日本財団 図書館


IV 第7回無線通信・捜索救助小委員会(COMSAR7)の審議概要
1 審議概要(全般)
1−1 日程
(1) 対処方針会議 平成15年1月12日(日)(在連合王国日本国大使館会議室)
(2) COMSAR7 平成15年1月13日(月)0930〜1月17日(金)1730
 
1−2 開催場所
 国際海事機関 本部
 
1−3 日本側参加者:8名
◎:本委員会所属者の出席者 ○:英国からの出席者
在連合王国日本国大使館一等書記官 石原 彰(運輸担当)
海上保安庁総務部情報通信企画課技術企画官 葛西 
海上保安庁警備救難部救難課専門官 下野 浩司
  東京商船大学教授 林 尚吾
(社)日本造船研究協会 篠村 義夫
  (社)日本造船研究協会 柳瀬 啓
(社)日本船主協会欧州地区事務局長 赤塚 宏一
(社)日本海難防止協会ロンドン連絡事務所長 山地 哲也
 
1−4 議題
(1)議題の採択
(2)他のIMO機関の決定
(3)GMDSS
(4)ITU海上無線通信事項
(5)衛星業務(インマルサット及びコスパスサーサット)
(6)緊急無線通信(誤警報及び妨害)
(7)捜索救助関連
(8)海上における人命救助の扱いに関するSOLAS、SAR条約規定の見直し
(9)船橋間無線通信
(10)巨大旅客船の安全性
(11)海上無線通信システム及び技術の開発
(12)IAMSARマニュアルの改訂
(13)携帯衛星システム承認手続きの策定
(14)NAVTEX設備の性能基準の改訂
(15)持ち運び式双方向無線電話装置の性能基準A.809(19)の改正
(16)海事保安を高める措置
(17)SOLAS船搭載の無線設備のGMDSS要件の調和
(19)海上における人命救助の扱いに関するFAL、SALVAGE条約規定の見直し
(20)作業計画及びCOMSAR8の議題
(21)2004年の議長及び副議長の選出
(22)その他
(23)海上安全委員会への報告
 
1−5 審議内容
(1)議題の採択(議題1)
 仮議題18(DSCコード及び1994HSCコードの改正)が2会期連続で提出文書が無かったことから議題から削除された以外は原案どおり承認された。
(2)他の機関の決定(議題2)
 関連文書の説明があり、海土保安、避難水域、海土で救助された者の扱い等については、関連議題で審議することとされた
(3)GMDSS(議題3)
(1) ツルク海岸局の公衆通信の再開(COMSAR7/3)について、ツルク海岸局が公衆通信業務を再開したこと、CH70DSCとCH16によるフィンランド全沿岸域での通信可能場状況等の報告があった。
(2) NAVAREA調整者のリスト(COMSAR7/3/1)について、我が国海上保安庁海洋情報部の電話番号の修正をIHO代表団(U.S. NAVAREA COORIDINATORのMR PETER M.DOHERTY)に別途申し入れ了解を得た上で行った。
(3) バルチック海、バレンツ海のGMDSSに係る地域協力会合の報告(COMSAR7/INF2)については、各国のGMDSS関係の通信能力、教育・訓練の状況、AIS導入への取り組み等の説明があった。
(4) 海上安全情報に関する活動状況(COMSAR7/INF3)
 プレナリーにて国際ナブテックス調整委員による現状報告と、COMSAR6からの活動報告の要約が報告された。現状の問題点である、ロシア北方水域に航路を新設することに伴うMSIの提供について、現状のナブテックスカバレッジの修正案が報告された。さらに、Operational WGにてNAVAREA13と11の限界線について、ロシアは13の南西部分の修正を提案し、プレナリーにその旨提案することとなった。本件はロシアに確認したところ、現在セフティーネットマニュアルの地図に書かれている南側の限界線が、IHO,インマルサットの定めたものとは違っているので正しい表現に変えてほしいとのことであったので、特段の問題はないものと了解した。
(4)ITU海上無線通信事項(議題4)
 プレナリーにて事務局より、海上業務関係事項のWRC−03議題のIMOの立場に関するITUの準備会合(CPM02−2)の結果が報告(COMSAR7/4)されノートされた。議長は本報告の検討と必要に応じてWRC−03へのIMOのポジションの改定又は調整を行なうようにテクニカルWGに指示した。
