日本財団 図書館

共通ヘッダを読みとばす


Top > 社会科学 > 政治 > 成果物情報

私はこう考える【北朝鮮について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


朝日新聞朝刊 1997年11月10日
まだ来ぬ人々を思う(社説)
 
 いわゆる「日本人妻」の第一陣として、十五人の里帰りが実現した。
 多くが、三十八年前に始まった朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)への集団帰還事業によって、在日朝鮮人の夫や家族とともに日本海を渡った人々である。
 若い人でも五十代の半ば、日本語がおぼつかない人がほとんどだ。みずから選んだ道とはいえ、このように長い間、里帰りさえできないという苦痛を、当時は想像だにしなかったことだろう。
 一行は、きょうから親族との再会や墓参のために故郷を訪れる。望郷の思いを果たすことは、失った歳月の重さを知ることでもあろう。彼女たちの祖国での短い日々を静かに見守りたいと思う。
 大切なのは、第一陣の里帰りを通じて浮き彫りになった日本と北朝鮮の現実を、直視することである。
 十五人のほぼ半数は、日本名が公表されなかった。日本の親族側の意向によるという。喜んで迎える親族や友人がいる一方で、打診を受けた親族のなかには、苦悩の末に面会を断った人もいる。
 結婚を反対されながら北朝鮮に渡ったことなど、それぞれ複雑な事情があろう。時の流れは血縁感情を薄れさせもする。
 だが、親族の心を揺さぶっているのはそればかりではあるまい。「北朝鮮に渡った妹がいることが知れれば、仕事に差し支える」と語った人もいた。
 いまなお日本社会に根深い偏見、差別感情への恐れが見てとれる。
 日本人拉致疑惑からミサイル開発まで、北朝鮮が日本人の心を遠ざけている問題は余りにも多い。だがそれは、この社会のなかの朝鮮の人びとに対する偏見を許す理由とはならない。
 第一陣は、約二千人といわれる日本人配偶者のごく一部に過ぎない。夫の社会的な地位が高い人や経済的に恵まれた人が多いことは、経歴や発言からもうかがえる。北朝鮮批判に使われないような人々が優先されたのであろう。
 消息が途絶えた大半の日本人妻や、同じように北朝鮮に渡った日本籍の男性たちは、経済、食糧危機にあえぐ全体主義の国でいまどうしているのか。かれらが望めば、一時帰国は実現するのだろうか。いま知りたいのはそのことだ。
 北朝鮮側は、日本訪問を希望する日本人配偶者の調査に同意したが、結果はいまだに伝えられていない。第二陣以降の里帰り計画も具体化されないままだ。
 わずかながら扉が開いた里帰りは、金正日氏の労働党総書記就任と前後して動き出した対日外交攻勢の一環とみるべきだろう。北朝鮮は、日本からの本格的な経済支援を得るため、国交正常化交渉に積極的な姿勢を示している。
 だが、正常化交渉は、南北対話や米朝関係、さらには四者会談など、朝鮮半島をめぐる国際社会の動きと歩調をあわせて進めなければならない。
 日本人配偶者の一時帰国が回を重ね、規模を拡大していけば、日朝関係の雰囲気の改善につながる。
 日本政府は、この問題について、米国や中国との、あるいは国連の場をつうじた外交努力を強めるべきだ。
 今週訪朝する与党三党の代表団も、環境づくりにつとめてもらいたい。
 日朝の関係が改善されることは、朝鮮半島の緊張緩和を助ける。それが、ひるがえって人道問題を解決する道を広げる。そうした連鎖をつくりたい。
 
 
 
 
※ この記事は、著者と発行元の許諾を得て転載したものです。著者と発行元に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど、著者と発行元の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。








サイトに関するご意見・ご質問・お問合せ   サイトマップ   個人情報保護

日本財団会長笹川陽平ブログはこちら



ランキング
注目度とは?
成果物アクセスランキング
13位
(28,995成果物中)

成果物アクセス数
464,104

集計期間:成果物公開〜現在
更新日: 2017年8月12日

関連する他の成果物

1.私はこう考える【中国について】
2.私はこう考える【ダム建設について】
3.私はこう考える【死刑廃止について】
4.私はこう考える【公営競技・ギャンブル】
5.私はこう考える【天皇制について】
6.私はこう考える【国連について】
7.私はこう考える【自衛隊について】
8.私はこう考える【憲法改正について】
9.私はこう考える【教育問題について】
10.私はこう考える【イラク戦争について】
  [ 同じカテゴリの成果物 ]


アンケートにご協力
御願いします

この成果物は
お役に立ちましたか?


とても役に立った
まあまあ
普通
いまいち
全く役に立たなかった


この成果物をどのような
目的でご覧になりましたか?


レポート等の作成の
参考資料として
研究の一助として
関係者として参照した
興味があったので
間違って辿り着いただけ


ご意見・ご感想

ここで入力されたご質問・資料請求には、ご回答できません。






その他・お問い合わせ
ご質問は こちら から