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e)パラメータ解析用データの作成方法
 各特性変数のパラメータ解析用データの作成方法は、次のとおりである。
(レベル1:鉄道経路選択)
(1)幹線の所要時間は、PT調査結果のトリップレコードから乗降駅間の所要時間として求める。
(2)幹線の運賃は、運賃表から、通勤・通学・登校目的にあっては、当該駅間の1ヶ月通勤定期運賃および通学定期運賃(中学生、高校生等に分かれている事業者については、高校生の通学定期運賃とする)を求め、これに0.02(1/50、25出勤日/月、25登校日/月)を乗じて費用とし、自由・業務目的にあっては普通運賃を費用とする。
(3)鉄道乗換抵抗は、PT調査結果のトリップレコードから、乗換駅の抵抗値を合計する。なおこの抵抗値は、大都市交通センサスの乗換施設実態調査から、乗換駅間の経路上にある階段・ESによる階層差および乗換経路の距離を求め、後に示すMETs指標により乗換抵抗値に変換する。
(4)(5)終日鉄道運行間隔、ピーク時鉄道運行間隔は、まず、PT調査結果トリップレコードの利用鉄道駅間から推定される鉄道利用経路各駅間の運行本数の距離加重平均として利用経路の平均的な運行本数を求める。(ここで、加重平均にしたのは、予測において輸送力増強による影響をモデルに敏感に反映させることを目的としている。このため、正確な単位は、本/km/片道である。各駅間の運行本数は、時刻表およびダイヤグラムから求める。)続いて終日鉄道運行間隔については18×60分、ピーク時鉄道運行間隔については60分で割ったものを用いるものとする。
(6)始発列車の有無は、鉄道ネットワークから、該当駅の列車停車本数のうち、始発となる本数の割合が10%以上を占める駅を、該当駅1とし、10%に満たない駅を0とする。
(7)利用駅5m以上段差は、アクセス駅およびイグレス駅についてそれぞれ、段差がある駅は1、ない駅は0とする。
(8)利用駅EV,ES設置は、アクセス駅およびイグレス駅についてそれぞれ、EVもしくはESが設置されている駅は1、ない駅は0とする。
(9)端末の所要時間は、PT調査結果トリップレコードからアクセス・イグレス合計で求める。
(10)端末の費用は、PT調査結果における手段毎の所要時間から、各手段の利用距離を求め、各交通機関の運賃表を用いて、端末の費用とする。
(レベル2:交通機関選択)
(1)性は、PT調査結果のフェイスレコードから、男1、女0としてデータ化する。
(2)年齢は、PT調査結果のフェイスレコードから求める。
(3)65歳以上ダミーは、PT調査結果のフェイスレコードの年齢から、65歳以上を1、65歳未満を0とする。
(4)自動車保有台数は、PT調査結果のフェイスレコードから求める。
(5)時間は、PT調査結果のトリップレコードからOD間の全所要時間を求める。
(6)費用は、交通機関により求め方が異なる。
 自動車は、現況道路ネットワークよりOD間の時間最短経路を求め、その最短経路の距離に1キロメートル当たり15円を乗じて燃料費とし、さらに、その最短経路中に有料道路が含まれる場合は、有料道路料金を和して費用とする。
 バスは、PT調査結果トリップレコードのバス乗車時間を、一律20km/時で除してバス停間距離を求め、バス運賃表に照らし合わせて普通運賃を求める。次に、通勤0.84(1ヶ月定期運賃=普通運賃×42、25出勤日/月)、通学0.72(1ヶ月定期運賃=普通運賃×36、25登校日/月)の実質の定期運賃率を乗じて費用とする。
(7)バス停との時間は、PT調査結果トリップレコードからアクセス・イグレス合計で求める。
(8)都心関連ODは、このODが道路渋滞や駐車場所の影響を受けて鉄道利用が促進される現象を説明する特性変数であり、都心関連のODは「1」、それ以外のODは「0」としてデータ化した。都心は、大阪市北区・中央区・西区・天王寺区・浪速区・福島区、京都市上京区・中京区・下京区・東山区、及び神戸市中央区・兵庫区とした
 選択交通機関以外の非選択交通機関のデータは、OD間データの平均値を用いることにする。
 なお、自動車、及びバスを用いての所要時間・費用を算定するための道路ネットワークは、各自治体策定の現況・将来道路網を基本にして、本予測のゾーニングに合致するネットワークを作成する。
 
