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6−5 発生集中交通量の予測
(1)概要
 発生集中交通量(ゾーン別)は、近畿圏合計としての目的別生成交通量でトータルコントロールするものとする。
・生成交通量は、近畿圏居住者のトリップの総量であり、近畿圏外に起・終点をもつトリップを含んでいる。ここで、域外交通については、鉄道利用交通量について、近畿圏境界断面輸送量を上乗せすることとし、ここで言う発生集中交通量は、近畿圏外とのトリップは対象外とし、近畿圏内々のトリップのみを対象とする。このため、発生集中量予測以降の過程においては、生成量に近畿圏内々率を乗じて近畿圏内々のトリップ数をベースとしている。
・発生集中交通量の予測は、次で述べる分布交通量と密接な関係を持つ。分布交通量の予測において目的地選択モデルを用いるため、発生交通量が定まれば、集中交通量は目的地選択の結果として定まることになる。そのため、ここでは、交通目的別に、人口指標と目的地選択モデルの推定結果より定まるゾーンごとの効用値を説明変数に用いた、発生交通量モデルを設定することとする。
・なお、帰宅目的については、通勤・通学目的からの帰宅は当該目的の裏返しとしての交通であり、すなわち通勤・通学目的の当該ゾーンへの集中交通量が帰宅目的の発生交通量となるものとする。また、自由・業務目的からの帰宅については、自由目的集中交通量に対する(自由・業務目的からの)帰宅目的発生交通量の原単位を市区町村ごとに現況データより求めるものとする。
 
表 6−5−1 帰宅目的発生集中交通量算定の考え方
  帰宅
通勤・通学・登校目的からの帰宅 自由・業務目的からの帰宅
発生 同目的の集中量とする (総発生交通量−帰宅を除く集中交通量)/自由目的集中量
を発生原単位とする
集中 同目的の発生量とする (総集中交通量−帰宅を除く発生交通量)/自由目的発生量
を集中原単位とする
(2)発生交通量予測モデルの構築
 分布交通量の予測において、次に述べる「目的地選択モデル」により各種施設整備による分布パターンの変化を明示的に考慮する必要があるため、発生集中交通量の予測については、この分布交通量の予測手法と整合のとれたものでなければならない。(従来は基本的にゾーン別の発生集中交通量をトータルコントロールとして分布交通量の予測を行っていた。)したがって、発生交通量の予測は以下のように考えるものとする。(集中側については目的地選択モデルにおいて推定できる。)
 
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 式(1)の意味するところは、右辺第1項λΛiが、分布モデルにおいて施設整備などによる魅力度向上などの影響を明示的に考慮した効用値(式(2))を説明変数とすることで、魅力度向上による発生交通量の向上をモデル化することが出来る。また第2項


は人口指標に対する発生原単位指標で従来のモデルに対応する部分、第3項C は定数項である。この式(1)は、人口指標と発生原単位を説明変数としてパラメータλ、δ、Cを求める重回帰モデルである。
 ここでλΛiは、当該ゾーンにおける交通の活発性(アクセシビリティ)を示す変数とも言え、分布モデルから得られる効用関数の大きさ(トリップの集まりやすさ)が発生交通量の大きさに影響を与えるモデルと考えられる。
 
 式(1)で用いる人口指標については、以下の通りとする。
 
通勤目的:就業人口 通学目的:就学人口
自由目的:常住人口 業務目的:従業人口
 
 なお、この発生モデル適用後、近畿計の発生交通量のトータルが生成交通量と合う保証がないため、最後に目的別生成交通量でトータルコントロールするものとする。(施設整備などにより生成量そのものが増加することは考慮しない)
 なお、帰宅目的についてはそもそも各目的の裏返しの交通と言え、目的地選択モデルの議論の対象外と考えられるのでここでは取り扱わない。(各目的のゾーン別集中交通量をもとに帰宅目的交通量を推計しうる)
 
a)通勤目的
 通勤目的の発生交通量については、就業人口と関係が深いことが考えられることから、就業人口に影響される項とアクセシビリティ指標(分布モデルのログサム効用値)からなる項による線形回帰式を推定したが、ログサム変数については有意にならず(説明力の大きさを示すt値が1より小さく、符号条件も合致しない)、また就業人口のt値が極めて高い結果であった。そもそも通勤目的については大部分が自宅発のトリップであり、結果として発生交通量の推定にはアクセシビリティは有意にはなりにくいものと考えられる。したがって、通勤目的の発生交通量は就業人口当たりの原単位でのみ表現するものとする。
 
表 6−5−2 モデル推定結果(通勤目的)
  パラメータ 値標準誤差 t値 P値
就業人口 7.60e−01 0.115294 64.5367 0
定数項 1.2291 8030 1.2343 0.218727
 
 また、下図は就業人口のみを説明変数にした単相関で予測値と実績値の比較を行ったが、ほとんど直線上にならび、通勤発生交通量は就業人口で規定されることは自明である。
 
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図 6−5−1   市区町村ゾーン別発生交通量の実績値・推定値の比較
    (就業人口のみを説明変数にした場合)
 
b)通学目的
 通学目的についても、通勤目的同様、ログサム変数は有意にならず、発生交通量は就学人口により規定されることから、アクセシビリティ指標の考慮は行わず、通学目的の発生交通量は就学人口当たりの原単位でのみ表現するものとする。
 
表 6−5−3 モデル推定結果(通学目的)
 
  パラメータ 値標準誤差 t値 P値
就学人口 8.65e−01 0.0.00253 342.033 0
定数項 4.91e+01 30.02 1.6339 0.104053
 
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図 6−5−2   市区町村ゾーン別発生交通量の実績値・推定値の比較
    (就学人口のみを説明変数にした場合)







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