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7−4 前提条件に係る感度分析
(1)感度分析の目的
 需要予測は、将来における圏域人口や交通網等を前提条件として行うものであることから、想定した前提条件と現実の社会経済環境との乖離によって需要量は大きく相違することとなる。例えば、交通網の条件の一つとして「バス路線網」を取り上げると、予測上は鉄道整備と一体的に路線再編等が進むものと仮定しても、実際にはあるタイムラグをおいて再編等が行われ、若しくは実施されない事例も見受けられる。また、開発人口についても、経済情勢や交通アクセス整備の如何によって、進捗度合いに大きな相違が発生する。需要予測の誤差要因については、「予測モデルの構造に起因するもの」や「前提条件に起因するもの」の2つに大きく分類されるが、トレース的にみると、前提条件による誤差が大きいことが報告されている。
 一方、これまでの交通計画は、経済の高度成長やそれに伴う都市人口の増加などに対応した需要追随型が多く、マクロ的には大きな乖離は生じていないと考えられる。しかしながら、今日における需要構造は経済動向、自動車保有や道路網の成熟化、また、需給調整規制廃止等におけるバスサービスの自由化等の進展に伴って、全体として減少傾向の中で大きな変化をみせている。さらに、高齢化の進展や携帯情報機器等情報化によって個々人のトリップの動きにも影響が顕れはじめている。今後の交通計画は、これまでの量としての需要を効率的に処理する考え方から、個々人のトリップ・行動を捉えたミクロな考え方への転換が必要である。このことから、本調査の需要予測モデル構築にあたっては、可能な限り将来の社会経済状況の変化に対応可能となるようなモデル構造と変数の導入を試みたが、入手データの制約やモデル分析上における変数との相関性や経済成長指数等将来想定の困難さのために、一部において対応できない内容となった。
 
 そこで、本調査においては、モデル構造上対応可能な将来の社会経済指標の動きに対応した需要予測を行うことによって、将来需要の動向と社会経済との関連性を事前に把握することとした。この結果については、様々な社会経済環境の変化に対応した今後の「交通計画」のあり方の検討の深度化に向けて参考にしうるものと考えられる。
 
 ここでいう「感度分析」とは、需要予測の種々の前提条件のうち将来不確定な要素について、基本ケースより一定の変化を仮定し、需要予測値を予測することである。既存ストック活用、鉄道サービス向上といったいわゆる「政策シミュレーション」については後節で述べる。
 
※本資料では、7-3節に示すネットワークA+Bまで開業した場合を「基本ケース」と表記し、その基本ケースに関する各感度分析結果を示す。
(2)人口の都心回帰
 京都市、大阪市、神戸市における対府県との「人口比」は、2000年国勢調査を基に将来とも変化しないことを仮定しているが、近年の都心回帰の傾向が続いたとした場合、人口構成や目的地が変化することが予想される。ここでは、以下に示す都心部において、基本ケースより多めの人口を仮定した感度分析を行う。
 都心の定義は、パーソントリップ調査などに定義されている3大都市の「都心部」とし、以下の地域を含む。
 
京都市:上京・中京・下京・東山
大阪市:北・中央・西・天王寺・浪速・福島
神戸市:中央・兵庫
 
 なお、ここでは、2020年における各人口指標について、上記都心部の各区の人口を基本ケースの設定+5%増とした。(各府県計の人口は固定とし、各府県内の都心以外の市区町村からの転入を想定する。)
 
表 7-4-1 都心部における人口指標の設定(感度分析)
      常住 就業 従業 就学 従学 15未満就学 15未満従学
京都府   府計 2,566,823 1,188,876 1,177,599 151,071 171,683 173,534 173,880
京都市 都心計 基本 279,710 135,625 244,825 18,984 32,007 13,668 15,112
  5%増 293,696 142,406 257,067 19,933 33,608 14,352 15,868
      常住 就業 従業 就学 従学 15未満就学 15未満従学
大阪府   府計 8,327,212 3,669,246 4,113,023 422,369 446,039 539,735 540,223
大阪市 都心計 通常 365,275 176,601 1,119,523 18,515 57,687 17,297 20,589
  5%増 383,538 185,431 1,175,500 19,441 60,572 18,163 21,618
      常住 就業 従業 就学 従学 15未満就学 15未満従学
兵庫県   県計 5,537,171 2,471,525 2,241,324 271,365 255,404 396,705 395,853
神戸市 都心計 通常 218,819 96,696 312,103 8,603 13,905 10,138 10,435
  5%増 229,760 101,530 327,709 9,033 14,600 10,645 10,957
※「5%増」が今回の感度分析人口
 