(1)テクニカルWGにて
 COMSAR7/4の検討及びIMOのポジションについて審議され、WP.1パラグラフ4に修文された。
(2)プレナリーへの報告
 WG議長より、WGでの審議結果(WP.1パラグラフ4)が報告され、同意された。
(5)衛星業務(Inmarsat,COSPAS−SARSAT)(議題5)
(1)COMSAR7/5 コスパスサーサット事業の現状
イ プレナリーでの審議
 コスパスサーサット宇宙部分、地上部分の施設の実態、同システムの夜20年間にわたる救助実績等の報告で特段の審議はなかった。
ロ Operational WGでの審議
特段の審議はなかった。
(2)COMSAR7/5/1 コスパスサーサット406MHz帯周波数の割り当てプラン
イ プレナリーでの審議
 2009年の121.5MHzの処理廃止による406MHzEPIRBの増加に備え、割り当て周波数の枠の拡大を報告したもので特段の審議はなかった。
ロ Operational WGでの審議
 特段の審議はなかった。
(3)COMSAR7/7/5/2 インマルサット社によるGMDSSの功績の分析と評価
イ プレナリーでの審議
 IMSOの管理下にあるインマルサット社による1年間の実績の分析と評価の報告、および海賊対策、インマルミニC等の報告で特段の審議はなかった。
(4)インマルサットE
イ SAR WGにおける審議
 SAR WGは、インマルサットEシステムプロトコールに人が船舶から海中転落した際の警報について特別コードを含めるべきとのドィツ提案(MSC75/11/5)に同意した。
ロ インマルサットは、IMSOを通じ、本件は単にソフトウェアの変更で6ヶ月で対応可能である旨回答した。
ハ プレナリーにおける審議
 SAR WGにおける検討結果が了承された。
(5)インマルサットAのサービス終了について
議長より、MSC76からの指示であるとして、インマルサットAの2007年12月31日でのサービス終了を関係者に通知する回章の作成をドラフティンググループにより行いたいと表明された。同時に、議長は、MSC76では日本及びICSから本件の船舶への影響を懸念する意見があった旨説明した。これに対しては、英より影響を受ける船舶は少数である旨意見が表明された。この後、韓国より多くの船舶が影響を受けると考えられ(サービス終了時期の)5年前の通知は不十分であると意見を表明し、ICSも商船隊への影響を十分考慮すべきとの意見を表明し、我が方が、韓国及びICSの意見を支持した。しかしながら、サービス終了に懸念を表明する国は少数であり、議長は、ドラフティンググループに回章の起草を指示した。
ドラフティンググループから提出された回章案(COMSAR7/WP.2)の審議の際、ドイツがパラ5にあるサービスの停止時期について、原案の2007年12月31日を半年延ばして2008年6月30日にすべきという修正提案を行った。これに対し、我が方及びリベリアが支持を表明した。しかしながら、修正を求めたのは少数であることから原案どおりとすることとなった。
(6)緊急無線通信:誤警報及び妨害(議題6)
 プレナリーにおいて、誤警報コレスポンデンスグループの報告(COMSAR7/6)、誤警報の監視と報告のガイドライン案(COMSAR7/6/1:ノルウェー)、衛星EPIRBsの試験及び保守に関するSOLAS要件(COMSAR7/6/2:ノルウェー、COMSAR7/6/:COSPAS−SARSAT、COMSAR7/6/5:フィンランド、スウェーデン)の説明があり、短い審議の後、議長は詳細な検討をOperational WGに指示した。
(1)誤讐報について
イ プレナリーの審議
 SMRの有効性について事務局が発言。
 またSMRの推進について、ノルウエー、英国、米国、シンガポール、トルコ、スエーデン、フランス等多数の国が賛成発言を行った
ロ WGでの審議
 SMRの有効性について審議した。
ハ プレナリーでの審議
 小委員会は、誤警報の解析から学んだ課程を要約または分配できる、IMO内のボランタリーベースの専門家集団であるGMDSS−SMRが必要であるというWGの見解に同意した。
