日本財団 図書館


3−4 計画実現化方策に対する検証
 答申第10号において検討された実現化方策に対して、これまでに実施された方策等を整理する中で検証を行う。
 近畿圏における鉄道需要の減少、社会・経済環境の変化等により新線の事業化は困難な状況にある。今後、新線整備を進めるためには、以下の実現化方策の深度化を図るとともに、バリアフリー化・シームレス化等新たな課題を含めた検討が必要である。
 
【凡例】○:答申第10号における実現化方策
  →:答申第10号以降における対応策、事業化事例  
(1)導入空間の確保
○ 鉄道ルートの計画策定にあたり、可能な限り公共用地の地下利用を図る。
→JR東西線、西大阪延伸線、中之島新線等
○ 将来、鉄道整備が予定される地域にあっては、導入空間の計画的な確保を図る。
→京阪奈新線
○ 事業者においては、構造物や車両の低公害化を図る。
→関西国際空港アクセス鉄道の騒音対策、車両の低量化 等
○ 国や地方自治体においては、民有地取得円滑化のための税制上の特別措置拡充、土地収用制度の機動的運用を図ること。
○ 導入空間の円滑な確保のための地方公共団体の積極的な支援
(2)建設費の低減
○ 新線建設にあたり貨物線や不活性路線の活用、需要規模に見合った適切な規模、新技術導入も含めた経済的な施設、工法等の選択等に努める。
→大阪外環状線(貨物線旅客化)、地下鉄7号線(リニア方式・導入空間の縮小化)
 
(拡大画面:39KB)
図 3−4−1   常地下鉄建設事業費と消費者物価指数の推移
資料:平成12年基準消費者物価指数(CPI)、近畿運輸局
 
○ 道路事業等他事業との一体的施工によるコストの削減を図る。
→関西国際空港線、大阪モノレール線、ポートアイランド線
○ 国、地方公共団体においては、工事遅延の防止に努めること。
○ 鉄道用地については、地方公共団体の協力を得て、計画的に先行取得を行うこと。
→京阪奈新線等
○ 地方公共団体においては、将来の鉄道用地沿線をあらかじめ監視区域に指定する等投機的土地取り引きの抑制に努めること。
○ 大深度地下空間利用についても可能性の研究を進めること。
(3)適切な建設・運営主体の選択
○ 建設主体については、公共性を維持しつつ民間活力活用を図ることができる第三セクター方式等による建設についても検討すること。
→関西高速鉄道(JR東西線)、京都高速鉄道(地下鉄東西線)、大阪高速鉄道(大阪モノレール)、大阪府都市開発(泉北高速線)、神戸新交通(ポートアイランド線、六甲アイランド線)、大阪外環状鉄道(大阪外環状線)、奈良生駒高速鉄道(京阪奈新線)、中之島高速鉄道(中之島新線)、西大阪高速鉄道(西大阪延伸線)
○ 効率的な運営確保の観点から、運営主体における既存事業者の活用が望ましい。
→京都市・京阪電鉄(地下鉄東西線)、JR西日本(JR東西線、大阪外環状線)、近鉄(京阪奈新線)、京阪電鉄(中之島新線)、阪神電鉄(西大阪延伸線)
※ 償還型上下分離方式(運輸政策審議会答申第19号)
 公的主体等が整備したインフラを運行事業者との契約等により有償で貸し付けること等により、最終的には整備に要する資本費の全部又は一部は運行事業者や利用者において負担する方式
→中之島高速鉄道(中之島新線)、西大阪高速鉄道(西大阪延伸線)
(4)建設資金の確保
○ 鉄道整備に伴う開発利益の一部を還元する仕組み等について関係者間で検討する必要がある。
→泉北高速線、京阪奈新線(ニュータウン方式)
→中之島新線(導入空間の調整)
○ 所要の公的助成を行うとともに制度のあり方について検討する必要がある。
→幹線鉄道等活性化事業費補助(大阪外環状線、阪神尼崎駅)
→ニュータウン鉄道等整備事業費補助(泉北高速線、京阪奈新線)
→鉄道駅総合改善事業費補助(阪神岩屋駅・春日野道駅、山陽電鉄舞子駅)
→地下高速鉄道整備事業費補助(中之島新線、西大阪延伸線)
 
