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2.4 貨物輸送の状況
2.4.1 仕向港または仕出港別の航海数
(1)ケミカルタンカー
 「LLOYD'S PORTS OF THE WORLD 2001」(LLP Ltd)、「GUIDE TO PORT ENTRY 2001−2002」(SHIPPING GUIDE Ltd)等の資料をもとに、石油類以外のばら積みのケミカルを取り扱う施設を有すると考えられる港を抽出し、2001年にマ・シ海峡を航行したケミカルタンカーの航海数を、仕出国及び仕向国のゾーン別に集計したものを表 2.4−1に示す。
 シンガポールを仕出国または仕向国とする航海数が多く見られるが、Singapore港においては燃料油や船用品の補給が一般的に行われていることから、必ずしも全てのケミカルタンカーがシンガポールにおいてケミカル類を取り扱うため寄港しているとは限らない。
 同表を見ると、航海数の3分の1弱は石油類のみを取り扱うと考えられる港を仕出港または仕向港としており、ケミカルタンカーが石油類を輸送している状況がうかがえる。
 また、ケミカルを取り扱う施設を有すると考えられる港においては、石油類も取り扱っていることを考えると、ケミカルタンカーが石油類を除くケミカル類を積載して航行した航海数はさらに少なくなる。ケミカルタンカーでは複数の品種を積載して多数の港で荷役を行うことも考えられるが、ばら積みのケミカルを取り扱う施設を有すると考えられる港間を航行した航海数912航海の片道を空船航海すると単純に仮定すると、ケミカル類を積載した航海数は多くても400〜500航海程度となる。
 
表 2.4−1:マ・シ海峡を航行したケミカルタンカーのケミカル取扱別の仕出国・仕向国別航海数(2001年)
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(2)LPG船
 ケミカルタンカーと同様に、LPGを取り扱う施設を有すると考えられる港を積地・揚地別に抽出し、2001年にマ・シ海峡を航行したLPG船の航海数を、仕出国及び仕向国のゾーン別に集計したものを表 2.4−2に示す。なお、中国についてはLPGターミナルについて「中国におけるLPGの需給とその物流」(三井海上基礎研究所)を参考とした。
 なお、Singapore港等、積荷と揚荷がともに考えられる港があるが、Singapore港はLPGの輸出が多いことから積地として取り扱うなど、便宜上積地、揚地の何れか一方とした。
 必ずしもすべての港のLPGの取扱施設の状況、LPG以外のLPG船の積載できる貨物(アンモニア等)の取扱施設の状況は明らかではないが、揚地と考えられる港(揚地港という。以下、同じ。)を仕出港または仕向港とする航海数の割合は約34%、積地と考えられる港(積地港という。以下、同じ。)を仕出港または仕向港とする航海数の割合は約50%、その他の港については約16%となっている。
 また、揚地港から積地港への航海数の割合が約27%、揚地港から揚地港へは約4%、揚地港からその他の港へは約3%となっており、積地港から揚地港への航海数の割合が約26%、積地港から積地港へは約13%、積地港からその他の港へは約11%となっている。
 しかしながら、ケミカルタンカーの場合と同様、積地として取り扱ったシンガポールにおいては、貨物の取扱いのほかに燃料油や船用品の補給が一般的に行われているおり、同国に係る航海数が約32%を占めていることから、その影響が大きいと考えられる。
 
 なお、その他の港として考えられるのは、次のとおりである。
Singapore港同様、補給等のための寄港。
ドック入渠のための寄港。(長崎等)
パナマ運河、スエズ運河等を通航するための寄港。(Suez等)
アンモニア等LPG以外の貨物の輸送に係る寄港。(Mesaieed(カタール)等)
 
