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No.11/36
海をひらくII
1. 石油掘削装置(せきゆくっさくそうち)
 海底の石油掘削を最初にはじめたのはアメリカです。1890年(明治23)カリフォルニアの海底から石油を掘削したのが海底油田(ゆでん)開発の先駆けとなりました。しかしその当時は、陸から桟橋(さんばし)を出してそれを足場として石油を掘るというもので、規模も小さくまだまだ本格的な掘削とは言えませんでした。石油掘削装置を使って本格的な掘削が行われるようになったのは、第2次世界大戦以降です。1949年(昭和23)に、アメリカのルイジアナ沖で海底油田の開発が成功したのと、'50年代から'60年代にかけて世界各地で海底油田の発見が続いたのがきっかけとなり、それ以来本格的に掘削が行われてきました。海洋から石油を取り出す為の装置として、石油掘削装置が使われていて、沿岸(えんがん)から大陸棚(たいりくだな)そして大深度の海洋底からの石油掘削装置は、その掘削海域の位置や地形、深度などさまざまな条件に対応できるようこれには3つの種類があり型式と性能はそれが稼働する海域や季節により決定されます。
 
(1)ジャッキアップ型
 ジャッキアップ型は、プラットホームにジャッキ装置で上下に動く脚を取り付けたもので、目的地ではこの数本の脚を海底に降ろし着底して、掘削を行います。この型だとプラットホームは海面上にあるので、波浪の影響を直接受けず、比較的気象の荒い海でも稼働(かどう)が可能という特徴がありますが、しかし水深としてはある限定された海域での稼働となります。
(2)半潜水型(はんせんすいがた)
 半潜水型は、セミ・サブマージブル型ともいわれ、最大稼働水深は100メートル以上です。昭和36年(1961)にこの半潜水型掘削装置が開発されたことにより、従来の固定式プラットホームやジャッキアップ型掘削装置では経済的な掘削ができなかった、水深100メートル以深の海域を探鉱対象海域(たんこうたいしょうかいいき)に加えることができるようになりました。水中に大きなポンツーンを持ち、その上に円筒形の脚を立てプラットホームを乗せたものです。移動時は脚に空気を入れて全体を上へ持ち上げて曳航(えいこう)されますが目的地では脚の中に水を入れることによって脚の中の部分を踏まえて、本体が水面にでます。波浪中の運動性能が優れ作業性が良いので急激に発展、普及しました。稼働水深が大きいことと船体の移動が少なく安定していることから、北海などの海象の厳しい海域での稼働が可能なことが最大の特徴です。
*ポンツーン: 浮いている箱形の構造物で、船が横づけして人や貨物の上陸、乗船の補助として用いられます。桟橋の代用。
(3)船型
 船型はフローター型とも言われ、船に掘削装置を取り付けた物で、普通石油掘削船と呼ばれます。作業時には船体を数個の錨(いかり)で海底に係留します。その最大稼働水深は100メートル以上ですが、船体の保持方式によっては1,000メートル程度に達する物もあります。しかし、船体が海面に浮かんでいる為波の影響を受けやすいため、スラスターを使っての位置保持が開発されました。このコンピュータを使った位置制御装置(いちせいぎょそうち)によって半潜水型なみの安定性が得られ、船型の特徴である大水深での稼働と高移動性が十分に発揮できるようになりました。移動時にジャッキアップ型や半潜水型に比べて船が受ける抵抗が少なく、推進装置(すいしんそうち)によって普通の船と同じように12〜15ノットのスピードで自航できます。
 
 
2. “第二白竜(だいにはくりゅう)”
 日本で最初の海洋掘削が行われたのは、明治32年(1890)新潟県尼瀬(あまぜ)においてでした。近代的な海洋掘削による石油資源開発は、昭和31年(1956)に国策会社であった旧石油資源開発(株)(現日本海洋掘削)により開始されました。石油開発公団では昭和46年(1971)に国産第一号の半潜水型掘削装置“第二白竜”を完成させ、これを民間企業にリースし石油開発を続けてきました。この装置は外国の掘削装置と比べて次のような特徴を持っていました。(1)掘削装置を浮かせるためのロワーハルが2個で世界最初の形式で、今までのものに比べて曳航するときの抵抗が少なくなる。さらに安定性や稼働率も良好である。(2)大型のアンカーウインチを採用しているので、定点係留にも精度良く反応できる(潮に流されず一カ所に留まっていることができる)。(3)作業の時に発生する汚水を一カ所に集め、固形分(石や砂)、油、水に分離する装置で処理する。
 陸上との交通手段は12人乗りくらいの中型ヘリコプターによって行われました。その為プラットホームにはヘリポートや、70人が暮らせる部屋と病室や診察室・洗濯室などがありました。
 
写真提供:日本海洋掘削(株)
 
3. “トランスワールドリグ61”
 アメリカのトランスワールド・ドリリング社向けに建造された、海底下約6,000メートルで掘削可能な半潜水型の海底油田掘削装置です。世界で最初の昇降式の脚柱を持つタイプで、船の形をした本体とその中央部から左右に突き出た張り出し桁(けた)から成り、上から見ると大きな十字架のような形をしています。自力で走ることはできないので目的地まで曳航しますが、4本の脚を引き揚げることができるので安定性がよく、速いスピードで曳航することができます。船内には50人が暮らせる居住区と採集した岩石の地質調査や原油の分析を行うための実験室などが置かれ、甲板上にはヘリポートが設けられました。
 
写真提供:佐世保重工業(株)
船体 長さ 121.9メートル
  17.7メートル
  深さ 7.015メートル
(あし) 長さ 33.34メートル
  17.68メートル
  深さ 4.49メートル
掘削深度
(くっさくしんど)
  約6,000メートル
操業時排水量
(そうぎょうじはいすいりょう)
  約11,000トン







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