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平成15年度国土交通省近畿運輸局関係予算概要
近畿運輸局企画振興部企画課長 足立基成
 平成15年度の国土交通省予算は6兆9,299億円(対前年度比0.97)となっており、「平成15年度予算編成の基本方針」で掲げられた「重点4分野」への施策の集中など重点化・効率化を進め、経済活性化・構造改革を促進することとしています。
 「重点4分野」は、
1. 個性と工夫に満ちた魅力ある都市と地方
2. 公平で安心な高齢化社会・少子化対策
3. 循環型社会の構築・地球環境間題への対応
4. 人間力の向上・発揮−教育・文化、科学技術、IT
としており、その合計は4兆8,532億円(対前年度比1.02)、予算全体に占めるシェアは70%となっています。
 このほか、国土交通省統合の実をあげる連携施策の本格的展開を図るなど、21世紀の日本に必要な分野の事業・施策への重点化を推進することとしていますが、ここでは、このうち、近畿運輸局に関係する主要な事業、施策に関連する事項及び予算について紹介したいと思います。
 なお、今回、新規施策として、観光関係では、「ビジット・ジャパン・キャンペーンの実施」、「外客受入重点地域整備促進事業の推進」、「観光交流空間づくリモデル事業」の創設が、バリアフリー関係では、「交通バリアフリー基本構想策定促進のための環境整備の推進」、環境関係では、「広域的な公共交通利用転換に関する実証実験」の創設、「ゴミゼロ型都市形成のための静脈物流システムの構築」、IT関係では、「ICカード乗車券の共通化・相互利用の推進」、港湾関係では、「スーパー中枢港湾の育成」が新たに予算化されており、これら観光振興や環境問題、少子高齢化等交通を取り巻く21世紀型課題への対応を積極的に進めていくこととしています。
 では、以下に説明いたします。
(注)以下に掲げる金額は、「関西国際空港の整備」を除き、全国ベースの予算額です。
 
(1)個性と工夫に満ちた魅力ある都市と地方
(1)総合的な観光振興対策による地域社会の活性化
 観光交流を通じた経済の活性化、家族との絆、自分の住む地域・国との絆の再生により、元気な日本を再生する。すなわち、国内外の交流人口の拡大による観光消費額の増加がもたらす生産・雇用上の経済効果の大きさを踏まえ、観光振興を経済活性化上の重要な産業政策として推進する。
 
・訪日外国人旅行者の倍増政策【総合政策局観光部】
*「ビジット・ジャパン・キャンペーン」の実施(2,000百万円)新規
 諸外国と比較して不十分かつ見劣りする我が国の外客誘致活動を量、質の両面で飛躍的に強化するため、関係者が参加する実施本部のもと、韓国、中国等の重点市場を対象に、テレビや雑誌を活用した宣伝等による戦略的かつ効果的な訪日キャンペーンを実施する。
 
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*外客受入重点地域整備促進事業の推進(10百万円)新規
 外客受入体制整備促進を図るため、国際観光テーマ地区のうち、特に外客誘致・受入に熱心な地域を選定し、外国人による受入体制整備状況診断をもとに、国際観光地としての指針をとりまとめ、受入体制の改善を推進する事業を実施する。
 
・観光を通じた地域の活性化政策【総合政策局観光部】
*観光交流空間づくりモデル事業の創設(135百万円)新規
 地域の個性を活かした魅力ある観光交流空間づくりのための自主的な取組みを、国土交通省がハード・ソフトの両面から総合的に支援する「観光交流空間づくりモデル事業」を創設する。
 支援施策の一環として、インフラ整備等のハード施策とキャンペーン展開等のソフト施策を戦略的に連携させたモデル対象事業地域毎の「実施計画」の作成を支援しつつ、連携施策・計画作りの手法について調査・検討する。また、モデル事業対象地域において、NPOと連携して、観光交流空間の管理・活用施策の検討、地域固有の自然や地場産業を活用したツアープログラムのモデル的開発調査や、外国語案内標識ガイドラインの策定を行う。
 
*観光まちづくりプログラム策定推進事業(54百万円)
 地域の創意工夫による個性的な観光まちづくりを進めようとしている地域を支援するため、観光まちづくりアドバイザーを派遣するとともに、「観光のまち」を拠点とした周辺地域を含めた観光まちづくり実施支援プログラムの策定を行う。
 
