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私はこう考える【北朝鮮について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1990/9/12 朝日新聞朝刊
南北朝鮮首脳会談の背景 伊豆見・静岡県立大助教授に聞く(視点)
 
【ソウル11日=小田川特派員】南北分断史上初の韓国と朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の首相会談が開かれ、南北朝鮮の関係改善が注目されるが、11日、ソウルで開かれた韓国国土統一院主催の朝鮮統一問題に関する国際シンポジウムに出席のため訪韓中の伊豆見元・静岡県立大助教授は、朝日新聞記者に対して、会談実現には「北朝鮮が従来の『対南解放』路線を実質的に放棄するという対南政策の変化が大きく働いている」と指摘した。また、統一への道筋として、北朝鮮が主張する連邦制を韓国政府が受け入れることを検討すべきだ、と語った。伊豆見助教授の主な発言は次の通り。
 (北朝鮮の政策変化)
 北朝鮮は建国時から「統一と対南解放、そして、南朝鮮革命」の3つを一体のものとして位置付けていた。だが、朝鮮戦争後、南北間の力関係が次第に変わり、70年代に入ってからは韓国優位へと逆転した。80年代に韓国が経済成長を続け、ソウル五輪を成功させて、社会主義圏との関係改善を進める一方、北朝鮮は経済停滞に悩まされ、西側との関係も進展させることはできなかった。南北間の格差が拡大するなかで、北朝鮮は「南朝鮮革命」と「祖国統一」を分けて考えるようになった。
 北朝鮮は公式文献でも「南朝鮮革命」を韓国内の「革命力量」にゆだねる路線を明らかにしている。また、韓国民の手による「南朝鮮革命」に北朝鮮が期待をかけていることは事実だとしても、それがそのまま「南朝鮮解放」に結びつかないことも示唆している。金日成主席は86年の最高人民会議で、平和統一には「北と南が互いに併呑(へいどん)することなく、連邦共和国を創立する方法しかない」と表明した。延亨黙北朝鮮首相が今回、ソウルで「主体思想は他人に強要すべきでない」と言明したのも、こうした対南政策の変化が背景にある。
 (守勢の北朝鮮)
 昨年2回にわたって北朝鮮を訪問して専門家らと話し合った印象では、北朝鮮は明らかに「守勢」に立っている。彼らは南北間の国力の格差がかつてないほど拡大していることをよく知っているようだ。平和的な手段で統一を推し進め、しかも朝鮮半島で「1つの制度」を選択することになれば、韓国の制度=資本主義が朝鮮半島を支配するだろうという点も十分に認識していた。そこから、北朝鮮は平和統一を達成、かつ自らの制度を保障しうる方法として「連邦制」を選び、それによって2つの異なる制度をそのまま残そうとしている、といってよい。
 (統一の道筋)
 金主席は「統一の最終段階」として、「連邦制」を主張する一方、盧泰愚・韓国大統領は「南北連合」の中間過程を経て統一民主共和国をつくるという「韓民族共同体統一案」を提案している。南北双方は現在、朝鮮半島に異なる理念と体制の国家が存在していることを事実上認めた上、そこを出発点にして統一をめざす点で基本的に一致している。しかし、韓国が北朝鮮を「併合」する意図があると感じれば、かたくなな姿勢を崩さないだろう。延首相が今回の会談の基調演説で「北側は、南側がいわゆる『自由の風』を吹き込んで『勝共統一』をしようとしていると考え、南側を信じず、警戒している」と述べたのは、異例にも北朝鮮の懸念を率直に表明したものだ。
 北朝鮮は、韓国の統一案に対して肯定的な面があると留保しながらも、韓国ペースで統一が実現するのを警戒している。韓国は国力の優位と国際的な地位向上を背景に、余裕をもち、将来は北朝鮮の主張する「連邦制」を受け入れることも十分に検討するべきだ。いったん連邦制が実現し、南北間の交流が活発になれば、いずれ「1つの体制」に基づく統一国家がつくられる可能性は極めて高いからだ。
著者プロフィール
伊豆見 元 (いずみ はじめ)
1950年生まれ。
中央大学法学部卒業。上智大学大学院修了。
平和・安全保障研究所主任研究員、静岡県立大学助教授、米ハーバード大学客員研究員等を経て現在、静岡県立大学現代韓国朝鮮研究所センター所長。
 
 
 
 
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