(2)衛星EPIRBsの年次試験について
ノールウェー(COMSAR7/6/2)及びCOSPAS−SARSAT(COMSAR7/6/3)からEPIRBsの整備に関して、実際に船上で行いうる試験の種類が限られていることから試験内容を見直す提案があったところ、我が方は、提案にある試験内容の変更については特段の問題はないと考える旨意見を表明した。
フィンランド及びスウェーデン(COMSAR7/6/5)からEPIRBsの試験時期について、検査と証書の調和の考え方を導入して規則を修正すべきとの提案がされたが、我が方より、その提案趣旨を支持するとともに、規則の修正はSOLAS条約第1章第9規則(a)(iii)をもとにすべき旨指摘した。シンガポールが検査と証書の調和の考え方の導入につき賛同した。サイプラスより、検査と証書の調和に基づく規則の修正を行うと88年議定書の非締約国についておかしな状況が生じる旨指摘があったが、我が方よりは、総会決議A.883(21)により検査と証書の調和システムの世界的な実施が決議されている点指摘した。ワーキンググループでの検討結果、「12ヶ月を超えない期間で試験する。ただし、12ヶ月の前後3ヶ月までの延長を認めうる」と修正されることとなった。我が方より、検査と証書の調和システムの導入についていくつかの国が支持した状況を指摘しつつ修文を検討すべき旨意見を表明したが、ワーキンググループの作成した案にてプレナリーで合意された。なお、機器等の試験時期に関する検査と証書の調和システムの導入について記述しているMSC/Circ.955には、既にEPIRBsの試験(第IV章15.9規則)についても言及していることから、実体的にはこの回章の存在により特段の問題は生じないものと考えられる。
(7)捜索救助関連(1979SAR会議・GMDSS導入事項)(議題7)
 プレナリーにおいて、事務局よりCOMSAR7/7,7/7 add.1、英国よりCOMSAR7/7/2の説明があった。議長は、本件の詳細な検討をSAR WGに指示した。
(1)SAR WGにおける審議
イ JOINT ICAO/IMO WG
 WGにおいて、COMSAR7/7及びAdd.1について検討を行い、COMSARに関連する勧告を支持した。
 また、JOINT WG(10)及びCOMSAR8に提案するCOMSAR7/7/2記載のGMDSSに係るCoast Station Operator's Course(CSOS)案を支持した。
ロ COMSAR回章18(MRCCにおける必要な通信の最小化に関する勧告)
 WGにおいて、COMSAR7/7/1に同意した。
ハ 国際海上捜索救助会議
 WGは、昨年(2002年)11月インドのチェンナィで開催された国際海上捜索救助会議の結果(COMSAR7/7/3)をノートした。
ニ 捜索救難業務における医療支援
 WGは、緊急医療キットに係るコレスポンデンスグループの検討結果(COMSAR7/7/9)について検討を行い、同キットの評価及び使用に係る責任に関するガイドライについて同意し、MSC77で採択すべきMSC回章案を作成した。また、今後も、コレスポンデンスグループによる検討を継続する必要性を確認した。
ホ SAR情報提供システムに係る新回章案
 WGは、COMSAR7/7/5を検討し、SAR情報提供システムに係る新MSC回章案を作成した。
(2)プレナリーにおける審議
 SAR WGにおける検討結果が了承された。
(8)海上における人命救助の扱いに関するSOLAS及びSAR条約の見直し(議題8)
(1)海上における人命救助の扱い
 プレナリーにおける審議(COMSAR7/8、MSC76/22/8、MSC76/22/10、MSC76/22/11、MSC76/22/13)
事務局からMSC76/22/8及びMSC76/22/13、スウェーデンからMSC76/22/11、スペインからCOMSAR7/8及びMSC76/22/10の趣旨説明が行われた。
ノルウェーは、本件は非常に複雑な問題を含んでいることを指摘しつつ、IMOの所掌の範囲内で議論すべきであり、また、スヘソン提案はその趣旨は理解するもののIMOのみで取り扱うには問題があることを表明した。また、SOLAS条約上、船長及び沿岸国の義務の観点から議論することが適当な出発点である、ノルウェーとしても1つの提案を有しており認められればSAR WGにおいて提示する旨表明し、シンガポール、サイプラスはこれを支持した。
