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伝える機会
満開の 桜ひとひら 唇に
とどまりたるを そのままに置く
汲田 冬峯(日本)
 
作 林志明(中国)
 
伝える機会
 
 ハンセン病患者は、社会から疎外され、差別を受けてきたため、能力を発揮する機会を与えられることは稀でした。またハンセン病を語るのは医師や専門家であり、患者や回復者の声が聞かれることはありませんでした。病気を実際に経験した人々が様々な分野での創造力や才能を発揮する場と、自らの体験や意見を語る場を確保し、自信を回復、尊厳ある生活を送るための活動が、小さいながら世界各地で始まってきています。
 
対話と交流による相互理解
 ハンセン病の正しい知識と回復者の積極的な生き方を社会にとどけるため、インド、ネパール、中国等で、回復者自身が中心となり、政府関係者、保健従事者等も同席してワークショップが行われています。様々な立場の人が参加することによって、回復者には発言する機会と自信を、そして政府、保健従事者等には、患者・回復者の切実なニーズを知り、多くの問題を学ぶ機会を与えます。
 
 
創造性と新しいイメージ
 回復者の中には小説、写真、絵画、音楽、詩などで優れた才能を発揮している人がいます。これらの作品を発表する機会をつくることによって、作品のもつ豊かな創造性に触れた人々が、徐々にハンセン病に対する従来の見方を変えていきます。「ハンセン病にかかったかわいそうな人たち」ではなく、豊かな感性と才能を持った個人という新しいイメージを確立することが目標です。
 
 
 
ネットワーク
 すべての人々、特にハンセン病患者・回復者が人間としての尊厳を保ち、希望をもって価値ある人生を送ることができるよう協力して活動することを目的に、1994年に世界で初めて、ハンセン病患者、回復者を中心とした国際ネットワーク「アイデア(IDEA)」が生まれました。ハンセン病を体験した人々の声をさまざまなメディアを使って世界の人々に届けていく活動を広げています。
 「尊厳の確立・・・ハンセン病を超えて」はそのような取り組みの一つで、回復者の言葉と写真を使ったパネル展示会です。1997年、ニューヨーク国連本部で開催されて以降、中国、スペイン、ドイツ、イタリア、ルクセンブルグ、ブラジルでも行われました。また、ハンセン病を体験した人々の声を集約したニューズレターや、小冊子の作成も積極的に行っています。近年、これらの活動に賛同したボランティアの手によってニューズレター等が翻訳され、世界の人々に届けられています。また、ウェブサイトを立上げてより広い範囲に向けて多くのメッセージを伝えています。
 
 
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ハンセン病を体験した人々の
新しく豊かなイメージと、個性溢れるメッセージが広がっていこうとしています
 
 
 
 







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