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III 第76回海上安全委員会(MSC76)及び第5回SOLAS条約締約国会議(SOLAS/CONF.5)の審議概要
1 審議概要(全般)
1−1 日程
(1)対処方針会議 12月1日(日)(在連合王国日本国大使館会議室)
(2)MSC76 12月2日(月)0930〜12月13日(金)1730
 
1−2 開催場所
国際海事機関 本部
 
1−3 日本側参加者:40名
◎:本委員会所属者の出席者 ○:英国からの出席者
在連合王国日本国大使館参事官 塚家 久靖(運輸担当)
在連合王国日本国大使館一等書記官 石原 彰(運輸担当)
  国土交通省大臣官房審議官 中本 光夫
国土交通省海事局安全基準課長 松尾 龍介
  国土交通省大臣官房参事官(危機管理担当) 越智 秀信
海上保安庁警備救難部航行指導室長 東原 健
  国土交通省港湾局建設課国際業務室長 藤田 佳久
  国土交通省海事局海技資格課海技資格制度対策室長 長濱 克史
  国土交通省海事局総務課外国船舶監督業務調整官 渡邉 元尚
  国土交通省海事局安全基準課専門官 山田 浩之
  国土交通省港湾局管理課港湾管理高度化指導官 中道 正人
  海上保安庁警備救難部警備課係長 小野 雄介
  国土交通省港湾局管理課課長補佐 千葉 信義
  国土交通省海事局外航課国際第二係長 木川 嘉将
  海上保安庁総務部教育訓練課付 古谷 健太郎
  海上保安大学校講師 林 亮治
  国土交通省中部運輸局静岡運輸支局船舶検査官 鈴木 康子
(社)日本船主協会欧州地区事務局長 赤塚 宏一
  独立行政法人海上技術安全研究所研究統括副主幹 吉田 公一
  独立行政法人海上技術安全研究所海上安全研究領域 操縦・制御研究グループ 原口 富博
  独立行政法人海上技術安全研究所海上安全研究領域 耐航・復原性研究グループ 小川 剛孝
(社)日本造船研究協会 篠村 義夫
  (社)日本造船研究協会 岡村 敏
  (社)日本造船研究協会 柳瀬 啓
  (社)日本造船研究協会 小磯 康
  (社)日本造船研究協会 松井 裕
  (財)日本海事協会開発部主管 馬飼野 淳
  (財)日本海事協会研究センター検査員 有馬 俊朗
  (財)日本海事協会安全管理システム部副参事 長瀬 建太郎
(社〉日本船主協会常務理事 増田 恵
  (社)日本船主協会 中野 豊久
  (社)日本造船工業会 山本 聡
  電気事業連合会 持田 重和
  (財)日本海技協会調査部次長 大久保 尚
  (財)国際臨海開発研究センター主任研究員 山田 正穂
JRTROジャパン・シップ・センター次長 加藤 光一
JRTROジャパン・シップ・センター次長 田口 昭門
JETROジャパン・シップ・センター調査員 北原 京
(社)日本海難防止協会ロンドン連絡事務所長 山地 哲也
(社)日本海難防止協会企画国際部国際室長 若林 邦芳
 
1−4 議題
<MSC76>
(1)議題の採択
(2)他のIMO機関の決定
(3)強制要件の改正に係る検討及び採択
(4)海事保安を高めるための措置
(5)ばら積み貨物船の安全性
(6)巨大旅客船の安全性
(7)改正STCW条約の実施
(8)DE45からの報告
(9)FSI10からの報告
(10)BLG7からの報告
(11)NAV48からの報告
(12)SLF45からの報告
(13)DSC7からの報告
(14)海上安全における技術援助プログラム
(15)人的要因
(16)海賊及び武装強盗
(17)条約の実施及び関連事項
(18)他の機関との関係
(19)委員会のガイドラインの適用
(20)作業計画(その他)
(21)2003年の議長及び副議長の選出
(22)その他
(23)第76回委員会報告の検討
 
<SOLAS/CONF.5>
(1)議題の採択
(2)手続き規則の採択
(3)副議長及びその他会議職員の選出
(4)信任状委員会の開催
(5)締約国会議の作業の組織構成
(6)1974SOLAS条約改正案の審議
(7)船舶・港湾施設のISPSコード案の審議
(8)決議、勧告及びその他関係事項の審議
(9)委員会からの報告の審議
(10)最終議定書・法律文書・決議・勧告の採択
(11)締約国会議の最終議定書の署名
 
1−5 審議内容
<MSC76(救難・航行安全に係る部分)>
(1)避難水域関連
 「避難水域のガイドライン及び海上援助機関(MSA)設置の総会決議案」に関し、事務局からMSC76/11/3によりMEPC48及びLEG85における審議状況が紹介されるとともに、本年(2002年)11月にスペイン沖にて発生したタンカーPRESTIGE号折損・沈没・油流出事故を踏まえ、次の国・機関が意見を表明した。なお、避難水域に関しては、NAV49の審議の後、第23回総会において「避難水域のガィドライン及び海上援助機関(MSA)設置の総会決議案」を採択の予定である。
(1)INTERTANKO
 避難水域に関し、IMOにおいて迅速な審議が必要。これは、容易な作業ではないが、海上における人命の保護及び海洋環境保全の観点からは極めて重要な問題である。沿岸国はタンカーだけでなく、一般船舶についても、早期かつ効果的な避難水域の設定に関する計画を策定すべきである。
(2)バハマ
 PRESTIGE号については、早期に避難水域に入域させ貨物油の移送作業を実施していれば、油汚染被害は局限化されていたものである。避難水域は、IMOにとって究極的な課題である。また、バハマはPRESTIGE号事故調査を実施中である。
(3)スペイン
 避難水域の重要性についてはINTERTANKOと同様の見解である。しかしながら、避難水域に関係する船舶事故が発生した際には、ケースバイケースで当該船舶の状況を評価(アセスメント)することが必要となる。今回のPRESTIGE号事故については、救助タグに対しPRESTIGE号船長がその協力活動を拒否したものと認定しており、避難水域ガイドラインの策定に当たっては、事故船舶の船長の協力行為についても記述すべきである。また、PRESTIGE号船長をスペイン当局が身柄拘束しているが、これはスペインの憲法等の法的根拠に則ったものであり、今後、法律手続に従い、適正に審判が行われる予定である。
 また、避難水域に係る審議に際しては、船舶所有者、運航者及び保険者による補償措置に関する検討も実施されなければならない。
(4)ケニア
 全ての加盟国は海上における人命の保護及び海洋環境保全の観点から避難水域に関する検討を行わなければならない。
(5)マルタ
 避難水域の検討を実施することは重要であるが、航空の分野では、乗組員及び環境のほかに、一般市民の安全性も考慮すべきとしている。
(6)サイプラス
 2000年に発生したCaster号の経験も踏まえた検討が必要である。沿岸国は事故船舶の入域に際しては、その状況を照会しないのが原則である。
(7)レバノン
 ケニア、マルタ、サイプラスの見解を支持するとともに、早期に避難水域の検討を行うべきとの意見が表明された。
(2)船舶位置通報に関する強制化(SOLAS第5章第28規則の改正)(MSC76/11/1)
(1) 英国から提案文書の説明が行われた。これに対し、我が国から、本件に関してはその提案趣旨は理解するものの、NAV48において強制化は困難でありその実行可能性はない旨の結論が出されていることから、位置通報の強制化の必要はない旨の意見を表明した。これに対し、ICS及びパナマから同様の意見が表明された。
(2) これに対し、オーストラリア、マーシャルアイランド、ニュージーランド、スペイン、レバノン、ポルトガル、シンガポール、ナイジェリア等から英国提案支持の意見が表明され、また、サイプラスから基本的に支持するものの規則案文の明確化作業が必要との意見が表明された。
(3) これを受け、議長総括において、本件は次回会合MSC77において採択する方向性を確認した。
(4) SOLAS第5章第28規則の改正案について、インフォーマルグループによる検討が行われ、エディトリアルな修正は事務局で行うこととして、基本的に了承され、回章に付されることとされた。
(3)航路気象業務励行のためのCircular案(MSC76/11/2)
 英国から提案文書の説明が行われた。これに対し、シンガポール、オーストラリア、フランス、デンマーク、ドィツ、マルタ、香港、パナマ、WMO等が支持を表明し、本Circular案が確認された。
(4)GALILEOシステムの進捗状況(MSC76/INF.4)
 欧州委員会からGALILEOシステムの進捗状況が紹介され、ノートされた。
(5)AISに関するIALAガイドライン(MSC76/INF.13)
 IALAからAISに関するIALAガイドラインが紹介され、ノートされた。
(6)海上で救助された者の取り扱い
(1) 事務局からMSC76/22/8及びMSC76/22/13、スペインからMSC76/22/10、スウェーデンからMSC76/22/11の紹介が行われた。
(2) これに対し各国から次のとおりコメントがあった。
イ オーストラリア
 スウェーデンにおいて開催された「海で救助された人の扱いに関する非公式会合」を評価する。海で救助された人の扱いについては、国際規則にその規定がなく、複雑な問題を有するものであるが、旗国、救助国、適当な国際機関、船長等の協力が必要である。スウェーデン会議の結果を次回COMSAR7審議の際のベースドキュメントとすることを支持する。
ロ ノルウェー
 本問題は、総会決議A.920(22)をスターティングポイントとして検討を行わなければならない。スペインの提案についてはその趣旨・背景について理解するが、不法入国や船舶による密航の問題はIMOで議論すべき範囲を超えている。COMSAR7においてスウェーデン提案文書をペースに更なる検討を行うべきである。
ハ トルコ
 本件は、経済、人権、政治等の観点から検討を行う必要がある。
ニ フランス、ギリシャ、米国、イタリア、ICFTU、EC等
 スペイン提案の不法入国等の問題はIMOで扱うものではなく、別の適当な機関で検討を行うべきである。COMSAR7において、スウェーデン提案文書をベースに審議を行うことを支持する。
ホ ICS
 本件は、国際慣行、国際規則に基づく船長の義務を考慮するとともに、救助された者の乗船期間は最短期間とすべきである。
ヘ UNHCR
 本件については、被救助者の国籍・地位等の条件にかかわらず救助、被救助者を告発が予想される国に戻さない、亡命者に関する手続等を念頭に置きつつ審議する必要がある。
(3) 以上の議論を踏まえ、議長は、次回COMSAR7においては特にスウェーデン提出文書をベースに審議しSOLAS条約及びSAR条約の改正規定を策定、次回MSC77において同意のうえ、MSC78において採択、また、次回第23回総会において進展状況を報告する予定である旨総括した。
(7)国際セイフティネットマニュアルの改定案(MSC76/22/6、MSC76/22/9)
(1) 事務局からMSC76/22/6、ロシアからMSC76/22/9の紹介が行われた。
(2) これに対し各国から次のとおりコメントがあった。
イ デンマーク、ノルウェー、オランダ、フランス
 COMSAR6の審議結果を尊重すべきであり、ロシアの提案は受け入れられない。
ロ 日本
 COMSAR6の審議結果を支持するが、ロシア提案については次回COMSAR7において更なる検討を行い、この結果新たな問題が明らかになれば改めて回章に付すべきである。
(3) 以上の議論を踏まえ、議長は、COMSAR6の審議結果を採択、回章に付すことを確認するとともに、次回COMSAR7においてロシア提案を審議する旨総括した。
(8)英国運用SAR情報提供システム(MSC76/22/12)
(1) 英国からMSC76/22/12の紹介が行われた。これに対し、オーストラリアが英国提案を支持し、サイプラスも基本的に提案を支持するものの同国船舶に周知するための英国提案の明確化作業が必要と主張し、これを受けスウェーデンが回章に付すことを提案した。
(2) これを踏まえ、議長は、英国に対し次回COMSAR7に文書を提出するよう要求し、同小委員会で検討のうえ、MSC77で回章を採択する旨総括した。
(9)船舶通航業務(VTS)要員の訓練と証明に関する基準(MSC76/22、MSC75/23/9)
(1) 国際航路標識協会(IALA)からMSC75/23/9の紹介が行われた。
(2) 我が国は同提案に対し、支持を表明した。
(3) これを踏まえ、議長はIALA提案通り、回章の改訂の実施について総括した。
 
<SOLAS/CONF.5>
(1)第5章第19規則「航海装置及び航海機器の搭載要件」の一部改正
 船舶自動識別装置(AIS)の導入時期繰り上げの審議がされ、提案されていた4つの選択肢のうち、欧州各国は、選択肢1(2004/7/1以降の最初の設備検査時期又は2004/12/31までのいずれか早い時期までに導入)を支持した。米国は、選択肢2(2004/7/1までに導入)はもともと同国の提案であるが、早期導入の妥協案としては選択肢1が最適であり、また、G8の決定にも沿うとして選択肢1を支持した。我が国も、欧州及び米と同様に選択肢1を支持する旨表明した。4つの選択肢についてindicative voteを行ったところ、選択肢1を我が国を含む48カ国が、選択肢3を2カ国が支持し、選択肢2及び選択肢4を支持する国はなかった。結果、選択肢1が採択されることとなった。
 なお、第2.4.7項に規定されたAIS常時作動要件に対し、安全確保の際の船長判断によるAISのon/offを可能とする規定(免除要件)を追加する等のICS等共同提案(SOLAS/CONF.5/9)については、過去の審議において、当該免除要件は総会決議A.917(AIS運用ガイドライン)において担保済みであり、必要ないとの判断がなされていたところ、当該提案を特段支持する国はなく、本会議に提出された原案(SOLAS/CONF.5/3/Rev.2)どおりとすることが合意された。
(2)第11−1章第3規則「国際海事機関船舶識別番号の標示」の一部改正
(1)MSC76での実質審議
 対象船舶を旅客船以外の10,000GT未満の船舶とするICS等共同提案(MSC76/4/24)を特段支持する国はなく、MSC76提出の原案(MSC76/4/1)を維持することが合意された。
(2)締約政府会議での審議
 MSC76提案(MSC76/4/24)と同主旨のICS等共同提案(SOLAS/CONF.5/8)を、パナマが支持したが、同国以外に特段支持する国はなく、所要の編集上の修正を検討した上で、本会議に提出された原案(SOLAS/CONF.5/3/Rev.2)を基本的に維持することが合意された。
(3)第11−1章第5規則「履歴記録」
(1)MSC76での実質審議
 ノルウェー提案(MSC76/4/13)の履歴記録(CSR)の更新要件の明確化のための第4.3項の修正が、当該提案を一部修正した上で、採用することが合意された(その他の同国提案は、特段支持する国がなく不採用。)。
 なお、ICS等共同提案(SOLAS/CONF.5/7)を特段支持する国はなく、当該提案を採用しないことが合意された。
(2)締約政府会議での審議
 MSC76での実質審議結果を踏まえ、ICSから、MSC76提案(MSC76/4/24)と同主旨のICS等共同提案(SOLAS/CONF.5/7)を取り下げることが表明された。
 上記以外、本規則案に対して特段意見する国はなく、所要の編集上の修正を検討した上で、本会議に提出された原案(SOLAS/CONF.5/3/Rev.2)を基本的に維持することが合意された。
(4)第11−2章第1規則「定義」
(1)MSC76での実質審議
 次を除く、各国提案については特段の支持がなく、所要の編集上の修正を検討した上で、MSC76提出の原案(MSC76/4/1)を基本的に維持することが合意された。
イ 港湾の定義(MSC76/4/1旧第9項関連)及び港湾施設の定義(第9項及びMSC76提出の原案(MSC76/4/1)第9項関連)
 プレナリーにおいて、米国等は、「港湾」の定義を残すよう主張したが、我が国及びイタリアは、定義は不要とする欧州各国共同提案(MSC76/4/7)を支持し、「港湾施設」の定義の範囲を広げること(泊地等を含めること)を条件に、「港湾」の定義を削除することになった。但し、泊地、航路等、「港湾施設」の具体的範囲についてワーキンググループ(WG)で検討することになった。
 WGにおいて、サイプラス等は、「港湾」の定義を残すよう改めて主張したが、欧州各国共同提案どおり、「港湾」の定義は削除された。また、「港湾施設」の具体的範囲については、ドラフティンググループ(DG)において欧州各国共同提案をべ一スに検討した結果、泊地、航路を含めることになった。
ロ 指定当局(Designated Authority)の定義(主管庁(Administration)との関係)(第11関連)
 我が国提案(SOLAS/CONF.5/11/Rev.1)が採用され、MSC76提出の原案(MSC76/4/1)どおり、主管庁(Administration)は船舶に係る事項を、指定当局(Designated Authority)は港湾に係る事項を担うことが、定義に規定された。
 定義中、ブラケットを付されていた[by or](又は締約政府により指定された外部機関)については、圧倒的多数が、その削除を主張し、審議の結果、[by or」が削除され、指定当局は、締約政府内(within)の機関のみとされた。
ハ 認定保安団体(Rso)の定義・役割(第16項関連)
 我が国提案(SOLAS/CONF.5/11/Rev.1)の「and」を「and/or」に修正する等の提案については、船舶に係る事項のみ、港湾施設に係る事項のみ、又はその両者の事項を担う3形態の認定保安団体(Rso)の存在があることは受け入れられたが、デンマーク、サイプラス、オランダ、英国等より、船舶のみ又は港湾施設に係る事項のみを担うRsoであっても、船舶のみ又港湾施設のみの知識ということではなく、指定当局(Designated Authority)の定義に規定するとおり、船舶及びship/port interfaceの観点から、すべてではないがそれぞれのRsoが関係する船舶及び港湾施設の双方についてのある程度の知識が必要との意見が表明された。審議の結果、Rsoの知識に係る「and」を維持することとし、WG議長提案(MSC76/4/1/Add.1)をベースに必要な修正がなされた。なお、我が国提案主旨(Rsoに付与する権限により、その必要とされる知識が斟酌されること。)は、受け入れられ、ISPSコード第B部第4.3項に必要な修正を行うことが合意された。
 あわせて、WG議長提案(MSC76/4/1/Add.1)に従い、締約政府(又は指定当局)は、Rsoに港湾施設に係る事項を委託することができることとし、ISPSコード第A部に必要な修正を行うことが合意された。
(2)締約政府会議での審議
 定義の明確化等の理由から、本会議に提出された原案(SOLAS/CONF.5/3/Rev.2)第11項bis(security incident)で使用されるブラケット付きの[relevant]、第2.1項(security purpose)、第2.3項(relevant ship/port facility)及び第2.4項(relevant ship to ship activity)の削除等を提案する米国等共同提案(SOLAS/CONF.5/21)について、特段の反対する国はなく、審議の結果、当該提案を採用することが合意された。
 上記以外、本規則案に対して特段意見する国はなく、所要の編集上の修正を検討した上で、本会議に提出された原案(SOLAS/CONF.5/3/Rev.2)を基本的に維持することが合意された。
(5)第11−2章第2規則「適用」
(1)MSC76での実質審議
 次を除き各国提案については特段支持する国はなく、所要の編集上の修正を検討した上で、MSC76提出の原案(MSC76/4/1)を基本的に維持することが合意された。
イ 船舶への適用(第1項関連)
 国際船舶保安証書の発給を改正条約発効の2004/7/1以降の最初の検査の時期とする我が国提案(SOLAS/CONF.5/11)に対し、米国が強い懸念を表明し、また、各国からの特段の支持もなかった(貴電国専第1853号による指示に従い、本提案部分を削除した改訂日本提案(SOLAS/CONF.5/11Rev.1)を提出した。)。
ロ 第1項非適用港湾施設への適用(第2.1項関連)
 デンマーク(MSC76/4/7関係)より、外航船舶を時々しか取り扱わない港湾施設についても港湾施設保安評価を実施すべきと意見がなされた。これに対して我が国は、自国の港湾数は膨大であること等の理由から、当該港湾施設全てに対して港湾施設保安評価を実施することは非現実的であり、ソフトな評価を最初に実施すべきとの意見をなした。中国、カナダが我が国提案を支持したものの、米国、英国、サイプラス等の多数の国がデンマークを支持し、外航船舶を時々しか取り扱わない港湾施設についても港湾施設保安評価を実施することになった。
ハ 他の国際条約との関係(第4項関連)
 第11−2章が国際法における各国の権利義務に不利益を与えないとの「saving clause」が本規則に追加された。
 なお、本項は、本来第9規則「監督及び適合措置」に規定されていたが、仏国籍Limberg号テロ事件を踏まえた仏国等共同提案(SOLAS/CONF.5/10)で、第9規則bis「船舶への脅威」に同様の規定が提案されていたため旧第9規則第3.4項の規定とまとめて本項に追加することとなった。
(2)締約政府会議での審議
 第4項に関し、カナダ提案(SOLAS/CONF.5/16)を考慮し、必要な修正を加えることが合意された。
 また、軍用目的(military purpose)の港湾施設について、デンマークより、第3項により軍艦(war ship)が第11−2章が適用除外されていることから、所要の検討が必要との意見がなされ、当該意見に対する参加各国の法律専門家で構成される法律グループでの見解(SOLAS/CONF.5/CW/WP.1)を踏まえ、第11−2章及びISPSコード第A部(強制要件部)は、当該軍用目的の港湾施設への適用を意図するものではない旨を、ISPSコード第B部(勧告部)に規定することが合意された。
 上記以外、本規則案に対して特段意見する国はなく、所要の編集上の修正を加えた上で、本会議に提出された原案(SOLAS/CONF.5/3/Rev.2)を基本的に維持することが合意された。
(6)第11−2章第3規則「保安に関する締約政府の責任」
 ノルウェーより、本会議に提出された原案(SOLAS/CONF.5/3/Rev.2)第3規則第4項(船舶の保安レベルの設定)及び第6規則第3項(港湾施設の保安レベルの設定)は、保安レベルの設定という点では同趣旨であることから、1の規則にまとめるべきとの意見がなされ、審議の結果、第3規則としてまとめることが合意された。
(7)第11−2章第4規則「船舶及び会社の要件」(旧第3規則)
(1)MSC76での実質審議
 アルゼンチン提案(MSC76/4/22)及びICS等共同提案(MSC76/4/24)を特段支持する国はなく、MSC76提出の原案(MSC7/4/1,annex1)を維持することが合意された。
(2)締約政府会議での審議
 本規則案に対して特段意見する国はなく、所要の編集上の修正(旧第3規則を第4規則に移動等)を検討した上で、本会議に提出された原案(SOLAS/CONF.5/3/Rev.2)を基本的に維持することが合意された。
(8)第11−2章第5規則「会社の特別な責任」(旧第10規則)
(1)MSC76での実質審議
 所要の編集上の修正を加えた上で、MSC76提出の原案(MSC76/4/1,annex1)を基本的に維持することが合意された。
(2)締約政府会議での審議
 本規則案に対して特段意見する国はなく、所要の編集上の修正(旧第10規則を第5規則に移動等)を検討した上で、本会議に提出された原案(SOLAS/CONF.5/3/Rev.2)を基本的に維持することが合意された。
(9)第11−2章第6規則「船舶保安警報装置」(旧第5規則)
(1)MSC76での実質審議
 「この規則のすべての要件に適合することを条件に、船舶保安警報装置の要件は、第IV章の要件に適合した無線設備を使用することにより、適合することができる。」との新規第7項を追加するノルウェー提案(MSC76/4/13)について、ロシア、シンガポール、ブラジル、フランス及びスウェーデンが支持をし、審議の結果、当該提案を採用することが合意された。
