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私はこう考える【北朝鮮について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


◆難民も出なければ暴動も起きない体制
 政治体制ということでいえば、それほど大きな問題があるわけではない。もし、彼が早々に党総書記に就任していれば、経済的な破綻から食糧危機までの責任を全部負わなくてはならなくなり、政治は不安定になったはずだ。しかし、現在、経済危機は政治危機に結びついていない。
 いろいろな情報が行き交うなかで、飢餓の問題はポーズではないか、という人もいるが、そんなことはない。相当に困っている。部分的にしろ餓死者が出ているというのも本当だろう。数字だけでいえば、年間で二〇〇万トンぐらいは足りないという現状だ。それを中国あるいはその他の国から持ってこようと、一生懸命努力している。
 しかし、一つの政権が崩壊するというのは、食糧危機それ自体のために崩壊するわけではなく、食糧危機のために統治能力を失って崩壊するのだ。われわれが、飢餓とか食糧援助というとすぐに思い出すのはアフリカのことだが、たしかにそこでは大量の難民が発生し、その移動が行われる。暴動も起こる。そしてその過程で政権が転覆する。
 しかし、北朝鮮にはこうした状況は発生しない。つまり、大量の難民が発生するとか、暴動が起こるということはないのだ。管理された飢餓、これが北朝鮮の状況である。
 また、亡命した黄長Y氏が言っていたが、北朝鮮の体制は、封建独裁と軍事政権、それに社会主義が混じった専制体制だ。しかも一人独裁だから指導部内で権力闘争が起こるということもない。国民は静かに飢えるだけ。それほど指導部はしっかりと国民を管理している。その指導部と国民とを外部から分離することは不可能だ。これは戦争中の日本を考えてみればわかるが、それよりももっと極端な状況だろう。
 あの国の国民の政治意識を考えるうえで重要なことは、かれらには選択肢がないということだ。北朝鮮の東側と西側は海、南側は地雷原だ。北側でわずかに中国とつながっているが、そこにも鴨緑江と豆満江という河が流れている。この封鎖された地域に二三〇〇万人の国民が住んでいる。
 そしてかれらは生まれた時から特異なイデオロギーを注ぎ込まれる。情報が統制されているだけでなく、暴力的な装置も、秘密警察から収容所までしっかりと用意されている。アメリカや韓国がいつ攻めて来るかわからない、といった危機感も誇張して植えつけられている。これだけ国民全体がマインドコントロールされていれば、反乱・暴動など考えられない。
 それどころか、社会主義を捨てれば、もっと悲惨になると信じている。「アメリカ人や韓国人の奴隷になる」と。だから、北朝鮮の政治体制は安定している。
 そうした体制があることを前提として、北朝鮮の国民を救うために食糧支援をするのであれば、相当部分が軍隊とか党の幹部に回されるということを覚悟したうえで行わなくてはならない。すべてがコントロールされているわけだから、外国から入って来る食糧にかんしても権力的な配分が行われていると考えるのが常識だろう。最近ではずいぶんモニターもやっていて、直接国民に渡る部分は増えてきているとは思うが、外部から、配分を調整することなど不可能だ。
 それよりも、支援する場合に、それを交渉の駆け引きの手段として利するのかどうかという問題がある。つまり、人道的な支援なのか、政策的な支援なのかということだ。
 
 
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