ギリシャは、スウェーデン提案文書をペースとして、SAR WGにおいてさらに議論すべきことを表明した。
ブラジルは、スペイン提案は複雑な問題を有するとともにIMOの所掌を超えており、IMOの場で議論することは不適当である旨、表明した。
日本は、スウェーデン提案(SAR条約改正案関係)に対し「スウェーデン提案4.8.5に対し、救助された者の下船場所は、救助船舶の船長などの関係者により決定されるものであり、救助調整本部又は救助調整支部は、その決定過程において、必要に応じて連絡調整を行うに過ぎず、スウェーデン提出改正案に示されるような機能は発揮しない。このため、救助調整本部又は救助調整支部は、SAR条約改正案3.1.6.4のような限定的な機能を担うことが現実的である」旨、意見を表明した。また、スペイン提案については、「遭難者の下船問題について関係国が努力することを奨励する趣旨については支持するものの、遭難を装った密航者を救助した対応など単なる海難事故と同様に論じることが適当でないケースがあるばかりか、各国の安全保障問題にも発展しかねない問題をも含むことから、遭難者の身柄に対する帰国の対応等の手順について一律に条約に規定することは困難である」旨、意見を表明した。
オーストラリアはスペインと同様の懸念を有しており、SAR WGにおいて更なる議論が必要である旨、表明した。
米国は、本件は複雑な問題を含んでいることに同意ししつつ、本件はSARの所掌外の問題であり、IMOにおいて扱うことは適当ではない旨、表明した。
議長は、以上の各国等の意見を踏まえ、SARWGにおいてスウェーデン提案文書をベースに審議を行い、条約改正案を作成する旨、総括した。
(2)SAR WGにおける審議
日本からは、プレナリーに引き続き、スウェーデン提案(MSC76/22/11)ANNEX1 4.8.5中に規定するRCC等の機能(RCC等自らが救助された者の下船場所を探す義務がある)はSAR条約上のRCC等の機能(捜索救助活動の促進、調整)の範囲を超えている可能性があるとの指摘を行い、オーストラリアがこれを支持した。
フランスは、日本の懸念について、RCC等には捜索救助に係る知識・情報が集中することから、RCC等は救助された者の下船場所についてアセスを行う機能を有すべき旨、主張した。
しかしながら、4.8.5中の”RCC ・・・ shall seek to locate ・・・ the most appropriate place ・・・”の規定ではRCC等の機能について混乱が生じかねないことから、”RCC ・・・ shall initiate the process of identifying the most appropriate place ・・・”(救助された者の下船場所の明確化を進める)に修正することとした。
また、スウェーデン提案におけるSOLAS条約改正案については、救助された者の下船に係る沿岸国の責務について、オーストラリアは、自国の捜索救難区域は全世界の約1/9を占め、同海域において発生した事案について沿岸国たるオーストラリアが受け入れの義務を負うことは非現実的で受け入れられない旨、主張したほか、救助された者の下船に係る船長の権限について、各国から様々なコメントが出され、議長は審議を踏まえ、同条約改正案のほか、条約ガイドラインを作成することを総括した。
(3)プレナリーにおける審議
SAR WGの報告に対し、ノルウェーが「WGの検討結果である条約改正案においては、救助された者の受け入れに関する船長及び沿岸国の義務が明確化されておらず、MSCに対して更なる提案を行う用意がある」旨のステートメントを表明し、これに、デンマーク、バハマ、ライベリア、ドイツ、英国、ICFTU、ICS等が支持を表明した。他方、オーストラリア、米国、スペイン、イタリア等はWGの検討結果の支持を表明した。
議長がWG議長に対し、再度の審議の必要性等について確認したところ、WG議長は「WGの審議結果を受け入れるべきであり、ノルウェー提案については、今後検討されるガイドラインにおいて規定するのが適当」との見解を示した。
