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No.9/36
未来の船II
 石油は、今日の私たちの生活に欠かせない物のひとつです。しかし、石油の量には限りがあり、このまま使い続けると、あと20〜30年で無くなってしまうといわれています。また、石油を燃やした時や、工場、車などから発生する煙や排気ガスで空気が汚れたり、地球温暖化の原因の一つにもなっています。そこで、限りある資源を有効に活用し、私たちの住む環境を汚さないエネルギーの利用を目指して、船の推進装置(すいしんそうち)にも石油以外のエネルギーを使った新しい技術の開発がこころみられています。
 
1. 超電導電磁推進船(ちょうでんどうでんじすいしんせん)
(1)超電導電磁推進船の原理
 電磁気学(でんじきがく)の基本法則の一つに「フレミングの左手の法則」というのがありますが、超電導電磁推進船の推進の原理は、この法則を応用したものです。「左手の人差し指・中指・親指を、それぞれ直角になるように開き、人差し指の方向に磁場(じば)を、中指の方向に電流を流すと、親指の方向に電磁力が発生する」(図1)というものです。
 船に固定した超電導磁石(ちょうでんどうじしゃく)によって海水中に磁場をつくり、その磁場と直角に交わるように海水に電流を流すと電磁力が発生して、その反発力によって船が進みます。
 
図1:フレミングの左手の法則
 
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図2:電磁推進船の推進方法
 
(2)超電導電磁推進船“ヤマト1”
 「フレミングの左手の法則」を船の推進装置に応用する場合、表面の図2に示すように2通りの方法が考えられます。1つは「外部磁場方式」というもので、船体下部外側の海水中に磁場と電場を作用させて推進する方法で、もう1つは海水ダクトを設けて、このダクト内の海水中に磁場と電場を作用させダクト内の海水を噴出して推進する、「内部磁場方式」と称するものです。
 “ヤマト1”は、船体周辺の海洋環境に与える影響を考えて、磁場と電場をダクト内に限定できる内部磁場方式を採用しました。
 この船の推進装置は船底の両側に1つずつあり、水中に電流を流す為の電極から成り立っています。推進装置の電極に電流を流すと、海水の通り道である海水管に磁場が発生して、それが海水管の間を回って流れます。すると、電磁力が船の後部に向って発生し、前部から海水が吸い込まれ、その海水を船尾の海水噴射口から勢いよく噴出することによって、船を前進させています。
 
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写真提供:(財)シップ・アンド・オーシャン財団







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