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産経新聞朝刊 2003年1月19日
主張 対北朝鮮外交 各国は強い姿勢を崩すな
 
 北朝鮮による核をちらつかせた瀬戸際外交、脅迫外交がとどまるところを知らない。これに対し当初、自ら作る核危機を材料に見返りを求めるような交渉・取引には一切応じないという強硬姿勢を見せていた米国が、ここへきて「大胆な提案」という路線を打ち出してきた。これまでのところでは北朝鮮の作戦勝ちの様相だが、最終的に「無法国家」の脅しに屈するような結果になってはならない。
 米国の“姿勢軟化”は、米国が当面はイラク問題に集中したいという事情のほか、韓国をはじめとする周辺国が米国に対話を強く求め、ブッシュ米政権内の強硬派が一時的に手を控えた結果と見ることができるだろう。
 しかし、米政権の基本方針は変わっていない。すなわち、北朝鮮の核武装化、大量破壊兵器の開発、拡散は絶対に許さないという政策だ。伝えられる新たな米朝合意の枠組み構想も北の徹底的な核解除が基本だ。
 無法な独裁国家・北朝鮮に大量破壊兵器の保有を許せば、日本、韓国をはじめとする周辺諸国に直接的で深刻な脅威となるばかりか、それらの兵器が国際テロリストの手に渡れば、国際社会への脅威に直結する。
 北朝鮮の友好国、中露も「朝鮮半島の非核化」では一致している。日米韓中露は、北朝鮮に関して異なる国益、利害を抱えてはいるが、北の核武装化は絶対に許さないという目的の一点では一致できるはずだ。
 その目的のためには、北朝鮮がいかに脅威かの認識を各国が共有することが大事だ。いま米露をはじめ各国がそれぞれ特使を派遣し、協議中だが、その成果に期待したい。共通の脅威認識からこそ最善の対策が生まれる。また、日本としてはまず日米の結束を重視すべきだ。そうすれば日米韓の結束も強まる。懸念された盧武鉉次期大統領の姿勢もその方向にあるようだ。
 北朝鮮は青森冬季アジア大会に参加を申し込んできたように、本音では国際的孤立化を恐れ、日本とのパイプ、援助の道を求めている。
 問題解決には時間がかかるかもしれないが、基本方針で揺れず、断固たる姿勢を堅持しつつ、拉致事件の解決を犠牲にすることなく、忍耐強く対北外交を進めるべきである。
 
 
 
 
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