f)交通需要予測用データの作成方法
 また、各特性変数の交通需要予測用データの作成方法は、次のとおりである。
(レベル1:鉄道経路選択)
(1)幹線の所要時間は、鉄道ネットワークにより乗降駅間の最短時間経路の所要時間を求める。
(2)幹線の運賃は、PT調査結果トリップレコードの利用鉄道駅間と運賃表から、通勤・通学・登校目的にあっては、当該駅間の1ヶ月通勤定期運賃および通学定期運賃(中学生、高校生等に分かれている事業者については、高校生の通学定期運賃とする)を求め、これに0.02(1/50、25出勤日/月、25登校日/月)を乗じて費用とし、自由・業務目的にあっては普通運賃を費用とする。なお、鉄道アクセス・イグレスに自動車あるいはバスを用いる場合は、先に示した方法により、アクセス・イグレス費用を算出し、加算する。
(3)鉄道乗換抵抗は、最短時間経路上に乗換を行う駅間の乗換抵抗値を合計して求める。
(4)(5)終日鉄道運行間隔、ピーク時鉄道運行間隔は、パラメータ解析用データの作成方法と同様の方法による。
(6)始発列車の有無は、パラメータ解析用データの作成と同様の方法による。
(7)(8)利用駅5m以上段差・利用駅EV,ES設置は、パラメータ解析用データの作成と同様の方法による。
(9)端末の所要時間は、経路の端末駅へのアクセス・イグレス時間とする。アクセス・イグレス時間は、パーソントリップ調査のアクセス・イグレス時間の平均値を用いる。ただし、新駅やパーソンのゾーンに比べて駅が多い大阪市などについては、道路ネットワークから駅までの最短経路探索により算出し、バスの待ち時間を加える。
(10)端末の費用は、道路ネットワークから駅までの距離を求め、1km以上は端末バス利用、1km未満は徒歩とする。端末バス利用の場合は、バスネットワークから駅までの最短経路探索を行い、バスネットワークで経路探索が行えれば、運賃表から端末バスの費用とする。
 
 上記で求めた鉄道経路配分モデルによる鉄道利用の経路配分率を、目的別鉄道利用ゾーン間分布交通量に乗じて鉄道終日輸送需要を予測する。
(レベル2:交通機関選択)
(1)性は、常住地ゾーンの男性の割合とし、現況値(現況再現用、以下同様)は、市区町村別に国勢調査結果から集計して求める。将来値は、人口研等の推計結果を参考にして設定する。なお、男性就業者の割合の推移を検討した結果、近年において大きな変動は見られず、また、経済動向によっても左右されるため、本調査においては現況値を用いることにした。
(2)年齢は、常住者の平均年齢とし、現況値は、国勢調査結果から市区町村別に集計して求める。将来値は、国立社会保障・人口問題研究所の年齢階級別推計人口を参考にして設定する。
(3)老齢人口率は、常住者に占める65歳以上の人口の割合とし、算出方法は(2)の年齢の算出方法と同様である。
(4)自動車保有台数は、現況値は、道路交通センサスの自動車保有台数を国勢調査結果の普通世帯数で除して、市区町村別に1世帯当たりの保有台数として求める。将来値は、近畿地区幹線道路協議会策定の自動車保有台数の伸びと常住人口の伸びから、現況値を補正して求める。
(5)時間は、交通機関により求め方が異なる。
 自動車は、道路ネットワークから時間最短経路探索により求める。各道路の走行速度は、道路交通センサスにおける規制速度とピーク時旅行速度の中間値を参考に設定する。計画道路については、幅員や周辺道路の状況を勘案しながら、本業務で独自に設定する。
 バスは、バスネットワークから時間最短経路探索により求める。バスネットワークは、道路ネットワークが幹線道路で構成されているため、これを準用するが、停車等を考慮して、自動車に比べて走行速度に10km/時の差を設ける。
(6)費用は、交通機関により求め方が異なる。
 自動車は、パラメータ解析用データの作成方法と同様に求める。ただし、道路ネットワークには計画道路を含め、また、有料道路料金は、現況道路にあっては現行料金を、均一料金制を除く計画道路は、対距離比例制(地方部23.0円/km、都市部27.6円/km、ターミナルコスト150円)とする。
 バスは、バスネットワークから求めたOD間距離をバス停間距離と見なし、パラメータ解析用データの作成方法と同様に費用を求める。
(7)バス停との時間は、PT調査結果を参考にして、各OD共にアクセス5分、イグレス5分、合計10分とする。
(8)都心関連ODは、パラメータ解析用データの作成方法と同様とする。
 
乗換抵抗指標について
 従来の需要予測モデルでは、鉄道間の乗換を乗換回数および乗換の所要時分とで抵抗としてきたが、連絡通路やESの設置など、乗換経路上の抵抗の軽減に関する利用者の要望は高く、これらの軽減に関する政策評価が必要となってくる。そのため、本調査では、以下のように、乗換抵抗を乗換にかかるエネルギーとして捉え乗換抵抗値を指標化し、需要予測モデルに用いるものとする。
 
 運動の強さを示す指標としては、METs(metabolic equivalents)というものが知られており、運動によるエネルギー消費量は、
 
 (運動によるエネルギー消費量)=(個人の安静時代謝)×(METs)×(時間)
 
で表される。
 
表 6−7−2 駅アクセスに関係する運動のMETs
  METs
立位 1.25
歩行 2.74
階段(昇降) 4.82
 
 よって、乗換抵抗は以下の式で表すものとする。
 
(乗換抵抗)=2.74×(水平方向の歩行時間)+1.25×(ESによる昇降時間)+4.82×(階段昇降時間)
 
 ただし、実際のデータ整備に関しては、ES・階段の昇降時間の設定が困難なことから、階層差当たりの昇降所要時分を以下のように設定する。またこれら、水平方向の歩行時間・ESによる昇降・階段昇降時間は、それぞれ、大都市交通センサスにおける乗換施設実態調査から水平方向の時間およびES・階段の階層差を求め、乗換抵抗を算出する。
 
表 6−7−3 1階層当たりの所要時分
  1階層当たりの所要時分
ES 35.09秒
階段 11.88秒







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