 また、スクエアブラケットが付されていた第3項及び第4項の2案の規定振りについて、実質的に同じ内容であり、規定の明瞭さの観点からは、MSC76/4/1,annex1紙面上下段の案が適切であるとの判断から、当該案を採用することが合意された。
 なお、各国より、船舶保安警報装置の性能基準の作成が要請され、米国提案(MSC76/4/2)を考慮の上、専門家グループに対し、性能基準案の作成が付託された。作成された性能基準案(MSC76/WP.8)は、来年1月の第7回無線通信及び捜索救助小委員会(COMSR7)で精査した上、同年5月のMSC77で採択される予定である。
(2)締約政府会議での審議
 本規則案に対して特段意見する国はなく、所要の編集上の修正(旧第5規則を第6規則に移動等)を検討した上で、本会議に提出された原案(SOLAS/CONF.5/3/Rev.2)を基本的に維持することが合意された。
(10)第11−2章第7規則「船舶への脅威」(旧第9規則bis)
(1)MSC76での実質審議
 仏国籍船Limberg号テロ事件を踏まえた対策を規則化する仏国等共同提案(SOLAS/CONF.5/10)について、各国より、提案趣旨を支持する意見がなされ、提案の第9規則bisを規則化することが合意されたが、当該第9規則bisの内容は、他の国際法等との整合の観点から、参加各国の法律専門家から構成される法律グループで精査することとなった。IMO法律グループの見解(MSC76/J12)等を踏まえ、締約国は周辺海域における保安レベルを設定すること、領海内を航行中の船舶又は領海に入ることを表明している船舶に対して、その保安レベルの情報を提供すること、船舶から通報を受けるための窓口を設定すること、及び脅威の存在を認めた場合には、船舶やその旗国政府に現在の保安レベル、船舶が執るべき保安措置、沿岸国が執ろうとしている措置について助言することが義務づけることを旨とする修正第9規則bisが合意された。
(2)締約政府会議での審議
 MSC76での実質審議結果を踏まえ、仏国から、仏国等共同提案(SOLAS/CONF.5/10)の趣旨は、MSC76で修正された第9規則bisに反映されていることから、同提案を取り下げることが表明された。
 上記以外、本規則案に対して特段意見する国はなく、所要の編集上の修正を検討した上で、本会議に提出された原案(SOLAS/CONF.5/3/Rev.2)を基本的に維持することが合意された。
(11)第11−2章第8規則「船舶保安に係る船長の裁量」(旧第4規則)
(1)MSC76での実質審議
 特段の審議なく、一部編集上の修正を加えたノルウェー提案(MSC76/4/13)及びICS等共同提案(MSC76/4/24)に基づき、本規則を修正することが合意された。
(2)締約政府会議での審議
 本規則案に対して特段意見する国はなく、所要の編集上の修正(旧第4規則を第8規則に移動等)を検討した上で、本会議に提出された原案(SOLAS/CONF.5/3/Rev.2)を基本的に維持することが合意された。
(12)第11−2章第9規則「監督及び適合措置」
(1)MSC76での実質審議
 次を除く、各国提案については特段支持する国はなく、MSC76提出の原案(MSC76/4/1)を維持することが合意された。
イ 「船舶の検査(inspection of the ship)」(第1.1項、第1.3項及び第2.5.3項関連)
 第1.1項に明示的に[inspection」を加える米国提案(MSC76/4/15)に対し、我が国は、提案文書(SOLAS/CONF.5/11)に基づき、「control」の概念に「inspection」が含まれるとの説明をしたところ、米国は、第1.1項への「inspection」の追加の必要性を再度主張した。審議の結果、我が国の主張に従い第1.1項から削除することは合意されたが、米国意見を踏まえ第1.3項の不適合船舶に対する監督措置(control measure)の例示に新たに「船舶の検査(inspection of the ship)」が追加されることとなった。
 第2.5.3項に不適合船舶への手順(step)に例示される「船舶の検査(inspection of the ship)」に関し、我が国は、提案文書(SOLAS/CONF.5/11)及び第2.5.1項の不適合是正要求との整合性から削除を主張したが、維持を提案する欧州各国(MSC76/4/7)からの意見及び第1.3項において「船舶の検査(inspection of the ship)」を明記したことから、維持することが合意された。あわせて、欧州各国共同提案に従い、法的整理から、「船舶の検査(inspection of the ship)」(航行停止等に至る前のより詳細な検査という趣旨)を実施できるのは、「船舶が入港しようとする港の締約政府の領海内にある場合」であることが明記された。
ロ 監督措置の発出(may/shall)(第1.2項関連)
 不適合船舶への監督措置の発出を「shall」又は「may」のいずれとするかについて、我が国は、提案文書(SOLAS/CONF.5/11)に基づき、監督(PSC)は沿岸国の権利であることから、「may」とすべきことを主張し、いくつかの国々が我が国を支持した。一方、欧州各国は、欧州各国共同提案(MSC76/4/7)に規定するとおり監督の結果として所要の措置を執ることは寄港国の義務であるとの立場から、「shall」とすぺきことを主張した。抽象的論争(「権利」か或いは「義務」か)となり、「shall」を主張する国が優勢となり(米国からの発言なし)、結果、「shall」とすることが合意された(ただし、従来のPSCにおいても、監督そのものは寄港国の権限であるが、いったん不適合を発見した場合は、何らかの措置をとることとなっており、その観点から、問題はないと思料される。)。
ハ 旧第1.4項、旧第1.5項、旧第2.6項及び旧第2.7項の削除(第3.2項bis及び第3.2項ter関連)