しかしながら、ノルウェーは、ガイドラインは強制的性格を有しておらず、あくまでも「勧告」であるため、WG議長の意向は受け入れられず、次回MSCにおいて必要な審議を行うべきとの姿勢を示した。
サイプラスはノルウェーの懸念は政治的問題を含んでおり、COMSARでの審議には限界があり、MSCのレベルにおいて審議を行うべきとの意見を表明した。
IMO海上安全部長は、MSCに対する報告書については、ノルウェー等が表明したステートメントを添付するのが適当であるとの示唆を行った。
 これに対し、ノルウェーは、MSCに対する報告書にWGの検討結果を記載する場合であっても、同時に、「今次COMSARにおいてノルウェーのステートメント及び多くの国等がこれを支持したことを考慮し、更なる検討が必要である」旨記述することを求めた。
(4)避難水域
 プレナリーにおける審議(NAV48/19 Annex12及びAnnex13)
イ 議長から背景が説明され、COMSAR7においては、SAR手続との関係等の観点から審議する必要があることを説明した。
(5)SAR WGにおける審議
NAV48/19 ANNEX1及びANNEX2の避難水域ガイドライン及びMASに係る総会決議について、SAR条約との齟齬の観点、特にMASとSAR条約上のRCCとの関係について審議が進められた。
総会決議案を起案したフランスは、避難水域に係る手続は捜索救難とは別に取り扱われることから、RCCにおいてMASの機能を持たせることを固定する必要はなく、あくまでも選択肢の一つであり、各国の状況に応じ決定する必要がある旨、表明した。
これに対し、オーストラリア、ドイツ等は、捜索救難、避難水域手続の区別なく、情報窓口は1つに絞ることが必要であることから、RCCにおいてMASの機能を持たせることを国際的レペルで統一する必要がある旨、表明した。
議長は、審議を踏まえ、MASの機能はRCCで行うことを勧告すべきであるが、その最終判断は各国に委ねる必要があり、これをMSCに報告する旨、総括した。
日本は議場外において、フランスに対しガイドラインの基本的性格について確認したところ、ガイドラインの各要件を満たした場合でも直ちに沿岸国が困難な状況にある船舶の入域を認める義務はなく(これ故、ガイドラインという位置づけである)、本ガイドラインが各国及び船側における共通のルームとして共有されることが重要であること、また、事前に沿岸国において避難水域を設定し、公表することまで求めるものではなく、各国の状況に応じ自主的に避難水域の候補地について所要の調査・研究を実施することができれぱ望ましい旨の回答を得た。
(6)プレナリーにおける審議
 SAR WGにおける検討結果が了承された。
(9)船橋間無線通信(議題9)
 2会期続けて提案文書が無かったため、本件を本小委員会の議題から外すことをMSC77に報告することとした。
(10)巨大旅客船の安全(議題10)
(1)SAR WGにおける審議
 WGは、巨大旅客船の安全に係るコレスポンデンスグループの検討結果(COMSAR7/10/1、COMSAR7/INF.4及び5)について同意した。
 いくつかの課題については、今後も引き続き検討する必要があることから、目標期限を2004年に延長し、コレスポンデンスグループにおける検討を継続する必要性を確認した。
(2)プレナリーにおける審議
 SAR WGにおける検討結果が了承された。
(11)海上無線通信システム及び技術の開発(議題11)
(1) 決議A.802(19)レーダートランスポンダー(SART)の性能基準の見直しを提案する我が国からの文書(COMSAR7/11)の説明を行なった。
(2) 英より、(イ)性能基準の改正は新規作業項目でありMSCでの承認を得ることが必要であること(ロ)ITU規則でも水平偏波を規定しておりこれを変更する必要があること(ハ)あらゆる環境下(波浪条件等)での試験を行う必要があることの指摘があった。ノルウェイからは、本小委員会の今後の作業プログラムとすべきであると発言があった。フランスはこれらの意見を支持するとともにITUでの審議が先決であるとした。シンガポールからは次回会合(COMSAR8)に日本でのより深い研究・検討の後、調整して報告したらどうかという発言があった。議長は、他の機器との干渉の関係でITUでの検討が必要なこと、IMOでの検討のためには、MSCの作業計画の承認とITU−group8での検討が必要であるとされた。なお、我が方よりIMOでの審議とITUでの審議とは同時並行で行い得る旨指摘したところ、議長及びWG議長はこれへの同意を示しさらに全体での合意が得られた。
