I 研究概要
1. 実施目的
本調査研究は、バラスト水に内在する水生生物の越境移動による生態系破壊及び経済・健康面への被害を防止し、有効性、経済性、簡便性等に優れ、かつ、環境にやさしい有害水生生物処理システムについて調査研究して、当該システムの実用化・普及を図り、世界の水圏環境保護に資することを目的とする。
2. 研究の内容及び経過
2.1 研究の内容
本研究は、平成13年度「船舶運航に伴うバラスト水による海洋生態系供の影響低減に関する調査」で、バラスト水中の水生生物処理技術として最も実用的であると評価した機械的殺滅法の実用機開発を目標とした。
本研究では、平成13年度の研究成果を基に、処理能力100トン/時間レベルの小型装置の設計・製作を行い、陸上実験で各種水生生物に対する効果の確認、問題点の確認と克服方法に関して検討した。次いで、システムの搭載を想定する船舶を選定し、対象船舶の要件と小型装置の実験成果を基に、実船搭載試作機の設計と製作を行い、陸上実験で各種水生生物に対する効果等の確認と課題の検討を行った。
なお、開発は、実船への搭載性、運用性、経済性等に優れ、現在IMO(MEPC)で議論されている処理基準への対応が可能で、国際的にも容認される装置であることを常に念頭におき、さらには赤潮対策や各種水質改善にも活用できることを考慮しながら行った。
2.2 研究の経過
平成14年
5月13日 |
小型装置(100トン/時間)の設計を開始した。 |
6月7日 |
小型装置の設計が終了した。 |
6月10日 |
小型装置の製作を開始した。 |
8月2日 |
小型装置の製作が完了した。 |
8月5日 |
小型装置を用いて水生生物処理効果確認等の実験を開始した。 |
8月5日 |
学識経験者によって実験内容の検証が行われた。 |
8月5〜6日 |
NHKによる取材が行われた。 |
8月20日 |
NHK総合テレビ「おはよう日本」で本システムが紹介された。 |
9月2日 |
学識経験者及び海運業界関係者による実験内容の検証が行われた。 |
9月13日 |
小型装置による水生生物処理効果確認陸上実験等を終了した。 |
9月17日 |
実験結果の解析、課題の抽出とその克服方法の検討などに着手した。 |
9月30日
〜10月11日 |
第48回MEPC及び第1回中間期MEPCバラスト水作業部会に参加し、処理基準等の条約内容に関する情報収集と機械的殺滅法の周知活動を行った。 |
11月1日 |
平成15年度に実施予定の実船実験対象候補船舶の選定作業に着手した。 |
11月18日 |
実船搭載予定試作機の設計を開始した。 |
11月22日 |
国際シンポジウム「TECNO-OCEAN 2002」神戸大会で、本開発装置等について発表した。 |
平成15年
1月17日 |
実船搭載予定試作機の設計を終了した。 |
1月20日 |
実船搭載予定試作機の製作を開始した。 |
2月14日 |
実船搭載予定試作機の製作を完了した。 |
2月17日 |
実船搭載予定試作機作動試験を開始した。 |
3月3〜7日 |
第2回中間期MEPCバラスト水作業部会に参加し、処理基準等の条約内容に関する情報収集と機械的殺滅法の周知活動を行った。 |
3月14日 |
実船搭載予定試作機作動試験を終了した。 |
3月17日 |
実船搭載予定試作機の水生生物効果試験等を開始した。 |
3月28日 |
実船搭載予定試作機の水生生物効果試験等を終了した。 |
3月31日 |
実船搭載予定試作機作動試験及び生物処理効果確認実験結果の解析及び課題とその克服方法を検討し、報告書原稿の作成を開始した。 |
4月1・2日 |
学識経験者等による実験内容の検証及び今後の課題の検討が行われた。 |
4月16日 |
報告書原稿の作成を完了した。 |
3. 本事業の成果
本事業では、国際的な緊急課題であるバラスト水による水生生物の移動・拡散を防止するバラスト水処理技術の開発をテーマとし、平成13年度までの当協会の調査研究において実用性が高いと評価された水生生物の機械的殺滅法の実用機開発を目標に各種検討や実験を実施した。
その結果、実船への搭載を想定した装置を開発するに至った。また、より有効性を高めるための今後の課題についても検討した。本技術は、国際的要求に応え得る実用的な処理技術に発展するものと信じている。
これら成果は、国際シンポジウム及びNHKで放映・紹介され、大きな反響を得た。
これら科学的かつ客観的な視点での検討は、今後のバラスト水に関する国際条約に反映できるものであり、関係機関、海運業界等の関係者が今後の対策を考える際の、また、各種水質改善の際の参考資料としての事業の目的を満たすものであって、十分な成果を得たといえよう。
さらに、淡水域で様々な水質障害引き起こす「アオコ(藍藻類、Microcystis属)」に対する殺滅効果を確認したことも、本装置の多面的な水域環境問題対策技術としての可能性を示す成果である。
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