日本財団 図書館


 さらに東京都の上位計画である「東京構想2000(仮称)」によると、「幹線道路の整備と沿道の不燃化を促進することにより、骨格防災軸を形成し、震災時の大規模な延焼を防止するとともに、応急活動や災害復旧のための輸送ネットワークの確保を図る。」とされており、主要な都市計画道路等と供に、荒川、隅田川、江戸川、多摩川を骨格防災軸として位置づけている。また、地震による都市機能の低下を最小限にとどめるため「東部低地の河川や臨海部において災害時の緊急避難、救援物資等の輸送に対応する水上輸送基地(防災船着き場)の整備を図るとされている。
 
図−3.4.5 骨格防災軸の計画
 
 東京都においては、これらの緊急輸送ネットワークを整備し、「3.4.1.1 調達船舶と運行者の安全な河川内航行の経験度」において整理した船舶を活用し、水上も利用して物資や人員を緊急時に輸送する計画が策定されている。
 
(2) 埼玉県の物資・人員輸送計画
 「埼玉県地域防災計画」によると、「災害発生時に、迅速かつ適切な応急対策を行うため、災害対策本部を設置する庁舎(防災情報センター(仮称)等)の耐震性の向上及び防災対策上の中枢機能を高めるとともに、被災地域に対する広域的な救援活動を行う防災活動拠点を適切に整備する。また、各防災活動拠点の機能が有効に発揮できるよう、これらの拠点施設を緊急輸送道路(もしくは同等の道路)で連結し、そのネットワーク化を図る。」とされている。
 緊急輸送ネットワークは、陸上、河川及び空の交通手段を活用した効率的な緊急輸送を行うため、災害危険度図地震被害想定結果や地域の現況等に基づき、県が緊急輸送道路を選定し、整備することとされている。この整備計画によると、県による指定は表−3.4.9に示す分類により、緊急輸送ネットワークが整備される。
 
表-3.4.9 埼玉県による緊急輸送道路の指定基準
高速自動車国道、一般国道及びこれらを連絡する幹線的な道路
アの道路と次に掲げる施設とを連携し、又は施設間を相互に連絡する道路
県庁舎、市町村庁舎指定行政機関、指定地方行政機関等防災活動拠点(防災基地、県営公園、防災拠点校等)県及び市町村の備蓄倉庫、輸送拠点、広域避難場所、臨時ヘリポート、着岸施設(河川)
 
 なお、市町村は市町村内における効率的な緊急輸送を行うため、災害危険度図や地域の現況等に基づいて、あらかじめ県、隣接市町村、関係機関、関連企業と協議の上、市町村内の表−3.4.9に示す「イ」欄と関わりのある防災活動拠点及び緊急輸送拠点を結ぶ道路を選定し、緊急輸送道路として指定することとされている。
 緊急輸送道路に指定された施設の管理者は、地域防災計画や防災業務計画等の各々の計画で、緊急輸送道路の耐震強化を示し、その計画に基づき耐震性の向上などを図っていくこととされており、その際、発災後に応急復旧作業の協力が得られるよう、あらかじめ応援体制を整備しておくとされている。
 船舶及び水上に関連する防災活動拠点は、舟運輸送拠点と位置づけられており、整備の対象としてあがっているのは、河川マリーナ、芝川マリーナ、大場川マリーナ、水上バス発着場、秋ヶ瀬桟橋、川口防災船着場の6箇所である。これらの6箇所では救援物資を集配する機能を持たせることが計画されている。
 この計画に関する物資・人員輸送について、埼玉県の担当部署にヒアリングした。その結果は以下に示すとおりである。
(1)人の輸送について
 災害時に埼玉県全域が交通不能になることは無いと想定しているため、東西南北の地域にそれぞれ10台ずつのバスを登録し、バスによる輸送で対応できるものと想定している。また、船舶による人の輸送に関しては秋が瀬桟橋と戸田は問題が無いものと考えている。
(2)物資の輸送について
 物資の輸送に関しては人の輸送とは異なり、更なる検討を加える必要がある。
 このように埼玉県では、防災活動の拠点となる県庁舎等の施設を整備し、それらにアクセスするための緊急輸送道路の連結を図り、ネットワークを構築することで、物資・人員の輸送を効率的に行う計画とされている。その中における水上の利用は、救援物資を集配する機能を主に持たせることとされている。
 また、ヒアリング結果より、人の輸送については車両による輸送と船舶による輸送によって十分な対応ができることを想定されているが、物資の輸送については更なる検討を行うこととしている。また、埼玉県としては、「災害時に物資が動き始めるのは災害発生の1〜3日後であり、まずは人の輸送を重視する」といったスタンスである。
 
3.4.1.3 物資・人員取り扱いバース及び機能
・リバーステーションの位置・施設・物資陸揚げ設備
 現在国土交通省では荒川下流域において、舟運の活性化に併せて、12箇所(供用済み7箇所、整備中5箇所)のリバーステーションを整備している(図−3.4.7参照)。これらのリバーステーションは、緊急時には災害復旧の拠点となり、常時は年間を通じてレジャー用の船や観光用の水上バス等の離発着及び人の乗降が自由にできる公共の船着き場、また、物流や河川工事の資材運搬のための基地として利用される。
 
(拡大画面:123KB)
図−3.4.5 緊急時及び常時のリバーステーションの利用目的
 
図−3.4.6 リバーステーションの種類について
 
(拡大画面:636KB)
図−3.4.7 リバーステーションの位置







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION