朝日新聞朝刊 2002年8月27日
対話の継続はいいが 日朝協議(社説)
平壌で開かれていた日本と朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の局長級協議は、諸課題の解決に向けて、「政治的意思をもって取り組むことが重要」とした共同発表文をまとめて終わった。
対話継続では合意したものの、拉致問題をはじめ具体的な進展はないままだ。
今回の協議で、北朝鮮は関係改善に前向きの様子は見せた。1カ月をめどとする国交正常化交渉の再開に向けた努力を約束し、局長級協議の前後には、洪成南首相や姜錫柱・第1外務次官も応対した。
もちろん、表面的な変化が見えても、内実を伴わなければ評価はできない。こうした一見柔軟な姿勢も、北朝鮮が最重視する米国との協議をにらんだ、取りあえずの戦術的対応に過ぎないとも見える。
北朝鮮には、誠意は具体的な行動で示すべきだと改めて求めたい。
日本側は今回の協議で、拉致問題や核開発、ミサイル問題などすべての懸案をテーブルに載せ、北朝鮮側がどこまで本気で取り組もうとするのかを計ろうとした。国際社会の力で問題の打開を図ろうとする意欲も示した。南北朝鮮と日中米ロの6者を想定した協議の提案は、その表れだ。
いま、日本政府が取りうる選択肢は、こうしたアプローチしかないのかもしれない。拉致問題はゆるがせにしてはならないが、一点だけ先行して解決できるとは考えにくいのが、現状でもある。そもそも、日朝関係の打開は、局長級の話し合いで一気に進むものでもなかろう。
6者協議の構想は、北朝鮮が乗ってくる気配がないため、現状では実現性は乏しいものの、各国の協力なしで朝鮮半島の安定化は図れないだろう。日朝関係進展のためにも、北朝鮮の変化を促す国際的な枠組みを展望するのは必要なことだ。
だが、方向はよくても、言いっぱなしでは事態は変わらない。日本政府は、各国との個別の関係をより大きな枠組みの中でとらえ直し、縦割りではない外交戦略づくりを急ぐ必要がある。
ロシアといえば北方領土問題に集中しがちで、中国では靖国神社参拝問題で首相訪問もかなわず、米国といえばイラク攻撃の場合にどんな支援ができるかで頭がいっぱい。こんな状態では、6者協議の提案も上滑りの印象をぬぐえない。
27日からは次官級の日米戦略対話が始まり、9月には日米韓3国政府による「監督・調整グループ(TCOG)」会合も決まるなど、東アジア情勢をめぐる外交日程は目白押しだ。
北朝鮮の対外姿勢の変化は米ブッシュ政権の強硬路線が引き出したとするのが日本政府の見方だが、その時々の米国の路線に沿うだけが日本の役割ではあるまい。
日本の基本姿勢をしっかり定め、国民にきちんと示すべきである。「骨太の方針」が必要なのは経済ばかりではない。
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