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私はこう考える【北朝鮮について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1993年5月11−18日 『世界週報』
手詰まりを打開するカギは米朝高級接触
小此木政夫
◆政策対立か二重政策か −「北」に対する二つの見方
 四月九、一〇の両日、ソウルのプレスセンターで、日米韓三カ国の研究者を集めた国際シンポジウム(ソウル新聞主催・KBS後援)が開催された。アメリカからは、チャーマース・ジョンソン(カリフォルニア大・サンディエゴ校)、セリグ・ハリソン(カーネギー平和財団)、カーター・エッカート(ハーバード大)、エドワード・リンカーン(ブルッキングス研究所)など、著名な学者が参加した。日本からは、筆者のほかに岩島久夫南山大学教授が参加した。
 経済問題や国際情勢も活発に議論されたが、最近の緊迫した情勢の下で、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)のNPT(核拡散防止条約)脱退問題に関心が集まることは避けられなかった。とりわけ、ハト派の論客であるハリソン氏は北朝鮮の指導部内に核兵器開発を継続すべきか否かをめぐって政策対立が増大している、との見解を発表して注目を浴びた。そのような見解を基礎に、日米韓三カ国が既存の政策を根本的に変更すれば、北朝鮮に核兵器開発を断念させることができる(核兵器開発放棄の政策が選択される)と主張したのである。
 したがって、ハリソン氏が提出した処方箋は大胆であった。米国のクリストファー国務長官と北朝鮮の金永南外相の高級会談を実現し、北朝鮮の核兵器開発放棄と米朝関係正常化(経済・政治関係、軍備管理、在韓米軍撤退)を並行的に議論し、一括して取引することを提案したのである。韓国政府が米朝交渉に難色を示すのであれば、韓国を含めた三者会談が可能であると考えているようであった。ハリソン氏はまた、朝鮮半島の非核地帯化に関する多国間合意の有効性を強調した。他方、北朝鮮に対する制裁は不必要なだけでなく、穏健派を窮地に追い込むものであるとされた。
 もちろん、韓国内にもこれに類似する主張が存在しないわけではない。むしろ、最近では、北朝鮮内で穏健派と強硬派が対立しているとの見解が流行している。また、民族的な立場から、北朝鮮に経済協力を与えて、核兵器開発を断念させようとの主張も少なくない。しかし、会議の席上では、安秉俊教授(延世大学)がこれに厳しく反論した。北朝鮮のような全体主義国家で権力と政策を分離することは危険であり、権力闘争や政策対立は存在しないというのである。安教授は政策対立とされるものを「二重政策」(二つの目標の同時追求)として説明した。
 このような論争は一見してアカデミック(机上の空論)のようであるが、北朝鮮のNPT脱退に対する処方箋を描く場合に、政策的な相違となって現れてくる。「二重政策」的な理解が正しければ、北朝鮮は核兵器開発と経済再建の双方を必要としているのだから、その一方を放棄させることは、不可能ではないまでも決して容易ではない。
 ハリソン氏が主張するほどの代価を与えれば取引は可能だろうが、取り扱われる問題の重要性からみて、交渉の長期化は避けられない。そうなれば、それが核兵器開発のための時間稼ぎになるかもしれない。また、早急な決着のために大幅に譲歩すれば、それが将来の北朝鮮政策の基礎を崩すだろう。したがって、やはり北朝鮮のNPT復帰が実質的な交渉の先行条件でなければならないし、そのためにはムチの政策(制裁措置)も必要であるということになるのである。
 
 
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