4)魚卵・稚仔
今回の実験においては、魚卵・稚仔を確認することができなかった。通常の海域では数個体から数十個体分布しているのに対し、今回採水した1m3の海水には、処理前の海水にも全く出現しなかったのは、通常の大きさが1mm以上の魚卵・稚仔は、φ5mmのストレーナーやポンプによって、装置通過前に除去あるいは損傷されたものと推測される。よって、本装置を用いることで魚類の移動は排除できるものと考えられる。
(2)高速処理による損傷効果向上の検証
1)植物プランクトン
表II.3.10-6及び図II.3.10-6には、高速処理(スリット部流速41.24m/sec、通常よりも約10m/sec速い。)の場合における植物プランクトンに対する損傷効果(1pass)を示した。
渦鞭毛藻は、全サイズの合計で76.97%、20μm以上に限ると94.73%と高い損傷率を記録した。流速約30m/sec.の基本効果実験では、1passの全サイズ合計が64.68%、20μm以上では62.85%にとどまっており、約10m/secの流速増加で、全サイズ合計の損傷率が約10%、20μm以上では約30%向上したことになる。なお、高速処理で2pass処理を行った場合には、全サイズでもほぼ95%の損傷率に達する。
珪藻は、全サイズ合計の損傷率が84.07%、20μmm以上では91.29%であった。基本効果実験では、1passの全サイズ合計の損傷率が57.52%、20μm以上が64.81%であったのに比べ、全サイズ合計及び20μm以上の損傷率がともに約27%向上している。高速処理で2pass処理の場合は、全サイズ合計でも97%を超える損傷率となる。
珪藻がほとんどを占める全植物プランクトンの損傷率は、珪藻とほぼ同じであり、高速処理による効果向上も同様の結果となっている。
以上の高速処理実験結果は、スリット部流速を速くすると相応の処理効果の向上が望めることを検証したことになる。実船での運用を考えた場合には、ポンプ能力に関する問題が残るものの、スリット部流速約40m/secで漲水時と排水時の両方で処理すると、すべての植物プランクトンを対象とした場合でもほぼ95%の損傷率に達することになる。
表II.3.10-6 小型装置の高速処理(流速41.24m/sec)における植物プランクトンに対する損傷効果 |
スリット部流速:41.24m/sec
圧損:929.2kPa 単位:cells/L
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パイプ処理前 |
1pass処理直後 |
1pass損傷率(%) |
渦鞭毛藻 |
<20μm |
43220 |
10000 |
76.86 |
≧20μm |
266 |
14 |
94.73 |
Total |
43486 |
10014 |
76.97 |
珪藻 |
<20μm |
567300 |
90000 |
84.14 |
≧20μm |
2880 |
260 |
90.97 |
Total |
570180 |
90260 |
84.17 |
全植物プランクトン |
<20μm |
688890 |
110000 |
84.03 |
≧20μm |
3167 |
276 |
91.29 |
Total |
692057 |
110276 |
84.07 |
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注)損傷率: |
処理前の正常細胞数に対する処理後正常細胞の減少率 |
スリット部流速:41.24m/sec、圧損:929.2kPa
図II.3.10-6 小型装置の高速処理(流速41.24m/sec)における植物プランクトンに対する損傷効果(1)渦鞭毛藻、細胞数変化 |
スリット部流速:41.24m/sec、圧損:929.2kPa
図II.3.10-6 小型装置の高速処理(流速41.24m/sec)における植物プランクトンに対する損傷効果(1)渦鞭毛藻、損傷率 |
スリット部流速:41.24m/sec、圧損:929.2kPa
図II.3.10-6 小型装置の高速処理(流速41.24m/sec)における植物プランクトンに対する損傷効果(2)珪藻、細胞数変化 |
スリット部流速:41.24m/sec、圧損:929.2kPa
図II.3.10-6 小型装置の高速処理(流速41.24m/sec)における植物プランクトンに対する損傷効果(2)珪藻、損傷率 |
スリット部流速:41.24m/sec、圧損:929.2kPa
図II.3.10-6 小型装置の高速処理(流速41.24m/sec)における植物プランクトンに対する損傷効果(3)全植物プランクトン、細胞数変化 |
スリット部流速:41.24m/sec、圧損:929.2kPa
図II.3.10-6 小型装置の高速処理(流速41.24m/sec)における植物プランクトンに対する損傷効果(3)全植物プランクトン、損傷率 |
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