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私はこう考える【北朝鮮について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


朝日新聞朝刊 2002年9月18日
悲しい拉致の結末、変化促す正常化交渉を 日朝首脳会談(社説)
 
 痛ましい結末が明らかにされた。小泉純一郎首相との会談で、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の金正日総書記が、多数の日本人を国家機関が拉致したことを認めた。北朝鮮側は5人が生存し、8人が死亡したと伝えた。
 金総書記はそのことについて謝罪し、二度と起こさないと約束した。しかし、自らの意思に反して北朝鮮に連れ去られ、帰ることができなかった人たちとその家族の無念さを思うと、いたたまれない。
 国家が隣国の国民をゆえなく誘拐する行為は、テロ行為に等しく、とても許すことは出来ない。多くの被害者が亡くなったことに、家族の一人は「地獄のような残酷な審判を受けた」と語った。想像を絶する耐え難さに違いない。
 
 拉致の徹底解明を
 
 一方で、北朝鮮が「拉致の事実はない」と言っていたこれまでの態度を百八十度変えたことは、大きな変化が起こりつつあることを印象づけた。この機に、政府は事実関係の徹底解明とともに、北朝鮮の変化を確固たるものにするよう促すべきだ。
 日朝両国の首脳は今回の会談で、国交正常化に向けた交渉の再開に合意した。小泉首相が言うように、日朝関係の改善は、日本だけでなく北東アジア地域の平和と安定を実現するために不可欠である。
 拉致問題が極めて重大なことは言うまでもないが、それを理由に対北朝鮮制裁などで、正常化交渉の窓口を閉ざすべきではない。そうした問題を二度と起こさせないためにも交渉に入るという首相の決断を、植民地支配に対する謝罪表明とともに支持する。
 小泉首相との会談で金総書記は自ら「拉致」という言葉を使った。特殊機関の犯罪であることを認め、責任者を処罰したとも述べた。しかし、これでは不十分だ。
 個々の被害者はいつ、いかなる手段で拉致されたのか。北朝鮮に連れてこられた後の生活はどうだったのか、なぜ死亡したのかなどは、明らかにされていない。
 公表された拉致被害者の中には、日本政府が調査を依頼していない人も含まれていた。まだ他にも拉致被害者がいるとも考えられる。北朝鮮には、さらに拉致の全容を明らかにするよう迫るべきである。
 生存が確認された5人については、早急に家族の面会を実現すべきだ。本人が希望するなら帰国は当然だ。
 金総書記のいう「特殊機関」の説明もなされていない。いかなる組織で、どういう活動をしていたのか。処分の対象者やその内容も不明だ。
 また、金総書記は「特殊機関の一部が妄動主義、英雄主義に走って拉致をした」と述べ、組織的な犯罪を否定する説明をした。しかし、この時期、北朝鮮はラングーンでの韓国要人の爆弾テロ事件など、いくつかのテロ行為に関与したと言われる。一部の跳ね上がり分子による犯行という説明をそのまま信じることは出来ない。
 拉致問題とともに日本にとって重要なことは、北朝鮮と普通の会話ができる関係をつくることである。
 隣国が、いかなる政治意思を持っているのか、どういう経済状態にあるのか、外交や安全保障政策で何をしようとしているのかが全くわからないという現状は、不自然であり不気味でさえある。
 そればかりではない。北朝鮮は国際社会のルールをきちんと守らず核兵器を開発している疑いがもたれている。日本上空を通過するミサイル実験もした。目的のはっきりしない不審船がしばしば現れた。
 拉致問題で明らかなように、北朝鮮は日本国民にとって危険な国でさえある。一日も早く、このような不安定で危なっかしい関係を解消しなくてはならない。
 
 地域の安定のために
 
 その意味で、公表された「日朝平壌宣言」には一定の前進が見られる。核兵器開発疑惑での国際的枠組みの順守や、ミサイル開発問題での発射実験の無期限の停止などは、日本の主張をはねつけていた従来の対応からは大きく変わった。
 補償問題について、経済協力方式での合意は今後の正常化交渉の土台となりうるものだ。政府はこの好機を生かして、北朝鮮とまともな関係をつくるべきだ。
 このことは、日本だけの問題ではない。北東アジア地域、さらには世界全体の緊張緩和と安定化にもつながろう。
 もとより、一度の首脳会談ですべてが解決するわけではない。残念ながら、北朝鮮は国際社会との約束事をきちんと守り、実行した実績が少ない。金総書記の韓国訪問などを約束した2000年の南北首脳会談などを思い起こせば、合意文書ができたからと言って、安心はできない。
 国際社会での約束事を守らないことが、いかなる結果を生むかは、北朝鮮自身がよくわかっているはずである。首脳会談で、いくらほほ笑んでみせても、約束をほごにすれば、様々な外交的困難を倍加させ、国内の一層の混乱や国民の疲弊を招くことは、歴史が証明している。
 日本政府も核疑惑やミサイル問題などでの合意内容を守りさらに進展させるための努力をすべきだ。今後も、米国や韓国と協調することは欠かせない。さらには、北朝鮮と関係の深い中国やロシアとも話し合っていくことが重要である。
 正常化交渉の再開は、スタートでしかない。拉致問題を含め国交が結ばれるまでに克服しなければならない課題は気が遠くなるほど膨大である。しかし、日朝の対話を継続することが、北朝鮮の経済体制などの改革を後押しする可能性は大きい。
 やっと開き始めた扉を、今度こそ閉めさせないようにしなければならない。
 
 
 
 
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