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私はこう考える【北朝鮮について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


朝日新聞朝刊 2002年9月16日
日朝対話、横たわる難題 首脳会談を前に未解決問題の経緯と現状
 
 小泉純一郎首相が17日、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)を訪れ、金正日総書記との歴史的な初会談に臨む。北朝鮮によるものと警察庁がみている日本人拉致疑惑(8件11人)と、戦前の日本による朝鮮半島植民地支配をめぐる「過去の清算」。対話に向かう両国の間に横たわる未解決問題の、経緯と現状を整理した。
 
 強制連行 民族としての被害主張
 
 日本は植民地や占領地の人々を強制的に連行し、過酷な労働を強いた。
 海野福寿・明治大名誉教授の調査では、朝鮮半島から半島の外へ強制的に移動させられたのは81万人から94万人。また、朝鮮半島の中でも319万人以上が移動を強いられたという。
 日本への朝鮮人労務動員は、39年以降の「募集」、42年以降の「官による斡旋(あっせん)」、44年以降の「徴用」の3段階に区分される。中国東北部やサハリンへの事実上の連行も含めれば、さらに増えるという。
 44年7月の内務省の報告書や42年8月の厚生省での会議録には、こうした強制連行の実態について、日本政府自らが「拉致」と認めている記述もある。
 北朝鮮政府は強制連行や強制労働を「民族としての被害」ととらえている。このため、被害者を南北の出身地で分けていない。被害者の故郷は南朝鮮(現韓国)に多いが、44年以降は平安道、咸鏡道など北朝鮮からの連行が増える。兵庫県内の造船所や製鉄所などに徴用された朝鮮人の名簿(44、45年)では、6995人中3787人の出身地が北朝鮮だった。
 
 元慰安婦 「女性基金」を批判
 
 旧日本軍は植民地や占領地の女性を慰安婦とし、名誉と尊厳を深く傷つけた。北朝鮮政府が確認した同国内の元慰安婦は218人。47人が公開の場で体験を証言したが、そのうち21人がすでに死亡している。
 日本政府は、元慰安婦のような戦時性暴力被害者に対し、国費で補償することを拒んでいる。その一方で、95年に村山内閣のもとで「女性のためのアジア平和国民基金」(アジア女性基金)を設立した。
 国民からの募金によって、1人に200万円の「償い金」を支払うしくみで、韓国、台湾、フィリピンなどの元慰安婦の一部に支給された。
 北朝鮮政府はアジア女性基金を「国家の責任を回避するもの」と厳しく批判しており、国交が正常化しても、この方式を受け入れないと見られる。
 北朝鮮では、元慰安婦への生活支援が95年から始まったという。朴永心さん(80)は「この国では医療も住居も保障されている。哀れみはいらない。日帝(日本帝国主義)の犯罪なのだから、日本の代表が朝鮮民族に謝るべきだ」と訴えている。
 
 被爆者 平均75歳、医師派遣要求
 
 45年8月、強制連行などのため広島、長崎にいた多くの朝鮮人は原爆で死傷した。その被害者数は、同年末の内務省の調べで広島で7万人、長崎で3万人。
 合わせて10万人のうち約5万人が爆死し、生き残った約5万人のうち7千人が日本に残り、4万3千人が韓国と北朝鮮に帰国したと推定されている。
 北朝鮮の「反核平和のための被爆者協会」は今年8月、平壌を訪れた朝日新聞記者に「北朝鮮で確認されている被爆者は1955人、平均年齢は75歳以上」と明らかにした。日本国内の被爆者の平均年齢より高いのは、被爆時に徴用されていた成人男子が多かったためとみられる。
 朴文淑・同協会副会長(59)は長崎で被爆した。「日本に渡って治療を受ければいいと日本政府はいうが、病弱で高齢の被爆者には困難」と語り、専門医の派遣や原爆病院の建設を求めている。
 
 補償 民族への謝罪を求める
 
 今年5月、平壌で「日本の過去の清算」を求める国際会議が開かれ、韓国、フィリピン、台湾などの元慰安婦や強制連行の被害者らが参加した。
 各国の出席者は「賠償問題は日韓条約などで解決済み」とする日本政府の姿勢を厳しく批判。「経済協力方式」をとって個人への補償を置き去りにした65年の日韓条約・日韓請求権協定の見直しを訴えた。
 北朝鮮当局者はそれまで「日本政府による朝鮮民族・国家への謝罪と賠償」を求める立場から、「個人補償は求めない」と語っていた。しかし、この国際会議では、アジアの被害者の個人補償請求運動を支持する発言をし、注目された。
 北朝鮮側の補償対策委員会の洪善玉・委員長も、日本の野党3党が国会に提出した元慰安婦への補償法案を「法的責任を日本政府に認めさせる礎になりうる」と評価した。
 日本側団長を務めた土屋公献・元日弁連会長は、日韓条約の締結当時、韓国でも激しい反対運動があったことを指摘。アジア各国の元慰安婦や強制連行の被害者が、日本政府を相手に次々と訴訟を起こしていることからも、「日韓方式が根本的な問題の解決にならないことは明らかだ」と話す。
 このほか、在日朝鮮人に対する民族的差別政策の撤廃、その法的地位と共和国(北朝鮮)の国籍を認めることなども、北朝鮮側が一貫して主張してきたことだ。
 
 日本人拉致疑惑 警察庁が被害者とみている人たち
 
 東京の久米裕さん 77年9月失踪 船に引き渡された?
 
