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私はこう考える【北朝鮮について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


◆米朝会談のための切り札
 そうだとすれば、北朝鮮は一枚の「核兵器カード」を三回に分けて使用しようとしていることになる。まず未申告の二つの「軍事施設」は南北会談用のカードとして切り離されており、残りの七つの核施設が米朝会談用のカードとして使用されているが、それも二段階に分けられているのである。つまり、第一段階が「保障措置の継続性」の確認用であり、第二段階が第三回米朝会談用である。もちろん、後者は交渉が妥結するまで公開されることはないだろう。
 今回、北朝鮮が放射化学研究所(再処理施設)での「一部の重要な査察」や使用済み燃料棒のサンプル調査を拒絶したのは、一部はそれによって核兵器開発の事実やその状況が暴露されるからであるが、一部はそれらを第三回米朝会談のためのカードとして温存しなければならないからである。燃料棒のサンプル調査が実施されれば、北朝鮮は第三回米朝会談を待たずして、そのためのカードを失ってしまうのである。
 また、四月二八日、北朝鮮外務省が声明を発表し、「休戦協定を平和協定に代え、現休戦機関に代わる平和保障体系を樹立する」ための交渉をアメリカに呼び掛けたのも、第三回米朝会談と関連する動きである。それとともに、北朝鮮はパトリオット・ミサイルやアパッチ・ヘリコプター大隊の韓国配備が休戦協定に違反し、休戦監視機関を麻痺させるものであると非難し、板門店の軍事休戦委員会からの北朝鮮代表の撤収を通告した。休戦協定が「紙切れ」になった以上、それに代わるものが必要であるとのキャンペーンを開始したのである。
 結論的に言って、北朝鮮が使用済み燃料棒のサンプル調査を拒絶したり、軍事休戦委員会からの撤収を通告したりするのは、アメリカとの対話意欲が欠如しているからではない。まして、経済制裁を甘受しようとするものでもない。それはむしろ第三回米朝会談にかけた期待の大きさを反映するものである。言い換えれば、それらは少しでも有利な態勢で米朝会談に臨もうとする必死の努力の一環にほかならないのである。
 しかし、第三回米朝高級会談が開催されても、交渉の長期化は避けられそうもない。なぜならば、米朝関係正常化、米朝平和協定など、この会談を通じて北朝鮮が求めているものが、一般に予想されているよりもはるかに大きいからである。しかも、北朝鮮はそれらの目標が韓国や日本の「頭越し」に「一括妥結」方式で達成されることを要求している。経済制裁は避けられても、交渉妥結は容易ではない。
(五月一一日)
著者プロフィール
小此木 政夫 (おこのぎ まさお)
1945年生まれ。
慶應義塾大学大学院博士課程修了。
韓国・延世大学校留学、米国・ハワイ大学、ジョージワシントン大学客員研究員などを経て、現在、慶應義塾大学教授。
 
 
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