 上記の人口をもとにした予測結果は以下の通りである。
■ 3大都市の都心部における総発生交通量、鉄道利用発生交通量はともに増加する。
■ 都心部においては徒歩・二輪の分担量が増加する。理由として、都心回帰により都心部内々の交通すなわち移動距離の少ないトリップの割合が増加するためと考えられる。
 
表 7-4-2 人口都心回帰による回帰分析結果・全目的交通手段分担率と発生交通量の増減
    交通機関分担率 発生交通量
の増減(千人)
基本ケース 感度分析(都心+5%) 分担率増減
京都市都心部 鉄道 19.6% 19.5% -0.1% 7
バス 6.5% 6.5% 0.0% 3
自動車 24.2% 24.0% -0.1% 9
徒歩等 49.8% 50.0% 0.3% 25
手段計 100.0% 100.0% 0.0% 44
京都市その他 鉄道 13.9% 14.0% 0.1% -1
バス 4.2% 4.2% 0.0% 0
自動車 36.5% 36.5% 0.0% -9
徒歩等 45.4% 45.3% -0.1% -13
手段計 100.0% 100.0% 0.0% -23
京都府下 鉄道 13.6% 13.8% 0.1% 0
バス 2.1% 2.1% 0.0% 0
自動車 47.5% 47.4% -0.1% -9
徒歩等 36.7% 36.7% 0.0% -6
手段計 100.0% 100.0% 0.0% -16
大阪市都心部 鉄道 46.8% 46.6% -0.1% 54
バス 1.0% 1.0% 0.0% 1
自動車 15.8% 15.8% -0.1% 18
徒歩等 36.4% 36.6% 0.2% 54
手段計 100.0% 100.0% 0.0% 127
大阪市その他 鉄道 24.1% 24.4% 0.2% 0
バス 1.0% 1.0% 0.0% 0
自動車 19.9% 19.9% -0.1% -12
徒歩等 55.0% 54.8% -0.2% -32
手段計 100.0% 100.0% 0.0% -45
大阪府下 鉄道 16.1% 16.4% 0.2% 9
バス 2.2% 2.2% 0.0% -2
自動車 34.0% 33.9% -0.1% -47
徒歩等 47.7% 47.6% -0.1% -57
手段計 100.0% 100.0% 0.0% -97
神戸市都心部 鉄道 32.4% 32.3% -0.1% 13
バス 3.6% 3.6% 0.0% 2
自動車 25.4% 25.3% -0.1% 10
徒歩等 38.6% 38.7% 0.2% 19
手段計 100.0% 100.0% 0.0% 44
神戸市その他 鉄道 21.4% 21.5% 0.1% 2
バス 4.7% 4.7% 0.0% 0
自動車 38.0% 38.0% 0.0% -4
徒歩等 35.9% 35.8% -0.1% -6
手段計 100.0% 100.0% 0.0% -9
兵庫県下 鉄道 13.1% 13.2% 0.1% 4
バス 2.7% 2.7% 0.0% -1
自動車 42.7% 42.6% -0.1% -16
徒歩等 41.5% 41.5% 0.0% -15
手段計 100.0% 100.0% 0.0% -28
その他 鉄道 10.6% 10.6% 0.0% 3
バス 1.7% 1.7% 0.0% 0
自動車 54.6% 54.5% 0.0% -1
徒歩等 33.1% 33.1% 0.0% 0
手段計 100.0% 100.0% 0.0% 3
近畿圏計 鉄道 18.4% 18.6% 0.2% 92
バス 2.4% 2.4% 0.0% 1
自動車 36.4% 36.2% -0.1% -61
徒歩等 42.8% 42.7% -0.1% -31
手段計 100.0% 100.0% 0.0% 0
三重県伊賀 鉄道 4.4% 4.5% 0.0% 0
バス 1.5% 1.5% 0.0% 0
自動車 69.1% 69.1% 0.0% 0
徒歩等 25.0% 25.0% 0.0% 0
手段計 100.0% 100.0% 0.0% 0
近畿外 鉄道 67.1% 66.5% -0.6% -1
バス 1.6% 1.6% 0.0% 0
自動車 20.6% 20.6% 0.0% 0
徒歩等 10.7% 11.3% 0.6% 1
手段計 100.0% 100.0% 0.0% 0
合計 鉄道 18.4% 18.7% 0.2% 92
バス 2.4% 2.4% 0.0% 1
自動車 36.7% 36.5% -0.1% -61
徒歩等 42.5% 42.5% -0.1% -30
手段計 100.0% 100.0% 0.0% 0
(3)就業率の変化(高齢者及び女性の社会進出)
 今後における高齢者、女性の社会進出については、人口総数の減少に伴う生産活動への参加が考えられる。ここでは、就業率の変化による交通需要の伸びについて感度分析を行う。
 感度分析の対象は以下の通りである。
 