 東京在住の警備員だった久米裕さん(当時52)は77年9月19日、石川県能都町の宇出津(うしつ)海岸で行方不明になった。
 県警は翌日、同じ旅館に泊まっていた在日朝鮮人の男性を出入国管理令違反などの疑いで逮捕した。男性は「北朝鮮工作員から45〜50歳の独身の日本人を拉致するよう指示された。19日夜、海岸に迎えにきた北朝鮮の船に久米さんを引き渡した」と供述したという。
 男性はその後、証拠不十分で起訴猶予となり、釈放された。しかし警察は男性宅から乱数表や暗号解読表などを押収し、拉致の疑いがあると判断した。
 
 新潟の横田めぐみさん 77年11月失踪 下校中に消息絶つ
 
 中学1年生だった横田めぐみさん(当時13)は77年11月15日午後6時半ごろ、バドミントンの部活動を終え下校中、自宅まで約250メートルの場所で友人と別れた後、消息を絶った。新潟中央署は「犯罪に巻き込まれた恐れがある」として公開捜査に踏み切った。
 97年初め、韓国に亡命した元北朝鮮工作員が「北朝鮮で似た女性を見た」と証言していることが、韓国政府から外務省、警察庁に非公式に伝わり、拉致された疑いが浮上した。
 父の滋さん(69)らは同年3月、他の行方不明者の家族とともに「『北朝鮮による拉致』被害者家族連絡会」を結成した。
 
 東京都内の女性 78年6月失踪 「李恩恵」の可能性
 
 78年6月ごろ、東京都豊島区の飲食店勤務の女性(当時22)=埼玉県出身=がアパートを出たままいなくなった。家族は1カ月後に警察に捜索願を出した。
 埼玉県警は91年5月、大韓航空機爆破事件(87年11月)で死刑判決を受けた金賢姫・元死刑囚に日本語を教えたとされる李恩恵(リウネ)が、この失踪(しっそう)女性である可能性が高い、と発表した。
 金元死刑囚は、自分に日本語を教えた女性が自らを「ちとせ」と話していたと証言。埼玉県出身の女性も飲食店で「ちとせ」と名乗っていたという。身長165センチ、きれいな歯並びといった身体的な特徴や言葉遣いのくせ、家族関係などが女性と一致した、というのが根拠とされている。
 
 福井の地村保志さん・浜本富貴恵さん 78年7月失踪 挙式の4カ月前に
 
 福井県小浜市の大工見習地村保志さん(当時23)と衣料品店員浜本富貴恵さん(同)は78年7月7日午後8時50分ごろ、市内のレストランを一緒に出たのを目撃された後、行方が分からなくなった。地村さんの乗った車は日本海を望む展望台付近にあった。
 1週間前に結納を交わしたばかり。11月には挙式予定だった。家族からの捜索願を受け、福井県警は「事件に巻き込まれた可能性もある」と捜査本部を設置したが、捜査は行き詰まった。
 
 新潟の蓮池薫さん・奥土祐木子さん 78年7月失踪 書きかけ論文残し
 
 新潟県柏崎市の中央大学3年蓮池薫(はすいけかおる)さん(当時20)は夏休みで帰省中の78年7月31日夕、「ちょっと出かけてくる」と自転車で家を出たまま行方がわからなくなった。待ち合わせていたとみられる美容師の奥土祐木子(おくどゆきこ)さん(同22)も消息を絶った。
 当初は駆け落ちなどとも言われ、新潟県警は家出人として捜査。しかし財布や免許証を持っておらず、書きかけの論文が残されているなど、家出などが考えられるような動機はなかった。
 
 鹿児島の市川修一さん・増元るみ子さん 78年8月失踪 浜でサンダル発見
 
 78年8月12日夕、鹿児島県・吹上浜に「夕日を見に行く」と行ったきり、電電公社(現NTT)職員だった市川修一さん(当時23)は、交際相手の事務員増元るみ子さん(同24)とともに行方不明になった。
 浜辺で市川さんのサンダルの片方が発見された。県警は捜査員延べ千人を投入したが、2人は見つからなかった。
 95年、テレビ局のディレクターが北朝鮮工作員を名乗る男と韓国で会い、市川さんの写真を見せたところ、「北朝鮮でそっくりの人物を見た」と語った。
 
 大阪の原敕晁さん 80年6月失踪 連行供述の情報も
 
 大阪で調理師をしていた原敕晁(ただあき)さん(当時43)は80年6月、宮崎市内のホテルから青島海岸に出た後、行方不明になった。
 85年、韓国で摘発された北朝鮮の元工作員、辛光洙(シングァンス)・元死刑囚が、韓国当局の調べに「(原さんを)海岸から北朝鮮の工作船で連れ出した」と供述したとされる。原さん名義の旅券を使って外国へ渡っていたことも明らかになった。
 日本政府は韓国に事情聴取させるよう求めたが、韓国政府は北朝鮮へ身柄を送還した。警視庁は今年8月、旅券法違反などの容疑で元死刑囚の逮捕状をとった。
 
 神戸の有本恵子さん 83年7月失踪 留学から帰国せず
 
 約1年間の英国留学を終え、帰国予定だった神戸市出身の有本恵子さん(当時23)が、83年10月、デンマーク・コペンハーゲンからの手紙を最後に消息を絶った。
 今年3月、よど号をハイジャックした赤軍派メンバーの元妻が「恵子さん拉致にかかわった」と証言。83年7月ごろに北朝鮮へ拉致したとされる。警察庁は今年3月、8件目の拉致被害事件として認定、警視庁は捜査本部を設置した。
 スペインで行方不明になった日本人男性から88年9月、北海道の実家に手紙が届き、その中に「恵子さんと北朝鮮で暮らしている」とあった。
 
 
 
 
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