アメリカのマンガ市場は、小売り段階で推定1億ドル規模と聞いています。日本では50億ドルの市場です。アメリカの人口は日本の2倍です。ということは、100億ドル市場になる可能性があるということでしょうか? ひょっとしたら、分かりませんよ。もちろん、アメコミやグラフィック・ノベルに含まれるすべてを合わせた数字です。
 しかし、5年後の現実的な数字は、市場規模5億ドル程度だろうと思います。私達の会社としては、5年後に売上高1億ドルを目指しています。私達は努力し続けています。実現にどんどん近づいていますが、それが目標です。







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