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私はこう考える【北朝鮮について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


◆慶尚道が団結した韓国総選挙
 やや興味本位かもしれませんが、勝ち負けはどうだったのかということから申し上げますと、野党のハンナラ党も与党の民主党も、予想どおり過半数は取れなかった。しかし、どちらが比較第一党になるかということで熾烈な選挙戦が展開され、結果的にハンナラ党が第一党の座を確保しました。定数が削減されて議席総数が二百七十三になりましたから、過半数は百三十七です。百三十三までいったのですから、とりあえずハンナラ党が勝利したと言ってよいでしょう。
 民主党の方は、第一党にはなれなかったのですが、百十五という議席を獲得しました。ハンナラ党との議席の差は十八です。しかし、これは大変な善戦で、従来の議席を二十近く伸ばしております。もう一度自民連との連携が復活すれば、無所属はほとんど民主系ですので、ほぼ過半数に到達すると見られております。その意味では、必ずしも負けたとはいえないのです。
 選挙違反が多数摘発されており、これから裁判が始まります。最後のところの議席はどうにでもなると言っては失礼なのですが、与党がもし強引に多数派工作を展開すれば過半数に到達するのはそれほど難しいことではありません。ただ、強引に工作すれば、それだけ与野党対立の激化は避けられなくなります。そうすることが賢明か否か、こういう判断の問題になってくるわけです。
 最後に、自民連ですが、これは惨敗と言っていいと思います。五十議席あったのに、十七議席しか取れず、院内交渉団体の資格を失ってしまいました。今後、金鍾泌氏の指導力が問われることになります。というよりは、国民会議(与党・民主党の前身)と連立していた時期に、金鍾泌氏が議院内閣制改憲で必ずしも十分な指導力を発揮できなかったことに対する忠清道の人たちの失望感が、こういう結果を招来したということだろうと思います。
 勝ち負けは以上のようなことなのですが、今回の選挙は従来にも増して地域対立が激化した選挙でした。落選運動や南北首脳会談など多くの話題を集めましたが、結果的には従来以上に地域対立を土台とする選挙戦が展開されました。特に野党ハンナラ党の基盤である韓国南東部の慶尚南北道、釜山、大邱が恐ろしいほど団結しました。この地域に六十五議席が配分されているのですが、ハンナラ党がそのうちの六十四議席を獲得しました。現代グループの鄭周永名誉会長の御曹子であり、大韓サッカー協会会長の鄭夢準氏が無所属で出馬したために一議席は逃したのですが、完勝と言っていいような結果が出ました。
 従来、金大中大統領の地盤である全羅南北道、光州のまとまりがよく、どちらかというと慶尚道はまとまりに欠けるところがあったのですが、今回はその逆でした。慶尚道が一つになると、どれほど恐ろしいかということが如実に示されたのではないかと思います。首都圏の票を含めて、ハンナラ党は実に有効投票数の三八・九%を獲得しました。これは前回の大統領選挙で金大中氏を当選させた票数に肉薄するものです。選挙前にハンナラ党から分裂して民国党という政党をつくった重鎮政治家たちも、慶尚道に進出しようとした民主党候補も一人残らず落選しました。
 なぜこれほど慶尚道がまとまったのかと申しますと、基本的には金大中政権、すなわち全羅道政権に対する地域的な反発があったということです。とりわけ地域偏重人事といわれるものに対する拒否感が強かったようです。釜山や大邱が経済危機で大きな打撃を受けたことも原因の一つでしょう。南北首脳会談や落選運動のニュースが危機感を煽ったとは思いますが、この地域に関しては、それらの影響はほとんどなかったと申し上げてよかろうかと思います。むしろ、逆効果になったという方が正確なのかもしれません。
 それでは、市民団体による落選運動とか、南北首脳会談のニュースが総選挙に全く影響を及ぼさなかったのかといえば、そんなことはありません。首都圏を中心にそれなりの影響がありました。重点対象にされた何人かが当選できなかったのは、明らかに落選運動の影響ではないかと思われます。また今回、大幅な世代交代がみられ、当選者の四〇%以上が新人です。これにも落選運動の影響があったと思います。
 しかし、首都圏の二、三%の票の動きが南北首脳会談のニュースによるものなのか、落選運動の成果なのか、それとも単なる新旧交代だったのかということになりますと、よくわかりません。よほど細かい分析をした後でないと区別できないでしょう。しかも、それら三つの相乗効果があっての二、三%ですから、一つ一つの効果はそれほど大きくなかったということになります。例えば、落選運動を展開した市民団体は、同時に棄権反対を強く訴える運動を展開しました。しかし、それにもかかわらず、今回の投票率は史上最低の五七・二%にとどまりました。
 私の見方がややシニカルなのかもしれませんが、総選挙の結果は、国民会議が民主党に看板を塗りかえたり、落選運動が注目されたり、首脳会談開催の合意があったりする以前、すなわち昨年末から今年初め頃にかけて私どもが予想していた数字とみごとに一致しております。民主党が第一党になることはまずあり得ない。しかし、自民連との連立を復活させて、無所属をかき集めれば何とか過半数に到達するのではないかということでした。したがって、結果的には、その後に起きた一連の出来事は相殺されてしまったり、あまり影響しなかったように見えるのです。
 ただし、南北首脳会談については、明らかに国民の大多数がそれを歓迎しております。そのことが投票行動に大きな影響を与えなかったのは、多くの国民が「それとこれとは別である」と冷静に反応したからです。しかし、それでも南北首脳会談のニュースがなければ、与党は大敗していただろうという有力な見方があるのも事実です。念のために、そのことを指摘しておきたいと思います。
 
 
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