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私はこう考える【北朝鮮について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2002年11月号 『中央公論』
「身辺整理」を始めた金正日
小此木政夫
 
 北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)との国交正常化は、これまで、北方領土問題と並ぶ「歴史的な課題」の一つとされてきた。また、朝鮮半島に平和が到来すれば、台湾海峡と並ぶ東アジアの二大紛争の一つが解決されることになる。小泉首相の平壌訪問の目的は、このような観点から、植民地支配という過去の問題と、日本人拉致問題や安保問題などの現在の懸案を同時に一括して解決することであり、そのことについて、金正日総書記の政治的意思を確認することにあった。
◆北朝鮮外交の「二つの悪夢」
 小泉首相が政治的に決断したことは事実であるが、その動機を国内政治的な観点から理解したり、「スタンドプレー」とみたりするのは誤りである。政治家である以上、それを結果的に利用することは十分にありうるが、従来のように、日本側の特定の政治家が北朝鮮側の金容淳書記(アジア太平洋委員会委員長)と会談して、内密に食糧支援を約束して交渉を再開させたわけではない。日朝双方の外務省が主導し、外交機構を通じて最高指導者の決断を促しただけである。
 これまで「包括解決」方式を主張してきたのは、北朝鮮側ではなく日本側である。したがって、今回、小泉首相の平壌訪問が可能になったのは、北朝鮮側の交渉態度が変化し、それを受容したからである。日本側はタイミングを適切に選び、厳格に秘密を保持して、積極的な外交を展開した。事実、本誌五月号で「同時一括解決」方式を主張しながら、私はそのような外交交渉が水面下で進展していることを知らなかった。外務省批判の嵐が吹くなかで、日本側の交渉能力は最大限に発揮されたのである。
 しかし、そのような官僚的使命感に基づく外交とは別に、これまで日本政府は「二つの悪夢」に悩まされ続けた。
 その第一は米韓両国による日本の「頭越し」である。こ〇〇〇年六月に金大中大統領が金正日総書記と会談し、十月にオルブライト国務長官が平壌を訪問したとき、この悪夢は現実のものになろうとしていた。事実、それを見透かすかのように、北朝鮮側は日朝国交交渉を一方的に決裂させた。十二月に、もしクリントン大統領まで平壌を訪問すれば、一人取り残された日本は拉致問題を棚上げして、北朝鮮との関係正常化に走ったかもしれない。それは国論の大分裂を招来したことだろう。
 第二の悪夢は北朝鮮問題の軍事危機への拡大である。一九九三年三月、北朝鮮がNPT(核拡散防止条約)脱退を表明したときも、翌年夏、米国政府が金倉里の地下施設に強い疑いを抱いて、強硬に査察を要求したときも、日本政府は軍事危機への対処方針を持っていなかった。カーター元大統領の平壌訪問によって危機が回避されるまで、日本政府は「法律の範囲内で対応する」としか主張できなかった。このときの経験が後に周辺事態法を生んだのである。
 歴史的な日朝首脳会談を前に、今回、日本政府を脅かしていたのは後者の悪夢である。北朝鮮が対米譲歩を渋っている間に、9・11テロ事件が発生し、アフガニスタンでタリバーンの掃討が進展した。また現在、米国によるイラク攻撃が現実味を増している。もしイラク攻撃が開始されれば、次の目標は同じように「悪の枢軸」と名指しされている北朝鮮であるに違いない。しかし北朝鮮が「第二のイラク」になることは、日本にとって、周辺事態法が発動されることを意味している。
 
 
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