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(2)快適な都市生活空間実現のための都市鉄道の整備の推進
・地下高速鉄道の整備【鉄道局財務課】(40,253百万円)
 都市における鉄道は、都市機能を支える社会資本であり、豊かで快適な都市生活を営む上で不可欠な、基幹的かつ必須の交通機関である。大都市圏における通勤・通学混雑緩和、駅等交通結節点を中心とした沿線地域の活性化を図るなど、都市機能を再生し、魅力ある都市を創造するために地下高速鉄道の新線建設、大規模改良工事(バリアフリー化)を促進する。
管内対象路線
・京都市交通局
 東西線の延伸 (醍醐〜六地蔵 2.4km)
・大阪市交通局
 8号線 (井高野〜今里 12.1km)
・中之島高速鉄道(株)
 京阪中之島新線 (天満橋〜玉江橋 2.9km)
・西大阪高速鉄道(株)
 阪神西大阪線延伸 (西九条〜難波 3.4km)
上記のほか、京都市交通局東西線(二条〜天神川 2.4km)については、別途措置予定。
 
・ニュータウン鉄道等の整備【鉄道局財務課】(4,808百万円)
 ニュータウン事業を推進し、快適で魅力ある居住空間を創造するためには、ニュータウン鉄道の整備は不可欠である。これにより沿線住民の良質な公共交通機関を確保し、利便性の向上を図るとともに、駅等交通結節点を中心とした沿線地域分まちづくりを促進するなど都市機能の向上・活性化を図る。
管内対象路線
・奈良生駒高速鉄道(株)
 京阪奈新線 (生駒〜登美ヶ丘 8.7km)
 
・幹線鉄道の活性化(旅客線化)【鉄道局財務課】(3,865百万円)
 既存ストックの有効活用を図る観点から、大都市圏における貨物鉄道線を旅客線化し、効率的な鉄道整備を実施することにより、沿線地域の通勤通学輸送を確保するとともに駅等交通結節点を中心とした沿線地域の都市機能の向上・活性化を図る。
管内対象路線
・大阪外環状鉄道(株)
大阪外環状線 (新大阪〜久宝寺 21.9km)
 
・乗継の円滑化【鉄道局施設課】(306百万円)
 異なる鉄道路線間における乗継負担を軽減するために、相互直通運転化等の事業を実施し、旅客の利便性の向上を図る。
管内対象駅
・阪神尼崎駅(阪神本線〜西大阪線)
 
・鉄道駅の総合的な改善【鉄道局施設課】(600百万円)
 鉄道駅の安全性や利便性の向上を図るために、市街地再開発事業、土地区画整理事業、駅前広場、自由通路の整備等都市側の事業と一体的に鉄道駅のホームやコンコースの新設、拡幅等を行い、駅機能を総合的に改善する。
管内対象駅
・阪神春日野道駅
 
・踏切道の改良【鉄道局施設課】(245百万円)
 踏切道における事故防止と道路交通の円滑化を図るため、立体交差化や統廃合により除去できない踏切道について、踏切道改良促進法に基づき踏切遮断機や警報機等の踏切保安設備を緊急的に整備する。
*整備内容
踏切遮断機の整備
開かずの踏切対策として、警報時間制御装置を整備
第1種踏切(遮断機のある踏切)において、自動車の直前横断や立ち往生等による事故を防止するため、高規格化保安設備(大型遮断桿、二段型遮断装置、オーバーハング型警報機、障害物検知装置)を整備
 
(3)公共交通サービスの充実
・公共交通活性化総合プログラムの策定【総合政策局交通計画課】(381百万円)
 公共交通サービスの維持・充実について、個別案件毎に地方運輸局が主体となって地方公共団体その他の関係者間のコンセンサス作りを行い、その具体化・実現を図る。
○内容
 各地の公共交通サービスの改善に関する個別プロジェクトの実現に向け、地方運輸局が中心となって地域、事業者、観光関係者等とともに検討を行い、必要な方策とその実現のための役割分担を定めたプログラムを策定する。
 
・地方ブロック公共交通・地域交通環境計画の策定【総合政策局交通計画課、環境・海洋課】(86百万円)
 各地方ブロック内の公共交通サービスの将来像や地域交通環境対策の方向性をわかりやすく示す。
○内容
 地方ブロック毎に、ブロック内の公共交通サービスについてバリアフリーや情報化等の新たな視点も踏まえ行う客観的な現状診断の結果や、地域交通環境対策の基本的考え方を盛り込んだ地方ブロック公共交通・地域交通環境計画を策定する。
 