(3) MSCへの作業計画としての提案は、次回MSC77への提案については〆切が過ぎているためMSC78(2004年春)への提出とならざるを得ない。しかしながら、本件提案の実現に当たっては今後途切れることなく継続して我が国提案の説明を各国に対し行っていくことが必要であり、MSC77へのインフォメーションペーパーの提出、COMSAR8へのさらなる実験結果を踏まえたインフォメーションペーパー提出を行うとともに、IMOの会議のみならずあらゆる機会を捉えて本件提案の説明に努めて行くべきと思料される。さらに、ITU関連の対応につきよろしく検討お願い申し上げる。
(4) プレゼンテーション及び展示
 1月13日、会議終了後、本提案に至るまでの実験の内容・結果のレゼンテーションを行い、更に会期中、Delegation Loungeで実験に使用した実機及び写真パネル展示を行なったところ、会合参加者は大いに興味を示していた模様であった。
(12)IAMSARマニュアルの改正(議題12)
(1) SAR WGは、COMSAR7/7に記載されているJOINT WG勧告9.3、9.4及び9.7に同意し、IAMSARマニュアルVolumeI、II及びIII改正案について支持し、MSC回章案を作成した。
(2) プレナリーにおける審議
 SAR WGにおける検討結果が了承された。
(13)携帯衛星システム承認手続きの策定(議題13)
 本件は、MSC72から本小委員会へなされた、GMDSSの使用に供する移動衛星通信システムを認識するための手続の検討を促進するための要求であり、今回、デンマークが本件に対しての回答を提案(COMSAR7/13)し、説明した。短い審議の後、議長は、Operational WGに本件に関し、GMDSSに使用する指定された携帯衛星システムの評価及び認証に関する手順案の最終化、MSCサーキュラー案の準備、本作業事項の今後の作業について検討するように指示した。
(1)Operational WGからの報告(プレナリー)
 GMDSSに使用する指定された携帯衛星システムの評価及び認証に関する手順のMSCサーキュラー案は同意された。
 決議A.888(21)必要に応じて見直すことをノートした。
(14)NAVTEX設備の性能基準の改正(議題14)
 プレナリーにおいて、本性能基準の見直しについてCOMSAR7/14(UK,Poland,Denmark)、及びCOMSAR7/14/1(US)の提案が英国及び米国から説明された。また米国は、基本的に英国の提案に賛同していることから、議長は、詳細内容の検討及びドラフティングをテクニカルWGに支持した。我が国は、英国提案のANNEX、4.1レシーバの改定案文章中のsimultaneouslyの意味について質問したが、議長はテクニカルWGの確認事項とした。このため、我が国は、とりあえずの意見として、ボランタリーベースの周波数を聴取するためのレシーバーの設置はボランタリーベースであるべき旨指摘した。
(1)テクニカルWGにて
 COMSAR7/14,7/14/1の改定案を元に審議が行なわれた。プレナリーで我が国質問した英国提案のANNEX、4.1レシーバ改定案文章中のsimultaneouslyの意味については、同時ということであり、”at the same time as”と書き直された。同項について、Second receiverによる国際NAVTEX周波数以外の任意NAVTEX情報の受信(少なくとも2つの周波数)は、本来、国際NAVTEX以外は、任意のものであり、必要ないのではないかとの意見(我が国も賛同)もあったが、欧米諸国の混線を避け情報を得るためには、必要であるとの意見が大勢であり、WP.1 Annex2のように修文された。尚、NAVTEX情報の印刷に関しては、国際NAVTEXのみとした。記憶媒体のメモリーについては、原案より一回り大きなものに修文された。