 ○女性の社会進出
 女性の15〜64歳の就業率は、近畿平均で1990年の48.76%から2000年の50.19%へと上昇している。このことを勘案して、今後20年間で、女性の就業率が1990年→2000年の伸びと同程度上昇すると仮定した。その結果、近畿2府4県の女性の就業者数は基本ケースより約12万人増えるものとした。
 
表 7-4-3 女性15〜64歳(生産年齢)の就業人口の設定(近畿計)
  1990年
国勢調査
1995年
国勢調査
2000年
国勢調査
2020年 
基本ケース 感度分析
就業人口 3,539,226 3,688,506 3,682,861 3,151,808 3,275,336
就業率 0.4876 0.5019 0.5065 0.5032 0.5229
※基本ケースの就業率
府県別に1990〜2000年の平均値で一定推移すると仮定。
  感度分析の就業率
府県別に1990→2000年の10年間の伸び率で、今後20年間伸びると仮定。
就業率の計算は府県別に行っており、上記近畿計の数字は府県別就業人口の和をもとにしたものである。
 
 ○高齢者の社会進出
 高齢者の就業率については、現時点では増加傾向は見られないものの、将来的には高齢化社会を迎える中で、生産年齢人口の労働力を補う意味で、高齢者についても一定社会進出が進むと仮定し、65歳以上の就業率については基本ケースの設定値(1990〜2000年の就業率の平均値で一定推移)の1.05倍になる(すなわち高齢者の就業人口が5%増加する)ものと仮定した(男女とも)。したがって近畿計で約5万人の高齢者の就業人口が増加すると仮定している。
 
表 7-4-4 男女計65歳以上の就業人口の設定(近畿計)
  1990年
国勢調査
1995年
国勢調査
2000年
国勢調査
2020年
基本ケース
2020年
感度分析
就業人口 495,705 641,359 674,131 1,029,028 1,080,477
就業率 0.2171 0.2312 0.1985 0.1851 0.1944
※基本ケースの就業率
府県別に1990〜2000年の平均値で一定推移すると仮定。
  感度分析の就業率
府県別に基本ケースの就業率に一律1.05を乗じて算出。
就業率の計算は府県別に行っており、上記近畿計の数字は府県別就業人口の和をもとにしたものである。
 
 予測結果は以下の通りである。
■ 総発生交通量は近畿全体で約12万7千人増加、その内訳としては、通勤目的と業務目的、その裏返しとしての帰宅目的が増加する。一方、自由目的については就業者の自由目的における生成原単位が小さいため、若干減少する。
■ 手段分担率は近畿計ではほとんど変化は見られない。
 
表 7-4-5 目的別発生交通量(近畿計)・千人/日
女性・高齢者就業率変化時
    通勤 通学 自由 業務 帰宅 手段計 分担率
感度分析結果
(近畿圏計)
鉄道 2,232 403 1,082 710 3,465 7,892 18.53%
バス 116 98 313 66 421 1,014 0.0238
自動車 2,326 455 4,079 2,781 5,884 15,526 0.3645
徒歩等 1,555 1,120 6,695 1,673 7,121 18,1651 42.64%
手段計 6,230 2,076 12,169 5,230 16,892 42,596 100.00%
基本ケースとの増減量
(近畿圏計)
鉄道 33 -0 -4 7 31 67 0.10%
バス 2 0 -3 1 1 2 0
自動車 44 0 -33 41 19 71 0.0006
徒歩等 28 0 -53 22 -9 -13 -0.16%
手段計 108 -0 -93 71 42 127 0.00%
基本ケースとの増減率
(近畿圏計)
鉄道 101.5% 100.0% 99.6% 101.0% 100.9% 100.9%  
バス 102.0% 100.0% 99.2% 101.5% 100.2% 100.2%  
自動車 101.9% 100.0% 99.2% 101.5% 100.3% 100.5%  
徒歩等 101.9% 100.0% 99.2% 101.3% 99.9% 99.9%  
手段計 101.8% 100.0% 99.2% 101.4% 100.3% 100.3%  







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