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小笠原のクジラやイルカ
 小笠原の海ではこれまでに20種類以上のクジラやイルカが確認されています。中でもよく見られるザトウクジラ、ミナミハンドウイルカ、ハシナガイルカ、マッコウクジラはホエールウォッチングの対象になっていて、私たちにその雄姿(ゆうし)を見せてくれます。
 
ザトウクジラ
 ザトウクジラは世界中の海に住んでいるクジラですが、冬から春にかけては小笠原のような暖かな(あたたかな)海域の島や大陸の沿岸で出産、子育て、交尾(こうび)といった繁殖(はんしょく)活動をおこないます。春先にはその年に生まれた子クジラを連れたザトウクジラの群れ(むれ)に出会うことができます。
 
 
 なお、この繁殖期間中、大人のクジラたちは基本的にエサは食べません。エサは夏から秋にかけてもっと寒い海域の海に移動して食べています。小笠原群島の沿岸には12月から5月上旬にかけてザトウクジラがやってきますが、ウォッチングには海がおだやかでクジラの数が多い2月から4月が適して(てきして)います。
 
ザトウクジラ
 
イルカ
 ミナミハンドウイルカとハシナガイルカは、比較的(ひかくてき)暖かな海域に1年中住んでいるイルカたちです。小笠原群島の沿岸で1年中見ることができます。ミナミハンドウイルカは単独から30頭ぐらいの群れを作りますが、ハシナガイルカは30頭から300頭ぐらいの群れを作ります。船のへ先に寄ってきて、船と伴泳(ばんえい)することがあります。
 
ハシナガイルカ
ミナミハンドウイルカ
ハシナガイルカ
ミナミハンドウイルカ
 
マッコウクジラ
 マッコウクジラは世界中の外洋域に住んでいますが、ふつう小笠原のような温暖な海域には大人のメスとその子供たちで構成(こうせい)された群れが住んでいて、大人のオスは寒冷域(かんれいいき)に住んでいます。オスクジラは交尾の時だけメスのいる群れのところへやってくるといわれています。マッコウクジラは深い海に住む大型のイカ類を主なエサとしていて、エサを求めて水深1,000m以上にまで潜る(もぐる)ことが知られています。小笠原では水深が1,000mを越す(こす)ような外洋に1年中いますが、ウォッチングツアーは夏から秋を中心に、海況(かいきょう)のよいときにおこなわれています。
 
マッコウクジラ
 
小笠原とクジラ・イルカの関係
 今ではクジラやイルカのウォッチングポイントとして有名な小笠原ですが、クジラやイルカとのつきあいは、1830年、小笠原に最初に定住したアメリカ、ヨーロッパ、ハワイのカナカの人たちが来島したころまでさかのぼります。彼らが来島した目的には、油を取るために捕獲(ほかく)していたマッコウクジラのよい漁場として、この海域を利用していたアメリカの捕鯨船(ほげいせん)への物資の提供があったのです。その後、石油の発見によりアメリカの捕鯨は衰退(すいたい)しましたが、大正・昭和時代には、日本が食用として、この海域に住むクジラをつかまえていた時期もありました。
 
小笠原の自然を未来へ残すには
 クジラやイルカ、アカウミガメ、コアホウドリなどの海鳥類、その他にも多くの野生の動植物が次の世代を残す繁殖地として小笠原を利用しています。また、小笠原にしかいない動物や植物、小笠原ならではの景観(けいかん)もたくさんあります。これらの自然を未来に残すために私たちには何ができるのか、何をしなければいけないのか。この小笠原への旅をきっかけに考えてみてください。
 
南島
母島小富士







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