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私はこう考える【北朝鮮について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


◆ゆらぐ金正日の足元
 ところで、北朝鮮の最近の国内状況であるが、昨年夏ごろから粛清が進行している。今まで金正日の支持基盤は「軍」、「金日成社会主義青年同盟」、「側近グループ」の三つからなっていた。金日成が死亡してから「新年辞」に替わるものとして、党、軍、青年同盟の「三紙共同社説」で代行してきた。今年の元旦の共同社説から青年同盟の機関紙が落ち「二紙共同社説」となった。
 このように金正日の支持勢力から青年同盟が脱落するという大異変がおきた。昨年秋平壌で十八名の公開銃殺が行われたが、被銃殺者のトップが徐寛煕農業担当書記と三名の青年同盟幹部である。三名の同盟幹部の罪名は「不正行為」といわれていたが、青年同盟は今日に至るも金正日を総書記に推戴していない。そして今回の社説からの脱落だ。同盟内に反金正日勢力が存在していたという極めて重大な政治的事件の可能性がある。
 また、金正日の側近中の側近といわれていた張成沢と青年同盟のトップ崔龍海第一書記の二人が、昨年十月以来二カ月ほど公式の場に姿を見せなかった。最近二人とも現れてきたが、色々の噂が流れている。次に軍総政治局長趙明禄次帥、総参謀長金永春次帥の二人は、九五年十月現職に就任した後、金正日が軍を訪問するときは必ず随行していた。ところが昨年十月以来随行しないときが時々見られるようになっている。なぜなのか。
 北朝鮮の公式文献は昨年十月十日以後金正日に「総書記」と肩書をつけだした。しかし、金正日を総書記に推戴したという報道は沢山あるが、就任したという報道はない。なぜなのか。筆者が北筋からえた情報では、徐寛煕農業担当書記の処刑理由は、金日成の「農村テーゼ」の見直しを主張したもので、批判されても最後まで主張を変えず「反革命分子」として銃殺されたという。
 また、昨年六月頃から改革開放派の局長・副局長クラスが非公開で処刑されている。部下たちは政治犯強制収容所に送られているというものだ。今になってみると総書記推戴運動と上記粛清が同時進行していたことが分かる。金正日総書記推戴運動は反金正日派あぶりだしの権力闘争の手段ではなかったのか。この仮説が正しければ党規約無視の異様な推戴劇の謎が解ける。そして就任などはどうでもよいことになる。
 右記北朝鮮の政治情勢と連動して起きていたのが米空母三隻が昨年九月頃から入れ替わりたち替わり日本周辺に出現したことだ。そして米韓合同演習、米日合同演習を次々と実施した。同じ時期に米軍事筋から北朝鮮で内戦の可能性が高まっているとの情報が流れていた。他方、中国も朝中国境に解放軍数万を結集、軍事演習を実施していたことが、十月十九日のNHKの朝のニュースで明らかになった。
 これは米中が北朝鮮の政治情勢に危機感を抱き、抑止力行使に入ったことを意味する。米中は食糧支援はするが同時に暴発に対する抑止力行使には躊躇しないということだ。翻って昨年の九、十月、わが国は北京で日本人妻「里帰り」の交渉をし、名簿が届かないといって三十四億円の食糧支援を決定している。
 現在北朝鮮には国家主席も党の責任者もいない。三年間国家予算もない。人民武力部長(国防長官)も不在。首相がいるのかどうかも定かでない。金正日は血の粛清を行っている。こんな「国」を相手に日朝交渉再開のためといって、前述のような国辱的譲歩をし、結果として独裁者金正日を支えている。橋本首相、小渕外務大臣、わが国はこんなことをしていて本当に大丈夫なのですか。
 他方、米国は日本人が北朝鮮に「拉致」されていることを承知の上で拉致国家北朝鮮に食糧支援を要請している。これほどわが国を侮辱した話はあるまい。日本の主権が侵害され、人権が蹂躙されても我慢して米国の国益に従え、といっているのだ。これは一九世紀、宗主国が植民地にとった態度と変わらない。
 しかし、そうされても仕方のない理由が日本にあった。一九九四年前期、北朝鮮の核査察拒否をめぐって「第二の朝鮮戦争か」と緊張が高まったとき、米政府は日本政府に朝鮮総聯による日本からの北朝鮮への送金停止を要請してきた。しかし、わが国政府は言を左右してそれに応じなかった。その理由の一つが、在日朝鮮人が北朝鮮に持っていくカネを止めると「人道上問題がある」というものであった。これを口にしたのは大蔵省である。この愚論を支持したのが「朝日」「毎日」両紙である。
 日本にいる総聯関係者の送金で核やミサイル開発がなされていると言うのに「人道上の問題」はないだろう。情けない話であるがこんな無責任国家は植民地扱いされても仕方がないのだ。自主性なき無責任国家は滅びる。
著者プロフィール
佐藤勝巳(さとう かつみ)
1929年、新潟県生まれ。
日朝協会新潟県連事務局長、日本朝鮮研究所事務局長を経て、現在、現代コリア研究所所長。
「救う会」会長。
 
 
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