3.10 実験結果
(1)小型装置の水生生物損傷基本効果
1)細菌類
表II.3.10-1及び2並びに図II.3.10-1及び2には、小型装置の大腸菌群と一般従属栄養細菌に対する基本効果を示した。
1pass処理後の大腸菌群数及び一般従属栄養細菌は、減少率にばらつきがあるものの第1回実験を除けばすべて処理後に減少した。よって、本装置は基本的に細菌類に対しても殺滅効果を有しているものと考えられる。
第1回実験に着目する。第1回実験では、1pass処理による減少が認められず、反対に僅かに増加した結果となった。増加した理由は、細菌類の増殖特性にあると考えられる。細菌類は、他の水生生物と異なり、死滅した生物等の有機物を分解して増殖し、その増殖速度は極めて速い。今回の実験は、実験工程の都合上で処理の翌日に分析を行った。つまり、処理によって細菌の一部が死滅したとしても、生残した細菌類が処理によって死滅した生物等に由来する豊富な有機物を餌に、処理後2日の間に再び増殖したものと考えられる。1pass処理よりも2pass処理の方で、処理前の5倍以上の増加となったのは、この細菌類の特性を表す結果であろう。
以上の結果から、本装置は基本的に細菌類に対しても殺滅効果を有していると考えられるが、完全に殺滅しない限り再増殖を招き、処理前よりも増加させる可能性がある。実際の運用を考えた場合において、細菌類の増殖を起こさない(漲水前よりも減少させる)方法としては、航海中にバラスト水を循環処理するか、排水時に処理することが必要になるものと考えられる。
表II.3.10-1 小型装置の大腸菌群に対する基本損傷効果 |
スリット部流速:29.98〜30.48m/s圧損:446.3〜448.5kPa
単位:MPN/100ml
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パイプ処理前 |
1pass処理直後 |
2pass処理直後 |
1pass減少率(%) |
2pass減少率(%) |
第1回実験 |
8.2 |
12 |
130 |
-45.84 |
-1479.97 |
第2回実験 |
<1 |
<1 |
|
|
|
第3回実験 |
5.2 |
5 |
|
4.51 |
|
第4回実験 |
1.9 |
<1 |
|
100.00 |
|
第5回実験 |
2.6 |
<1 |
|
100.00 |
|
平均 |
− |
39.67 |
|
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注)空白: |
分析せずあるいは算出対象外
<0.1:検出限界以下、損傷率算出時は0として計算 |
表II.3.10-2 小型装置の一般従属栄養細菌に対する基本損傷効果 |
スリット部流速:29.98〜30.48m/s 圧損:446.3〜448.5kPa
単位:MPN/100ml
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パイプ処理前 |
1pass処理直後 |
処理直後 |
1pass減少率(%) |
2pass減少率(%) |
第1回実験 |
733,910 |
790,000 |
4,900,000 |
-7.64 |
-567.66 |
第2回実験 |
4,552,100 |
2,200,000 |
|
51.67 |
|
第3回実験 |
12,077,000 |
790,000 |
|
93.46 |
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第4回実験 |
1,207,700 |
1,100,000 |
|
8.92 |
|
第5回実験 |
4,552,100 |
3,300,000 |
|
27.51 |
|
平均 |
− |
34.78 |
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注)空白: |
分析せずあるいは算出対象外
<0.1:検出限界以下、損傷率算出時は0として計算 |
スリット部流速:29.98〜30.48m/sec、圧損:446.3〜448.5kPa
図II.3.10-1 小型装置の大腸菌群に対する基本損傷効果 |
スリット部流速:29.98〜30.48m/sec、圧損:446.3〜448.5kPa
図II.3.10-2 小型装置の一般従属栄養細菌に対する基本損傷効果 |
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