表 3−4−1 都市鉄道整備における現行の助成制度
(拡大画面:64KB)
 
○ 関係地方公共団体による第三セクター鉄道に対する応分の出資等について検討するとともに新たな助成制度の創設についても検討する必要がある。
→JR東西線(大阪府、大阪市、兵庫県、尼崎市等)
→大阪外環状線(大阪府、大阪市、東大阪市、吹田市、八尾市)
→大阪モノレール(大阪府)
→南港テクノポート線、北港テクノポート線(大阪市)
→ポートアイランド線、六甲アイランド線(神戸市)
→京阪奈新線(奈良県、生駒市、奈良市)
→地下鉄東西線(京都市)
 
図 3−4−2   地下高速鉄道事業予算の推移
資料:鉄道の現状(民鉄協会)
(5)需要の確保
○ 相互直通運転の推進や乗換施設の整備等による乗換不便の軽減、乗り継ぎ切符や情報案内サービスの提供等による乗り継ぎ利便の向上、駅前広場の整備やバス路線網の再編等によるフィーダー輸送機関との連携の強化、フリクエンシーアップや速達性・快適性の向上等によるサービス水準の向上等を図る必要がある。
→相互直通運転の推進(地下鉄烏丸線〜近鉄京都線、阪神本線〜山陽電鉄線)
→地下鉄整備に伴うバス路線再編(地下鉄東西線等)
→優等列車停車の見直しによる利便性向上(阪急京都線、南海本線、京阪本線、近鉄京都線等)
→フリクエンシーアップや速達性・快適性の向上(各主要路線)
→乗車券のカード化(ICカード)
 
※ICカード2003年導入予定
民鉄大手(スルッとKANSAI)
JR西日本(ICOCA)
 
○ 地方公共団体等においては、沿線開発の促進、誘導のための規制緩和、駅及び駅周辺を中心とする鉄道を活かした街づくり、学校や集客施設の誘導等による逆方向、閑散時需要の喚起等鉄道需要の喚起を図るための環境づくりに努める必要がある。
→関西文化学術研究都市、神戸三田国際公園都市、国際文化公園都市等大規模開発の促進による需要喚起
→大学の既成市街地から郊外への移転促進等による街づくりの促進
○ プロジェクトの進捗と鉄道整備の整合性をとりつつ進展するような担保措置について検討するとともに、需要の成熟に合わせた鉄道の段階的整備について検討する必要がある。
→泉北高速線、大阪モノレール、京阪奈新線等の段階的整備
 
表 3−4−2 これまで行われた主な需要喚起策
○駅周辺における駐車場整備、住宅開発
○企画券、割引乗車券等の販売
○他社との連携強化(共通カード化、通勤定期の相互利用)
○EV,ES等バリアフリー化の促進
○運行ダイヤの見直し
○優等列車の停車駅追加等による利便性向上
○駅の多機能化(託児所等の設置)
○インターネット等を活用した乗車券販売システムの構築 等
(6)経営の合理化・安定化
○ 経営合理化の実践に努める必要がある。
→駅業務の見直し等組織改革の促進(阪急、南海、近鉄等)
○ 定期割引率の見直し、新線における特別運賃の設定等による適切な運賃水準の維持を図る必要がある。
→大手民鉄(定期割引率の見直し)
→鴨東線、関西国際空港線(特別運賃の設定)
 
図 3−4−3   職員数の推移図
資料:数字でみる鉄道
 
図 3−4−4   通勤定期割引率(大手)
資料:数字でみる鉄道
 
図 3−4−5   事業収益構造(大手民鉄)
資料:鉄道統計年報







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION