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伊藤
 まず臨床の経験を積みたい。それは1年や2年では多分足りなくて、最低でも5、6年はやりたい。小児科で臨床経験を積んで、小児医療の臨床を十分に見てから、公衆衛生の方面へ進もうと思っている。
 僕は、世界人口60億人に占める全ての子供の健康問題に関わりたい。だから公衆衛生へ進んでも、特に小児保健をテーマにしたい。そしてpublic healthの学位を取りNGOや国際機関、JICAなどに対して、小児保健の専門家として自分を売っていけたらと考えている。
 だけど残念なことに、この計画を井上先生に話したら、「君の計画のうち、臨床を5年も6年も積むことにどれほどの意味があるかな?どうせ臨床を離れて数年したら臨床経験で培った知識も技術もすぐに忘れてしまうし、それらを公衆衛生の分野で生かすことはできない。臨床経験は1年で十分だ。」と言われてしまった。反論を試みたが、説得力のある反論ができなかったのが悔しい。
 僕は臨床も楽しそうだと思っている。もしも5、6年やって、すごく楽しくて、それで満足できなかったら、その後も臨床医をやっているかもしれない。その辺は柔軟に考えていきたい。自分が楽しく好きだと思えることをやっていければ、それこそ本当に納得のできる、充実した人生になるのだと思う。
 
江崎
 国際協力をすることは、日本で地域の中に入って保健活動に関わることの延長線上にあると思っている。どんな場所にあっても、大切なことはそこに暮らす人たちの生き方に学びながら、その人たちが自分たちの健康状態を改善していくお手伝いをするために、私に与えられた力でお手伝いしていくことだと思っている。
 だから、WHOのような国際機関か、JICAのような二国間援助か、NGOか、どの組織に入って国際協力に関わりたいかという問いに(自分でもこのテーマを話すことに賛同しておきながら)答えるのは難しいが、私がお手伝いしようと思う人たちに、私のことを、性格であったり、私の家族のことであったり、考え方であったりということをよく知ってもらえるような近さに身を置いて働きたいと思う。
 今の私には、例えば国際機関に入ってとても広い地域に影響を及ぼす保健政策に関わる機会を与えられたとしても、本当に人々が望んでいることが何なのかを実感し自信を持って取り組むことはできないと思う。
 ただし、ひとつの地域の中だけの取り組みでは改善が難しい課題も世界にはたくさんある。行き来する人の流れを介して広がる感染症の問題もその一つだと思う。また、ひとつの地域における成果が他の地域にとって大きな励みになることもある。みんなで取り組むことで大きな成果があげられることもあるはずだ。だから、私が地域の中でそんな課題の一つにぶつかって、もっと広い地域においてそれに取り組むことが私の使命だと感じるときがきたら、国際機関で働くことは非常に有効な手段となるだろうし、魅力的でもあると感じている。
 とにかく、まずは社会の中で、人の生き方から多くを学びたい。人がどんなことに幸せを感じるのか、本当の意味での健康ってどんな風に手にして行くものなのか、そして私にはどんなお手伝いができるのか。
 
安藤
 僕はまだ、どの機関で働きたいかは決めていない。もともとの動機は、世界のいろんな国に移り住んでみたいというもの。三つのうちどれで働くのかといえば、根本的なものに目がいくからWHOかな。なぜ人は人を殺すのか、とか、どうしたら戦争が起こらないかといったことに興味があるので、本当は宗教家にでもなりたいけど、たぶん無理だと思う。今は国際政治に興味がある。今回フィリピンを周っていて、政治の方が根本的な問題だと思ったので。
 
須貝
 私にとって何より大切なのは、「途上国に身を置いて働く」ということ。はっきり、自分に何ができるというビジョンがあるわけではないが、そこにいて、自分の能力を使ってやれることをして、結果として、もし何か役に立てたらいいな、と思う。今回のフェローシップで国際協力のいろいろな場面を見せていただいたが、私はいつもそこにいる、普通の人たちの生活、子供たちの晴れやかな笑顔や強く握られた手の感触、お母さんたちの言葉などに一番目がいった。多分、そうやって彼らの中にいることが好きなのだと思うし、協力するつもりで行っても、そうしていることで自分が得るものの方がずっと多いと思う。専門分野としては小児の感染症に興味があるが、どの機関でのどのような仕事であっても自分にとっては貴重な経験になると思う。
 
 最後に、八谷先生、バルア先生、泉さんからコメントを頂き、予定時間を大幅にオーバーして総括ミーティングは終了した。何ともいえない充実感と疲労感、そして空腹感を残して・・・。
 限られた時間内では話しきれなかったこれらの問題を、帰国後それぞれが日常に戻ってからも考え続け、時々意見を交換している。
(担当:須貝 みさき)
 
8月17日 今日のひとこと
伊藤:人の知らないところでそんな演出すんなよー。目頭が熱くなるじゃねーかよお。泣いてねーやい!目が汗かいてんだいっ。
安藤:今日が最後の夜かと思うと、とても名残惜しかった・・・。
大森:バル日く、「フィリピン人が子だくさんなのはbalotのせいだ。」・・・そうかも。
千田:妬みも憎しみも渦巻いているけれど、やっぱりみんなで幸せになりたい。
瀧村:総括ミーティングはもっと時間がほしかったところでした。最後の夜だからみんなとお話したかったのに・・・あまりの唾魔に断念。国際保健には体力は必須と痛感。
長崎:高島先生に、「国際協力をするにあたって5年間の臨床経験を積んだほうがよい。これを経験していないと文系の官吏と差がない。いや、彼らは法律や経済の知識を持っている」と言われたことが印象的である。
江崎:総括ミーティング。みんなの思いが聞けてよかった。迷いながら、悩みながら、一歩一歩進んで行きたいと思う。
河合:連日の語り合い。語っても語ってもまだ足りない。本音で語り合える仲間ってすごく素敵。
馬場:気力がなんとか最後までもちました。。
井上:WHOの先生とお話しができて、すごく良かった。そうなんだー、とやけに納得した。現地の人ともっとゆっくりたくさん話がしたいなあ。もったいないことしたな。
斎藤:WHOの高島先生、井上先生(先輩)とゆっくり話が出来てよかった。総括meetingで話し足りなかったのでまたみんなで。
須貝:幸せって・・・。
高田:昼食のバイキング&生演奏が素敵だった。総括ミーティングでの改まったディスカッションは緊張した。
鳥羽:総括ミーティングで、皆の考えが聞けてよかった。また、何年後かにその後の人生の総括ミーティングしようね。







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