日本財団 図書館

共通ヘッダを読みとばす


Top > 社会科学 > 政治 > 成果物情報

私はこう考える【北朝鮮について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1995/06/01 朝日新聞朝刊
日朝交渉再開は7月以降か 伊豆見元・静岡県立大教授に聞く
 
 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)との国交正常化交渉は今年三月、連立与党の訪問団が朝鮮労働党と「早期再開」で合意したが、まだ再開にこぎつけていない。最近の事前折衝で、北朝鮮は前向きと受け取れる提案をしたが、「いぜん再開の見通しは立たない」(外務省幹部)のが実情。過去の交渉での両国の主張の論点を整理するとともに、朝鮮半島問題に詳しい伊豆見元・静岡県立大教授に両国関係を取り巻く国際環境と交渉再開への見通しを聞いた。
 (平井公 政治部)
 
 ――日朝国交正常化交渉の行方を見るうえでのポイントは何ですか。
 「米国の姿勢、朝鮮半島の南北関係、北朝鮮の指導体制の三点から考えるべきだ。まず、米国は日朝交渉の進展を支持する方向に変化している。一九九一年の交渉開始のころは、北朝鮮の核疑惑の先行きが見えず、『日本の勝手な行動は困る』という立場だった。だが、昨秋の米朝合意で核問題処理の枠組みが曲がりなりにもできた。日本は米朝交渉の進展具合を見つつ日朝交渉をやればいい」
 
 ――韓国と北朝鮮との南北関係の見通しは。
 「韓国は日朝交渉が南北対話よりも先行することに警戒感を持っている。六月二十七日の韓国の地方選挙では与党・民自党の苦戦が予想され、次期大統領選挙に影響を与えるソウル市長選でも与党は厳しい立場だ。金泳三大統領は、政権基盤が弱まれば、南北関係で失地回復をはかるだろう。北朝鮮も、弱体化した金泳三政権が相手なら有利に交渉を進められると考え、前向きになるだろう」
 「七月八日の金日成主席の一周忌も転換点になる。北朝鮮は韓国が哀悼の意を示さなかったことを非難してきた。一周忌を過ぎればそれも影をひそめるだろう。八月十五日は日本の植民地支配からの解放記念日だが、同時に朝鮮半島分断五十周年にも当たる。過去を振り返り、対話再開に向けた機運も高まる」
 
 ――北朝鮮の指導体制の現状をどう見ますか。
 「金正日書記への権力継承は過渡的段階だ。日本としては安定度に欠ける相手との交渉は進めにくいところだ。早ければ一周忌の前後、遅くても十月の朝鮮労働党創建五十周年までには、金正日氏の国家主席、総書記への就任について結論が出るだろう」
 
 ――交渉再開はいつ。
 「韓国の選挙、金主席の一周忌が過ぎた七月以降になると思われる」
 
 ――北朝鮮のコメ支援要請をどう見ますか。
 「食糧事情を改善して金正日体制への国民の支持を盛り上げようとの思惑が見て取れる。一回限りの人道的支援としては良い。だが、制度的に定着させたら抜き差しならなくなる。流動的な要素が多いので、北朝鮮に対してはフリーハンドを確保しておくべきだ」
 
 ――交渉再開後の見通しは。
 「『交渉の開始』と『国交正常化』は切り離して考えるべきだ。核開発問題などで日本の考えを伝えるパイプを持つこと自体に意味があり、それが国交正常化に結びつかなくてもいい」
 「冷戦時代を通じて北朝鮮を支えてきた旧ソ連・東欧圏は崩壊し、中国からの援助も頭打ちとなっている。在日本朝鮮人総連合会からの送金も低迷していると聞く。代わって支援できる国は日本しかない。この五年間で、日本の経済支援の持つ意味合いは大きくなっている。それが日朝交渉でのテコになるだろう」
 《メモ》 日朝交渉は一九九〇年九月の金丸信元副総理らの北朝鮮訪問を契機に、九一年一月に平壌で第一回交渉が開催された。九二年十一月の第八回で、大韓航空機爆破事件の金賢姫(キム・ヒョンヒ)元死刑囚の教育係の日本人女性「李恩恵(リ・ウネ)」の問題をめぐって北朝鮮が強く反発。交渉は中断している。
 