(2)プレナリーへの報告
 WP.1 Annex2を元にWG議長が説明し、同意された。
(15)持運び式双方向無線電話装置の性能基準A.809(19)の改正(議題15)
 性能基準A.809(19)は、持運び式双方向無線電話装置について、「使用者の衣服に取付ける手段を備えていること」と規定されている。どのようにして当該要件を実際に満足するかについての詳細な性能基準の解説はなく、当該要件の適合性に関し、いくつかの製造メーカーは、衣服に止めるための「クリップ」を無線電話に装備するものもあるが、ノルウェー沿岸での事故によれば、海難時の退船の際に、イマーションスーツに附属の無線電話装置が、クリップが外れ海中に落とす事例があったことを踏まえて同国が性能基準A.809(19)の改定を提案(COMSAR7/15)した。プレナリーにて、ノルウェー提案が説明された。改正点は、同決議付属書1、パラグラフ2.3.11の「使用者の衣服に取り付ける手段」に具体的に「リストまたネックにストラップを設け、安全上の理由からストラップは適当なウィークリンクであること」であり、議長は詳細な検討をテクニカルWGに指示した。
(1)テクニカルWGにて
 テクニカルWGでは、本提案のストラップを設けることに関し、反対意見は無く、ストラップの仕様について、我が国同様「適当なウィークリンク」とは明確でなく定義する必要がある、または仕様自体を文書から外したらどうかとの意見もあったが、最終的にノルウェー提案の原文通りになった。
(2)プレナリーへの報告
 WG議長より、審議内容が報告され、同意された。
(16)海事保安強化の措置(議題16)
(1)船舶保安警報の性能要件
 パラ3「Power Supply」において、「another appropriate」は不明確であるとして「an alternative」にされた。また、パラ6「Transmission of security alerts」において、発信する情報に「時刻」を加えることとされた(「時刻」についてはSOLAS条約の規則には機能要件として記載されていないので性能要件に加えることは不適当との意見があり、「時刻」の追加は脚注への記載により行われた。
 また、船舶保安警報の規定の指針をMSC/Circ.として回章すべく草案を作成した。この回章案によれば、船舶保安警報は、GMDSS機器等を使用(船舶保安警報機能のあるものの新規搭載あるいは既に搭載している機器の改造)する方法の他、通信自体は既存のGMDSS機器あるいは携帯電話(沿岸航行の場合)を使用する方法(船舶側と会社側とで「合い言葉」を定めておき(船舶保安計画中に記載する)テロリストにさとられないように非常事態が発生したことを連絡する。)が認められる。なお、議場外にて、英及びCIRMの代表と意見交換したところ、おそらく大部分の船舶が船舶保安警報として「合い言葉」による方法を採用するであろうとのことである。さらに、船舶保安警報の機能を搭載したGMDSS機器の開発については興味を持っていない模様であった。
(2)ロングレンジトラッキング
 米及びブラジルの共同によりJペーパー(COMSAR7/J/5)が提出されSOLAS条約改正案文を含む同ペーパーに関する審議が求められたが、ギリシャはこれまでの合意範囲を超えているとし、仏及び独が文書提出が遅すぎる旨指摘し、我が方も文書提出が遅すぎ今次会合では何ら合意を行うべきではない旨指摘し、シンガポール及びマルタは予備的な検討に留めるべきであるとし、香港及びトルコが我が方及びシンガポールの意見を支持した。方、ベネズエラ、アルゼンティンは提案を支持し、サイプラスは本件は緊急案件である旨指摘した。結果、議長は、本件検討を予備的な検討に限ることとし、ドラフティンググループに詳細の検討を指示した。ドラフティンググループはロングレンジトラッキングの機能要件をとりまとめ(COMSAR7/WP.4 ANNEX2)、プレナリーにて検討の上承認され、MSCに報告されることとなった。