 米国提案(MSC76/4/15)に従い、同様な規定振りである旧第1.4項及び旧第2.6項を第3.2項terに、旧第1.5項及び旧第2.7項を第3.2項terに、それぞれ統合することが合意された。
ニ 第2.1項に規定する情報の船内保存期間(第2.3項関連)
 MSC76提出の原案(MSC76/4/1,annex1)において未作成であった本規定について、船内に6ヶ月間備置すべきとの欧州共同提案(MSC76/4/7)をベースに案文の作成が行われ、結果、過去10港分とすることとなった。
ホ 第2.5項(入港しようとする船舶に対する監督措置)
 船舶が入港しようとする沿岸国の領海内にある際に、第2.4項に規定する監督措置を執る場合には、沿岸国は当該船舶に対し、監督措置を執る意向を通報することとし、通報を受けた船長は入港申請の撤回を行うことができることとした。このような撤回を行った船舶に対しては本規則の適用を受けないことが規定された。
ヘ 旧第3.4項「他の国際条約との関係(saving clause)」
 他の国際条約との関係については、本規則のみならず章全体にかかるとの認識が支持され、本項を削除した上で、第2規則第4項に同内容の規定が新たに追加することが合意された(上記第2規則第4項を参照)。
ト 第3.6項
 監督措置が執られている場合に、人道上の観点から船上の人間の生命保証のためのアクセスが認められていたが、ICFTU提案(MSC76/4/6)により、この条件を緩和して人道上の観点全般とすることが合意された。
(2)締約政府会議での審議
 所要の修正をした上で、本会議に提出された原案(SOLAS/CONF.5/3/Rev.2)を基本的に維持することが合意された。
(13)第11−2章第10規則「港湾施設の要件」(旧第6規則)
(1)MSC76での実質審議
イ 第6規則2項「管轄内」と「領域内」の選択について
 他の規定部分との整合性の観点から「領域内」となった。
ロ 本規則の実施時期について
 第XI−2章第8規則関係(港湾施設保安計画のリストのIMOへの報告)において審議(同規則の審議内容を参照)。
ハ 港湾施設保安評価及び港湾施設保安計画作成の実施主体について
 評価及び計画作成の実施主体については、欧州共同提案(MSC76/4/7関係)から、認定保安団体(Rso)を含めることとし、さらにRsoが承認もできることとすべきとの発言があった。Rsoが評価又は計画作成を行ったものをRsoが承認することは適切でないとする意見があり、プレナリーにおいて、Rsoは港湾施設保安評価及び港湾施設保安計画作成を実施することができるが、これらの承認はできないものとして合意された。
(2)締約政府会議での審議
 本規則案に対して特段意見する国はなく、所要の編集上の修正(旧第6規則を第10規則に移動等)を検討した上で、本会議に提出された原案(SOLAS/CONF.5/3/Rev.2)を基本的に維持することが合意された。
(14)第11−2章第11規則「代替保安協定」(旧第7規則)
(1)MSC76での実質審議
 仏国共同提案(MSC76/4/17)を踏まえ、MSC76提出の原案(MSC76/4/1)第7規則「代替措置及び同等措置」に関し、内容的な整理から、2つに分けること(第7規則「代替」/第7規則bis「同等」)が合意された。
 また、仏国共同提案(MSC76/4/17)が言及する定期航路(routine routes)及び短国際航海に従事する船舶の特殊性を考慮して、必要な案文が作成された。
なお、第3項の「当該協定(agreement)で担保されるいかなる船舶も、協定で担保されていない船舶とship to ship activityを実施してはならない。」との規定について、通常的に船舶が行うbunkering等の他船舶との共同作業との整理が論点となったことから、ISPSコード第B部において、本件の解釈を規定することとなった。
(2)締約政府会議での審議
 本規則案に対して特段意見する国はなく、所要の編集上の修正(旧第7規則を第11規則に移動等)を検討した上で、本会議に提出された原案(SOLAS/CONF.5/3/Rev.2)を基本的に維持することが合意された。
(15)第11−2第12規則「同等保安措置」(旧第7規則bis)
(1)MSC76での実質審議
 同等措置の対象を船舶のみとすること(港湾の同等措置は削除)以外は、編集上の修正を加え、MSC76提出の原案(MSC76/4/1)第7規則「代替措置及び同等措置」第2項を本規則として採用することが合意された。
(2)締約政府会議での審議
 港湾施設の同等措置に係る新第7規則terを追加するドイツ及びオランダ共同提案(SOLAS/CONF.5/17)に対し、欧州各国が支持の意見をなし、審議の結果、当該提案を採用することが合意された。一方、サイプラスより、当該第7規則terと提案の第7規則bis「船舶の同等措置」は、実質的に同内容であることから、当該2規則を1規則にまとめるべきとの意見がなされ、当該意見に基づき、船舶及び港湾施設の代替措置を1規則にまとめることが合意された。
(16)第11−2章第13規則「情報の提供」(旧第8規則)
(1)MSC76での実質審議
 第2項の港湾施設の保安計画一覧のIMOへの通知に関し、報告の基準日をどこに置くかについては、圧倒的多数により「採択日」ではなく「発効日」とすることが合意された。
 また、報告期限については、日本、中国、トルコ及びロシアが「発効日から一年以内とする案」を支持する発言を行った。他方、米国等からは、早急に措置を実施すべきであり、「発効日までに報告すべきとする案」が提案され、多数の国が当該案を支持したが、具体的にはワーキンググループ(WG)で審議することになった。WGでは、プレナリーの審議結果を受けて、議長から、船舶保安対策期限(発効日まで)との整合性及び船舶保安対策と港湾施設保安対策との一体性の観点から、「発効日までにIMOへ報告する案」が提案された。これに対して、米国、サイプラス、フランス、英国等多数国が同案を支持し、当該提案が合意された。なお、発効日以降に保安計画が作成された港湾施設については随時IMOに報告すればよいとのことであり、この旨が我が国の発言により明確に規定された。
(2)締約政府会議での審議
 オーストラリア提案(SOLAS/CONF.5/19)の編集上の修正を除き、本規則案に対して特段の意見をする国はなく、所要の編集上の修正(旧第8規則を第13規則に移動等)を検討した上で、本会議に提出された原案(SOLAS/CONF.5/3/Rev.2)を基本的に維持することが合意された。
(17)船舶及び港湾施設の保安に関する国際コード(ISPSコード)の審議(議題7関連)
 (以下、節・項番号は採択されたISPSコードのものを使用している。ただし、一部節・項については、最終的に原案(SOLAS/CONF.5/4/Rev.2及びSOLAS/CONF.5/4/Rev.1)から節・項番号が変更したため、変更前の節・項番号も便宜のため併記している。)
(1)ISPSコード第B部第4.5項関連「認定保安団体(Rso)の要件」
 認定保安団体の要件はその特性に応じ適用すべきとの我が国の修正提案(SOLAS/CONF.5/11/Rev.1)については、第11−2章第2規則の修正提案と同様な議論がなされたが、船舶に係る事項のみ、港湾施設に係る事項のみ、又はその両者の事項を担う3形態のRsoの区分けに必要との理由から、受け入れられ、結果、必要な修正をした上で、本項に規定することが合意された。
 また、ICS等共同提案(MSC76/)かのRsoの要件から、「knowledge of ship design and construction」を削除することについては、特段支持する国はなく、当該事項を維持することが合意された。
(2)ISPSコード第A部第9.8節及び第9.8.1節[船舶の保安計画の監督(PSC)](旧ISPSコード第A部第9.7.1節及び第9.7.2節)
 船舶が違反する場合を除き船舶の保安計画を監督(PSC)の対象外とするか否かについて、欧州各国は公になることによる船舶への脅威の増加の懸念から、船舶の保安計画の秘匿性を確保するため、完全に監督(PSC)の対象外とすること(MSC76/4/7)を主張したが、米国は、計画を監督しなければ船舶の適合性が確認できないとして、監督の対象とすることを主張した。欧州各国以外は、米国意見を支持したため、欧州側の懸念も踏まえ、原則、船舶の保安計画は監督の対象外とするが、船舶の不適合の明確な根拠がある場合は、当該不適合の是正目的に限り、旗国の合意のもと、船舶の保安計画は監督の対象とすることが合意された。
(3)船舶の保安計画と安全管理システム(ISM)の組み合わせ(旧ISPSコード第A部第9.3節)
 MSC76において、ブラケットが付されている船舶の保安計画と安全管理システム(ISM)の組み合わせができることを規定するISPSコード第A部第9.3節について、我が国は提案文書(SOLAS/CONF.5/11/Rev.1)に基づき維持を主張し、一方、船舶の保安計画の秘匿性確保の観点から、欧州各国は削除(提案文書MSC76/4/7)を主張した。欧州以外の各国は、維持することを主張したことから、引き続きブラケットを付した状態で、本項を維持することし、また、欧州側の意見も踏まえ、本項を「The Administration may allow a ship security plan to be combined with the safety management system...」と修正することが合意された。
 一方、本会議において、欧州各国は、再度、船舶の保安計画の秘匿性確保の観点から、本節の削除を主張した。当該意見に対し、ドラフティング委員会議長国であるサイプラスより、MSCで修正された第9.3項の実施は、「may allow」と規定するとおり、各主管庁の判断となっていること、また、仮に本節がなくても、本項の内容を実施することは可能であるとの説明がなされた。本節を規定として、維持するか否かが議論となり、ISPSコード第A部第98節において、船舶の保安計画は、原則、監督(PSC)の対象外とすることが決定されたことから、結果、本節を削除することが合意された。
(4)ISPSコード第A部第12節「船舶の保安職員」
 ノルウェー提案(MSC76/4/13)は、一部ISPSコード第B部(非強制勧告要件)の部分を含むということで合意されなかった。
(5)ISPSコード第A部第13節「訓練及び操練」
 ICCL提案(MSC76/4/10)は、一部修正の上、合意された。ノルウェー提案(MSC76/4/13)の回数/頻度に議論が集中し、ノルウェーが同一内容で一部表現を変えた(繰練と訓練を別にした)修正案を提案し、ブラケット付き合意された。
(6)ISPSコード第A部第19節「検査及び証書」
 船舶の第11−2章及びISPSコード第A部の要件への適合性を確認する検査及び条約証書の発給について、国際安全管理システムコード(ISMコード)との関連性・類似性から、ISMコードに規定する検査及び証書システムを導入する韓国提案(MSC76/4/11及びMSC76/4/12)が、各国の支持を受け、当該提案に基づく本節の所要な修正をすることが合意された。
 なお、韓国が提案した暫定国際船舶保安証書(Interim International Ship Security Certificate)の導入については、米国が暫定的なものは保安上問題があり、検査の完全性の確保する必要があるとの理由から、導入に反対の意見をなしたが、欧州各国が会社(Company)の変更及び船舶の転籍の際のsafe guardとして有効な手段であると導入に賛成の意見をなし、結果、導入すること(第19.4節)が合意された。なお、先の米国の懸念を考慮した、暫定国際船舶保安証書に係る米国、韓国等の共同提案(SOLAS/CONF.5/21)が本会議に提出され、当該提案に基づき、規定を作成することが合意された。
(18)締約政府会議決議の審議(議題8関連)
 締約政府会議において採択された決議の概要以下のとおり。
(1)決議3「海事保安の強化に関する機関の更なるなる作業」
 IMOに対し、以下の事項に対する見直し及び進展に係る作業を要請している。
船舶の保安職員、会社の保安職員、港湾の保安職員等のトレーニングガイダンスの作成