表 2.4−2:マ・シ海峡を航行したLPG船の積地・揚地別の仕出国・仕向国別航海数(2001年)
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(3)LNG船
 ケミカルタンカーと同様に、LNGを取り扱う施設を有すると考えられる港を積地・揚地別に抽出し、2001年にマ・シ海峡を航行したLNG船の航海数を、仕出国及び仕向国のゾーン別に集計したものを表 2.4−3に示す。
 揚地港を仕出港または仕向港とする航海数の割合は約55%、積地港を仕出港または仕向港とする航海数の割合は約42%、その他の港については約3%となっている。
 また、揚地港から積地港への航海数の割合が約42%、揚地港から揚地港へは約11%、揚地港からその他の港へは約3%となっており、積地港から揚地港への航海数の割合が約42%、積地港から積地港へは2航海(約0.3%)、積地港からその他の港へは0航海となっている。他の船種同様、揚地として取り扱ったシンガポールにおいては、貨物の取扱いのほかに燃料油や船用品の補給のための寄港が一般的に行われているおり、揚地港から揚地港への航海数については当該寄港が大部分を占めていると考えられる。
 LNG船は、積地港から揚地港へ直接航行する傾向が他の船種と比べて明らかにうかがわれる。
 
表 2.4-3:マ・シ海峡を航行したLNG船の積地・揚地別の仕出国・仕向国別航海数(2001年)
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2.4.2 ケミカルタンカーのケミカル輸送
 ケミカルタンカーはLPG船、LNG船と異なりその積載貨物が多様であることから、以下マ・シ海峡を航行するケミカルタンカーのケミカルの概要を考察する。
 既往の文献によれば、ばら積みで海上輸送されるケミカルのうち大きな割合を占めるのは次の数種類のものである。
 
メタノール、キシレン、ベンゼン、スチレン、エチレングリコール、二塩化エチレン、トルエン
リン酸、硫酸、苛性ソーダ
 
 上記のうちマ・シ海峡を経由して輸送されると考えられるのは次のとおりである。
 なお、下記に示す2001年の数量は、日本に関するものついては「化学工業品輸出通関統計」(平成13年12月 日本化学工業品輸出組合)及び「化学工業品輸入通関統計」(平成13年12月 (社)日本化学工業品輸入協会)を、中国に関するものについてはインターネット上に公表されている中国通関統計によるものである。(必ずしもばら積み輸送されるとは限らず、一部個品輸送であると考えられる。)
 
(1)メタノール
 メタノールは、主にサウジアラビア、カタール、イラン等から、日本、中国、韓国、台湾等へ輸送される。
 サウジアラビア→日本:約84万トン
 カタール→日本:約4万トン
 サウジアラビア→中国:約56万トン
 イラン→中国:約27万トン
 
(2)パラキシレン
 パラキシレンは、主に日本、韓国等からインド等へ、シンガポールから韓国、台湾等へ輸送されている。
 日本→インド:約5万トン
 日本→パキスタン:約1万トン
 中国→シンガポール:約5万トン
 
(3)ベンゼン
 ベンゼンは、主にシンガポールで輸出入されている。
 日本→シンガポール:約4万トン
 
(4)スチレン
 スチレンは、主にサウジアラビアから中国、韓国、台湾等に輸送されている。
 サウジアラビア→中国:約10万トン
 シンガポール→中国:約2万トン
 日本→インド:約1万トン
 
(5)エチレングリコール
 エチレングリコールは、主にサウジアラビアから日本、韓国、台湾等へ、シンガポールから台湾、タイ等へ輸送されている。
 サウジアラビア→日本:約4万トン
 
(6)二塩化エチレン
 二塩化エチレンは、主にサウジアラビアから日本、台湾等へ輸送されている。
 サウジアラビア→日本:約15万トン
 
(7)トルエン
 トルエンは、シンガポールからマレーシア、タイ、中国等へ輸送されている。
 シンガポール→中国:約2万トン
 
(8)リン酸
 リン酸は、主にチュニジアから中国に輸送されている。
 
(9)硫酸
 硫酸は、日本からインド等に輸送されている。
 日本→インド:約11万トン
 
(10)苛性ソーダ
 苛性ソーダは、主にサウジアラビア、イラン等から韓国に、また日本からシンガポール等に輸送されている。
 日本→シンガポール:約3万トン







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