○過去8回の日朝交渉での主な論点
 ●基本問題
 <日本>
 北朝鮮の管轄権(主権の及ぶ範囲)は朝鮮半島の南側に及ばないことを確認すべきだ。日朝国交正常化で日韓関係が後退することは受け入れられない。日韓併合条約など過去の条約は、当時は有効に締結、実施された。
 <北朝鮮>
 朝鮮半島は一つ。管轄権まで議論しない。「望ましい事実ではないが、我々の主権は朝鮮半島の半分にしか及んでいない」(第三回交渉新提案)。日韓併合条約などは、日本の武力侵略によって強制されたもので、無効。
 ●賠償・補償問題
 <日本>
 日朝は交戦関係にはなかったので、「賠償、補償」には応じられない。植民地時代の36年間を中心とする「財産・請求権」の観点から話し合う用意がある。戦後45年間の償いについては、90年の三党共同宣言に盛り込まれているが、日本政府を拘束しない。
 <北朝鮮>
 植民地時代は、侵略した日本と朝鮮人民とは交戦関係にあった。交戦国家間の賠償形態と財産・請求権を、ともに適用すべきだ。戦後45年についても請求する。日本は朝鮮半島の分断や朝鮮戦争に一定の責任を持っている。従軍慰安婦問題で謝罪と補償を求める。
 ●核問題
 <日本>
 国際原子力機関(IAEA)の保障措置協定の完全履行、韓国との「朝鮮半島の非核化共同宣言」による再処理施設の保有放棄によって、核兵器開発についての懸念を払拭(ふっしょく)することを要求。この問題の解決なしに、日朝国交正常化は困難。南北対話の進展に期待。
 <北朝鮮>
 核兵器を開発する意思も能力もない。この問題は日本とは無関係だ。査察受け入れのためには、米国の核不使用の約束が欠かせないし、韓国にある米軍の核兵器基地への同時査察が必要だ。寧辺(ヨンビョン)の実験室で平和目的でごく少量のプルトニウムを抽出した。
著者プロフィール
伊豆見 元 (いずみ はじめ)
1950年生まれ。
中央大学法学部卒業。上智大学大学院修了。
平和・安全保障研究所主任研究員、静岡県立大学助教授、米ハーバード大学客員研究員等を経て現在、静岡県立大学現代韓国朝鮮研究所センター所長。
 
 
 
 
※ この記事は、著者と発行元の許諾を得て転載したものです。著者と発行元に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど、著者と発行元の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。








サイトに関するご意見・ご質問・お問合せ   サイトマップ   個人情報保護

日本財団会長笹川陽平ブログはこちら



ランキング
注目度とは?
成果物アクセスランキング
12位
(28,844成果物中)

成果物アクセス数
463,067

集計期間:成果物公開〜現在
更新日: 2017年5月20日

関連する他の成果物

1.私はこう考える【中国について】
2.私はこう考える【ダム建設について】
3.私はこう考える【死刑廃止について】
4.私はこう考える【公営競技・ギャンブル】
5.私はこう考える【天皇制について】
6.私はこう考える【国連について】
7.私はこう考える【自衛隊について】
8.私はこう考える【憲法改正について】
9.私はこう考える【教育問題について】
10.私はこう考える【イラク戦争について】
  [ 同じカテゴリの成果物 ]


アンケートにご協力
御願いします

この成果物は
お役に立ちましたか?


とても役に立った
まあまあ
普通
いまいち
全く役に立たなかった


この成果物をどのような
目的でご覧になりましたか?


レポート等の作成の
参考資料として
研究の一助として
関係者として参照した
興味があったので
間違って辿り着いただけ


ご意見・ご感想

ここで入力されたご質問・資料請求には、ご回答できません。






その他・お問い合わせ
ご質問は こちら から