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読売新聞朝刊 1992年5月12日
日朝、あす13日から第7回国交正常化交渉 「核」「償い」で激論も
 
 日本と朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)との第七回国交正常化交渉が十三日から北京で行われる。日本側は、北朝鮮の核開発疑惑問題を取り上げる方針だが、北朝鮮側は「核問題は解決した」として、植民地時代のいわゆる「償い」問題の前進を求めてくることが予想される。日韓併合条約の有効性など日朝間の基本的問題も論議されるが、双方の見解の隔たりは大きく、交渉の行方は険しそうだ。
 「償い」問題について、北朝鮮は、昨年十一月の第五回交渉から「戦後四十五年の補償」や交戦関係を前提とした「賠償」という表現を使わなくなった。従軍慰安婦問題も絡めて、「過去に日本が朝鮮人民に与えた人的・物的被害の補償」を求めている。
 これに対し、日本側は、「補償ではなく財産・請求権という形で議論すべきだ」と指摘したうえで、被害を裏付ける客観的証拠と法的根拠が必要と、主張している。今回の交渉でも、被害を示す資料の提出や法的根拠をめぐって、議論の応酬になりそうだ。
       《前回の日朝交渉で明確になった主張の対立点》
 ◇日本
 〈核〉
▽核兵器開発に関する国際社会の懸念払しょくが重要。この問題の解決なくして正常化は困難
▽核再処理施設放棄を求める
 〈賠償〉
▽賠償、補償ではなく、財産・請求権の形で議論すべきだ
▽宮沢首相が従軍慰安婦問題で謝罪したが、これは朝鮮半島すべての人々に対するもの
▽立証責任は北朝鮮にある。請求の根拠と資料を示し、実定法上の根拠を説明してほしい
 〈条約〉
▽日韓併合条約は一般国際法上もはや無効だが、当時は有効
▽(朝鮮の分離・独立を承認した)サンフランシスコ条約は、日朝関係でも重要な文書だ
▽日韓関係との整合性を重視
▽「支配権」は不要。主権の尊重、相互不可侵、内政不干渉、紛争の平和的解決、を盛り込む
 ◇北朝鮮
 〈核〉
▽核問題はすべて解決した
▽日本は必要以上のプルトニウムを貯蔵し、核兵器を開発しようとしている
 〈賠償〉
▽謝罪し応分に補償すべきだ
▽南朝鮮にも従軍慰安婦と強制連行の被害者について補償しなければならない
▽実定法上の根拠を求める主張は不当。過去朝鮮人民に与えた膨大な被害についての資料を日本側もこの場に出すべきだ
 〈条約〉
▽日韓併合条約は朝鮮を武力で侵略したもので当初から無効
▽サンフランシスコ条約以前に北朝鮮は建国しており、締約国でもないから無関係
▽日韓関係を言うことは、二つの朝鮮に分断する試み
▽「双方は支配権を追求しない」ことを条約に盛り込みたい
 
 
 
 
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