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地方ブロック公共交通・地域交通環境計画
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・中小鉄道近代化等【鉄道局財務課】(2,635百万円)
 地方鉄道は、過疎化やモータリゼーションの進展等により輸送人員が減少しており、その経営は厳しい状況にあるが、地域の重要な交通機関としての役割を担っており、地域活性化の柱として、利用促進、安全性向上、経営合理化等を推進する。
 このため、「鉄道軌道近代化設備整備費補助金」制度を活用し、以下の事業を行う。
*自動列車停止装置(ATS)重点緊急整備
 ATSは、列車同士の正面衝突防止に効果的な安全対策設備であるため、地方中小鉄道のATS未設置路線に短期間で集中的に、誤出発防止機能を有するATSを設置する。(補助率:2/5)
*安全性緊急評価事業
 地方中小鉄道が所有する施設や車両の現状を安全性の観点から評価(安全性緊急評価)し、これに基づき、安全運行確保のために必要となる施設等の維持・改修等を適切に実施する。(補助率:1/3)
 
・バス利用促進総合対策事業
【自動車交通局総務課企画室】(1,740百万円)
 人、まち、環境にやさしいバスの意義を最大限に発揮したまちづくりに取り組む市町村を支援するオムニバスタウンの整備をはじめとして、バスの利便性向上、活性化等を図り、自家用車と公共交通機関のバランスのとれた交通体系を確立する。
 
コミュニティバス
 
ハイグレードバス停
 
・地方バス路線維持対策【自動車交通局旅客課】(7,301百万円)
 バス事業はモータリゼーションの進展や過疎化の進行により大変厳しい経営状況にある。しかしながら、バスは地域住民、特に自らの交通手段を持たない老人や学童等いわゆる交通弱者にとって必要不可欠な公共交通機関であり、バス路線の維持・確保は地域住民の足として重要な課題。
 地方における生活交通を確保するため、地方バス生活路線に対し補助する。
 
 
・離島航路補助【海事局国内旅客課】(3,920百万円)
 離島航路事業者に対し、離島航路の維持・整備を図るため「離島航路整備法」に基づきその欠損の一部を補助するとともに、離島航路就航船舶の近代化及びバリアフリー化を図るため、これに要する費用の一部を補助する。
 
管内の補助対象航路(平成14年度)
西舞鶴〜大丹生〜東舞鶴
 
 
(4)港湾における国際競争力強化のためのソフト・ハード一体となった取組み
・スーパー中枢港湾の育成【海事局港運課】(48百万円)新規
 (次世代高規格コンテナターミナルオペレーターシステムの構築)
 我が国コンテナ物流のコスト・サービスを向上させるための先導的・実験的な試みとして、次世代高規格コンテナターミナルをモデル的に育成するスーパー中枢港湾において、新たなターミナルオペレーターシステムの構築について検討する。
 
スーパー中枢港湾の目標
アジアの主要港を凌ぐコスト・サービスを実現することを目指し、港湾コストは現状よけ約3割低減させる。リードタイムは、現状3〜4日を1日程度まで短縮させる
 
・港湾運送事業に係る地方港の規制緩和についての検討【海事局港運課】(18百万円)
 港湾荷役サービスの更なる効率化を推進する体制を整えるため、平成12年11月に先行して実施した主要9港以外の地方港における規制緩和の方策について検討を行う。
 
(5)大都市圏拠点空港の整備
・関西国際空港の整備【航空局】
 平成15年度予算では、2007年の供用開始を目標として進められている2期事業について引き続き埋立工事等を進めるとともに、1期事業として既存施設の能力増強を実施する。また、関西国際空港株式会社の安定的な経営基盤を確立するため、経営改善を進め、有利子債務の確実な償還を期すとともに、当面の資金調達の円滑化を図ることとするため、新たな補給金制度の創設及び政府保証の拡充を図る。
・2期事業(平行滑走路等の整備)の推進
会社等事業費 925億円
  うち 政府出資金 234億円
  政府無利子貸付金 191億円
  財政投融資(政保債) 10億円
・1期事業(既存施設の能力増強)
会社等事業費 17億円
  うち 政府出資金 2億円
  財政投融資(政保債) 534億円
・補給金 90億円
(現行の政府保証(10年)に加え)
・政府保証債(5年未満) 1,749億円
・国直轄事業等 4億円
 
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