日本財団 図書館

共通ヘッダを読みとばす


Top > 社会科学 > 政治 > 成果物情報

私はこう考える【北朝鮮について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2004/05/19 朝日新聞朝刊
小泉首相の再訪朝、どう見る
 
 小泉首相が22日、北朝鮮を再訪問し、1年8カ月ぶりに金正日総書記と会談する。拉致問題の解決へ向けた動きはどこまで進むか。核やミサイル問題で北朝鮮の譲歩はあるのか。日韓の専門家に聞いた。
 ●核問題、譲歩引き出せ 静岡県立大教授(国際関係論)・伊豆見元氏
 核の問題で北朝鮮からどこまで譲歩を引き出せるか。小泉首相の再訪朝で、私が最も関心をもっているのはその点だ。拉致被害者の家族の帰国・来日はほぼ確実に実現するだろう。ただ、それだけだと「拉致と核を取引した」という誤ったメッセージを北朝鮮や国際社会に送りかねない。核やミサイル、拉致などの問題を包括的に解決するとした日朝平壌宣言の精神も損ねてしまう。
 拉致被害者の家族8人について、北朝鮮は日本に戻す方針をすでに固めている。首相が2度も続けて訪朝するからには、8人に加え、北朝鮮が「死亡」「入国の事実がない」とした10人や拉致の疑いがある行方不明者についても、金正日総書記に具体的な対応を求めるに違いない。拉致事件に幕が引かれる懸念は少ない。
 とりあえず家族の帰国が決まれば、「日朝国交正常化の早期実現」をうたった02年秋の平壌宣言に立ち戻り、交渉の再開に踏み切るべきだ。拉致問題を話し合いの枠内にいれるため、両者はワンセットにした方がいい。
 とはいえ、再開にあたっては留意するべき点がある。平壌宣言の時点と今とでは、北朝鮮の核を巡る状況が様変わりしているからだ。
 平壌宣言に盛られた正常化交渉はその後、拉致事件の影響で膠着(こうちゃく)状態に陥った。米国との仲介役を日本に期待した北朝鮮の思惑は外れた。ウラン濃縮を巡って対米関係も悪化、孤立感を深めた北朝鮮は核開発再開のカードを切った。
 具体的には、国際原子力機関(IAEA)の査察拒否、核不拡散条約(NPT)脱退、使用済み核燃料の再処理施設の再稼働と進み、得意の「瀬戸際外交」を展開した。
 しかし、展望は開けない。中国も韓国も米国の説得役にならないと分かり、日本の価値が再確認された。もともと苦しかった「表の経済」に加え、ミサイル売却や麻薬の密輸、不正送金などでまかなってきた「裏の経済」も、北朝鮮包囲網が敷かれたここ数年、急激に縮小、日本の援助が不可欠になったと言ってよい。小泉首相の再訪朝を北朝鮮が認めた背景にはこうした事情がある。
 北朝鮮が現実に核開発を行っている以上、これを放置したままでは、平壌宣言には戻れない。
 小泉首相は金総書記との会談で、国際社会が求める「完全で検証可能かつ後戻りできない核放棄」(CVID)の受け入れを表明させるべきだ。「検証可能」や「後戻りできない」の定義は後で詰めればよい。さらに、5千キロワットの黒鉛減速炉解体の無条件停止や、IAEAによる査察の再開など、目に見える動きも止めたい。交渉再開の前提として、せめてこれぐらいの条件はつけなければならない。
 小泉首相の再訪朝への国際的な評価は悪くはない。中国は基本的に歓迎だ。日本が北朝鮮に援助すれば、自国の負担が減るからだ。韓国も前向きに受け止める。外交上のしきたりを破って小泉首相が連続して訪朝することが、00年の金大中前大統領に続く盧武鉉大統領の訪朝に道を開くと期待する。核問題を気にする米国も、現段階では不満を表明していない。
 第3回6者協議を6月末に控え、小泉首相が停滞する核問題に風穴をあけられれば、再訪朝はベストのタイミングと国内外から評価されるだろう。逆に核で成果をあげられず、拉致問題だけが進展すれば、自国の都合で核問題を犠牲にした印象を与える。これは避けるべきだ。北朝鮮には足元を見られ、国際社会の信頼も失う。小泉首相はそこのところを肝に銘じてもらいたい。
 (聞き手・吉田貴文)
 ■北朝鮮をめぐる動き
【02年】
9月
小泉首相が訪朝。金正日総書記が日本人拉致の事実を認めて謝罪。「日朝平壌宣言」に署名
10月
拉致被害者5人が帰国
11月
日朝国交正常化交渉が再開
12月
国際原子力機関(IAEA)が北朝鮮に核開発計画についての査察を要求。北朝鮮が拒否北朝鮮が寧辺の核施設の再稼働を表明、IAEA査察官を国外追放
【03年】
1月
北朝鮮が核不拡散条約(NPT)脱退を宣言
4月
米朝中3者協議。北朝鮮が米国に核保有を表明
8月
北京で第1回6者協議
12月
拉致議連事務局長の平沢勝栄衆院議員らが北京で北朝鮮の鄭泰和・日朝交渉担当大使らと会談
【04年】
2月
北朝鮮への送金を規制する改正外為法が成立
平壌で日朝政府間交渉
北京で第2回6者協議
3月
民主党が特定船舶等入港禁止特措法案を国会提出
4月
自民党の山崎拓前副総裁と平沢氏が中国・大連で鄭大使らと会談
自民、公明両党が特定船舶入港禁止法案を国会に提出
北朝鮮の金正日総書記が訪中、胡錦涛国家主席らと会談。金総書記は6者協議の推進を表明
中朝国境に近い北朝鮮の竜川駅で列車爆発事故
米国の03年版国際テロ報告書で北朝鮮に関する記述に日本人拉致問題を明記
5月
北京で日朝政府間交渉
小泉首相再訪朝(22日、予定)
著者プロフィール
伊豆見 元 (いずみ はじめ)
1950年生まれ。
中央大学法学部卒業。上智大学大学院修了。
平和・安全保障研究所主任研究員、静岡県立大学助教授、米ハーバード大学客員研究員等を経て現在、静岡県立大学現代韓国朝鮮研究所センター所長。
 
 
 
 
※ この記事は、著者と発行元の許諾を得て転載したものです。著者と発行元に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど、著者と発行元の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。








サイトに関するご意見・ご質問・お問合せ   サイトマップ   個人情報保護

日本財団会長笹川陽平ブログはこちら



ランキング
注目度とは?
成果物アクセスランキング
12位
(28,647成果物中)

成果物アクセス数
461,633

集計期間:成果物公開〜現在
更新日: 2017年3月25日

関連する他の成果物

1.私はこう考える【中国について】
2.私はこう考える【ダム建設について】
3.私はこう考える【死刑廃止について】
4.私はこう考える【公営競技・ギャンブル】
5.私はこう考える【天皇制について】
6.私はこう考える【国連について】
7.私はこう考える【自衛隊について】
8.私はこう考える【憲法改正について】
9.私はこう考える【教育問題について】
10.私はこう考える【イラク戦争について】
  [ 同じカテゴリの成果物 ]


アンケートにご協力
御願いします

この成果物は
お役に立ちましたか?


とても役に立った
まあまあ
普通
いまいち
全く役に立たなかった


この成果物をどのような
目的でご覧になりましたか?


レポート等の作成の
参考資料として
研究の一助として
関係者として参照した
興味があったので
間違って辿り着いただけ


ご意見・ご感想

ここで入力されたご質問・資料請求には、ご回答できません。






その他・お問い合わせ
ご質問は こちら から