ロングレンジトラッキングシステムの性能基準やガイドラインの作成
船舶の監督に関するガイドラインの作成等
 なお、フィリピンより、本決議に関し、提案文書(MSC76/4/5)に基づき、今後の作業として、safe manningに係る総会決議A.890(21safe manning)の見直しを行うべきとの意見がなされ、ICFTUがこれを支持し、サイプラスが当該事項は総会でも議論があったとの主張が行われ、結果、今後の作業事項として、本決議に含むことが合意された。
(2)決議4「SOLAS条約附属書第11−1章及び第11−2章の更なる改正」
 今後のセキュリティリスク等の変化よって、SOLAS条約第11−1章及び第11−2章の規定が、遅滞無く改正されていく必要性があることに言及するとともに、条約を改正する際には、拡大海上安全委員会で採択ができるようにすることを勧告している。
 なお、本決議は、本会議に提出された原案では、第11−2章のみを対象としていたが、第11−1章も保安に係ると米国等の意見により、第11−1章も含めることなった。
(3)決議5「技術協力及び援助の推進」
 テロ対策の統一的な推進については、技術協力等が不可欠であることに言及し、締約政府に対して、機関への協力及び統合技術協力プログラムの活用等を促している。
(4)決議6「海事保安を高める特別の措置の早期履行」
 改正条約等の早期履行の必要性を言及するとともに、締約政府に対して、早期履行のため講じるべき具体的な方策を勧告している。
(5)決議7「条約が適用されない船舶、港湾施設等の保安を高めるための適切な措置の実施」
 今回の条約の対象となる船舶及び港湾施設のみの対策では、テロ対策としては不充分である可能性を示唆するとともに、適用除外である船舶及び港湾施設に対しても締約政府の判断に基づき所要の措置が講じられるよう促している。
 また、そのような措置をとった場合には、機関に報告することが要請されている。
(6)決議8「ILOとの協力を通じた保安強化」
 今回結論を得るに至らなかった船員の本人確認文書や港湾保安の広範な問題に係る作業について、機関に対し、ILOとの合同作業部会を設立する等協力して検討を進めていくことを要請している。
(7)決議9「WCOとの協力を通じた保安強化」
 WCOに対してコンテナの国際運送についての保安強化の方策の早急な検討を要請するとともに、WCOの検討の結果に基づいて、必要がある場合には、条約のさらなる改正を視野に入れることを示唆している。
(8)決議10「ロングレンジでの船舶識別及び追跡の早期実施」
 締約政府に対し、ロングレンジでの船舶識別及び追跡について、優先事項として何らかの措置を執ること等を要請している。
 なお、会議に提出された原案では、ロングレンジでの船舶識別及び追跡の手段として、インマルサットCのみが言及されていたが、欧州等の意見により、「other available systems」が追加された。また、ICS等共同提案(MSC76/4/21)に基づき、ロングレンジでの船舶識別及び追跡検討の導入に伴う問題点の検討の要請が追記された。
(9)決議11「人的要素」
 本決議は、ICFTU提案(MSC76/4/6)に基づき作成された。シートレードの重要性及びそれに関わる船員の安全保障、人権を考慮し、本改正に伴う条約の履行に関し、人的要件に係る留意事項について締約政府及びその他の機関がIMOに対して報告することを求めている。
(10)その他の決議案の審議結果(SOLAS/CONF.5/30関連)
 サイプラス及びマルタ提案(SOLAS/CONF.5/30)の船舶、港湾施設等に脅威を与えるデモ行動を行う非政府組織に対するIMOにおけるconsultative statusの扱いを要請する決議案については、欧州各国の反対により、否決された。なお、同提案国より、本決議案の趣旨は、適切な委員会等において今後も検討すべき事項であるとの意見がなされた。
(19)その他審議結果
(1)フィリピン提案文書(MSC76/4/5)及びICFTU提案文書(MSC76/4/6)の審議
 フィリピンより、提案文書(MSC76/4/5)に基づき、出年の船員の業務量に対応した、配乗の必要性について説明があり、議長は、STW34がMSC77へと議論をするため、MSC76のワーキンググループ(WG)で議論することとし、フィリピンは了解した。引き続き、ICFTUより、提案文書(MSC76/4/6)に基づき、フィリピンと同様の趣旨及びRecent Workの観点から、preambleの修文等について、提案したところ、デンマークより、フィリピン提案文書の議長の扱いについて、SOLAS条約第5章の改正の可能性を含め、配乗に関する事項として疑問が述べられ、サイプラス、バハマ、ギリシャ、アルゼンチンより、ICFTU指摘の賛同が述べられると供に、パナマより、additional crew manningについても触れる意見が述べられ、引き続き検討することとなった。
(2)ILO提案文書(MSC76/INF.3)の審議
 議長より、INF文書なので、時間的問題もあり、特に議場で意見を求めない旨述べられ、ILOは了解した。
(3)国連危険物輸送専門小委員会の報告(SOLAS/CONF.5/24関連)
 提案国の英国より、審議時間がないことから、提案を取り下げるとの表明がなされ、あわせて、今後の適当な委員会等に対し、文書を再提出すると意見がなされた。
(20)閉会及び最終議定書への署名
(1) 全体会議にて本件条約が採択されたことを受け、米国及び我が国(中本(ナカモト)国土交通省大臣官房審議官)が、本会議の成功を祝するとともに、採択されたSOLAS条約附属書改正等の実施に取り組むべき旨の閉会演説を行った。
(2) 最終議定書への署名は、我が国より、小島(コジマ)当館特命全権公使、中本(ナカモト)国土交通省大臣官房審議官、松尾(マツオ)国土交通省海事局安全基準課長、篠村(ササムラ)社団法人日本造船研究協会特別顧問その他の12名が行った。







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