(3)COMSAR7/16により、MSC回章967(海賊等武装強盗についてMRCCへ行われる指示に関する回章)について、テロ活動に係る警報を受信した場合の対応に係る改正案の検討を行った。本件はセキュリティに関連する事項であり、今次会合においてMSC回章967の改正を行うのは時期尚早であることから、次回MSC77海上セキュリティWGでの検討を踏まえ、次回COMSAR8において更なる検討を行う必要があるとの結論に達した。
(4)COMSAR7/16/1により、AISに対する補助電源の設置について検討を行った。我が方より、AISの搭載が一部船舶に対して2002年7月1日以降から適用されており、既にAISが搭載されているものについては存船の補助電源は既接続機器の消費電流によりバッテリー容量を計算して装備されている等の問題があり、AISの新規搭載を行う場合に限るべきであり、また、本提案の趣旨は海上保安対策であり対象船舶を第XI−2章の適用船舶に限定すべきであり、この点を踏まえた修文案を提案した。また、露も新規搭載に限定すべき旨指摘した。しかしながら、本件は、条約改正事項となるためMSCにおける作業の承認が必要とされた。
(17)SOLAS船搭載無線設備のGMDSS要件の調和(議題17)
 プレナリーにてGMDSS設備の搭載に関するガイドライン案について、アイルランド(COMSAR7/17/2)、ノルウェー(COMSAR7/17)及びドイツ(COMSAR7/17/1)のそれぞれの提案について説明があった。これまで、各国とも独自の解釈でSOLAS V章のGMDSS設備の設置を行なってきているが、統一した解釈・指針の必要性から本小委員会で検討が行われた。
 サイプラスからRadio Licenseについて旗国により要件が異なりFlag Changeの際、問題が生じるのではないか?また、ノルウェー提案はEUの規格を引用しているが不適ではないかとの発言があり、シンガポールから本ガイドライン案の対象が不明確であるとの発言があった。これに対しノルウェーは、新規搭載のみに適用するべきと発言した。議長は、本ガイドライン案は、非強制案件であり、Recommendationであると発言し、COMSAR Circularで回章すべくテクニカルWGでの検討を指示した。
(1)テクニカルWGにて
 冒頭に、WG議長から本ガイドライン案は、Recommendationであると再確認があり、議事が進行された。まず、本件に関する提案についてBaseにする文章をWGで検討したところ、ノルウェー提案の支持が大勢を占め、WG議長は小DGを結成して審議用のガイドライン案の作成を指示した。審議用案の作成後、WGにて審議検討し、WP.1 Annex5のように修文された。
(2)プレナリーへの報告
 WG議長よりプレナリーへ本件の審議内容が報告され、別段の議論も無く同意された。
(18)海上における人命救助の扱いに関するFAL,SALVAGE条約の見直し(議題19)
(1)プレナリーにて(SAR WGからの報告)
 SAR WGよりCOMSAR7/WP.5,Add.1 and2が報告された。
(19)COMSAR8の作業計画及び議題(議題20)
 プレナリーにて、本小委員会の作業計画案及び次回会合(COMSAR8)の議題案が合意され、MSC77に承認のため報告されることとなった。次回会合(COMSAR8)は、2004年2月16〜20日となっているが見直される予定である。
(20)2004年の議長及び副議長の選出(議題21)
(1)2004年の議長の選出
 現議長のMr. V. Bogdanov(ロシア)が今年をもって議長を退く旨表明した。2004年の議長の選出は今回行わず次回COMSAR8の冒頭に行うこととされた。
(2)2004年の副議長の選出
 現副議長のMr. U. Hallberg(スウェーデン)が再選された。
(21)その他(議題22)
(1)9GHz SARTに関する温度要件
 デンマーク提案(COMSAR7/22)について、SARTの性能基準の改正は新規作業項目でありMSCの承認が必要であるとした。
(2)World - Wide Radionavigation System - GALILEO SERVISES AND ARCHITECHTURE
 ECより提出されたMCS76/INF.4をノートした。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION