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私はこう考える【北朝鮮について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


◆注目すべき軍の人事異動
 さて、朝鮮労働党創立五十周年記念日に、金正日は党のトップに就任しなかったが、軍の人事異動だけは発表された。それの意味することはなんなのか。そのことを考えてみたい。人事の内容は次の通りである。
 九五年二月二十五日亡くなった呉振宇人民武力部長(国防長官)の後任に崔光が、新設の人民武力部第一副部長に金光鎮が、総参謀長に金英春が、総政治局長に趙明禄が就任した。
 また、崔光と李乙雪警護総局長(金日成父子の警護担当)の二人は金正日と同じ元帥に昇格。趙明禄、李河逸、金英春の三人を次帥に、金夏圭、玄哲海、金柄律三人を大将に、五人を上将に、四人を中将に、二人を少将に昇格させた。
 この人事が軍内部からみると何を意味するのか、専門外のことで語る知識を持ち合わせていないが、非常に奇異な印象を受けたのは、党のトップが空席で、党中央委員会総会も開催されていないのに、なぜ、軍の人事のみが決定されたのかということだ。
 確かに北朝鮮の憲法百十四条には、国家国防委員会は「重要な軍幹部を任命または解任する」と規定しているが、それはあくまでも形式的なことで、いままでは事前に金日成と朝鮮労働党の承認を必要としたことはいうまでもない。
 これは、軍だけではなく政務院(政府)の方針、予算・決算、人事などすべては党中央委員会の承認(若干の例外も過去にあった)を必要としていた。
 ところが前述のように、党の中央委は開かれていない。党軍事委員会委員長も党総書記も空席なのに、右の軍の人事は、党のどこで論議され決定されたのだろう。
 金日成が生きているときは、金日成にすべての権力があったから、党の肩書を使用できない金正日が、朝鮮人民軍最高司令官・国家国防委員会委員長であっても名ばかりであるから矛盾は起きなかった。しかし、金日成がいなくなると党の肩書を使用できない金正日は、党中央委員会総会、政治局会議、書記局会議にも出席することができない。
 これを朝鮮人民軍の側からみると大変な事態である。金正日が最高司令官などといっても軍歴ゼロ。軍のことなど何も知らない素人である。それでも党総書記に就任し、人民武力部長人事を党で決めてくれればまだしも、それができないとなれば、果てしなく人民武力部長の空席が続くことになる。戦争を職業とする、あるいは国防の長が不在などということはあってはならないことだ。
 このような一般的なこともあるが、冒頭紹介したように朝鮮人民軍は、このままの状態が継続すると軍が戦闘能力を喪失してしまうという極めて切羽詰まった状況に立たせられている。これ以上人民武力部長を空席にして置くことができないという追い詰められた事情が背景にあったことは間違いない。
 そこで軍がとった措置は、憲法百十四条を使って軍の人事を国家国防委員会名で決定したのではないかということだ。
 これは北朝鮮にとっては大事件である。朝鮮労働党の事前承認なしで、軍独自で人事を決定するなど、軍が党の指導から事実上離れたことを意味する。
 なぜ、こんな推論が成立するかといえば、十月十一日付労働新聞一面中央にカラーで掲載された写真だ。党創建記念パレードを参観する金正日最高司令官と崔光人民武力部長、李乙雪警護総局長(三人とも元帥)の三人のみで、他の政治局員は一人も写っていない。
 そのうえに記念集会の基調報告者が崔光人民武力部長であった。このように軍事色が急速に前面にでてきている。これに続いて十月十二日付労働新聞論説「信念と義理はわれわれの生命だ」は「革命家は銃を同志だと思っている。志を同じくした同志の中には背反者が出ることもあるが、銃は背反を知らない。銃は、いつでも射てば主人の意思に従って敵をとらえるのであり……自らの革命的基礎、政治的生命を守ってくれる銃こそ革命家には言葉を語らぬ同志となる」ときわめて注目すべき主張を掲載した。
 労働新聞が平時において、こんなことをいったのはこれが最初ではないかと思われる。この論説は、革命の背反者を射つぞ、とも読めるし、軍のみが信用できるとも読める。多分、両方だと思われるが、異常なものを感じるのは筆者一人ではないと思う。
 
 
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