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私はこう考える【北朝鮮について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


朝日新聞朝刊 1997年10月10日
金総書記がなすべきこと(社説)
 
 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の金日成主席の三年の喪が明け、息子の金正日書記が朝鮮労働党の総書記に選出された。いずれ国家主席にも就任するといわれ、三年以上も国家と党の最高位が空席という異常な事態に終止符が打たれる。
 金主席の死後、その政治路線をつぐ「遺訓政治」の名のもとに、金書記が実権を握ってきた。だから、今回の総書記選任は形式的なものといえなくもない。
 だが、北朝鮮は労働党が支配する国である。総書記はその党の頂点に立つ。
 金氏みずから、論文で、党は「社会政治的生命体の中枢組織」、最高指導者は「人民大衆の意思を体現した最高頭脳」と規定している。その意味では、総書記に選ばれたことによって、あいまいだった責任の所在がようやくはっきりする。
 世界で最も閉鎖的な国のひとつであり、食糧難や経済危機のゆくえが気になる北朝鮮が、金総書記の誕生でこれからどうなるかは、各国共通の関心事である。
 一方で食糧の国際支援を求めながら、他方で国際的な話し合いの場に出てこないというようなやり方は、国際世論を失望させ、批判を招くことになるだろう。
 かつてのような関係ではないにしても、北朝鮮は中国から食糧と石油の援助を受けている。訪中して首脳会談を開くことになれば、金氏の出方によっては、朝鮮半島情勢が一つの節目を迎える。
 それにしても、総書記選出の過程は、北朝鮮が特異な社会であることを改めて浮き彫りにした。労働党の規約では、党大会を五年に一度開き、中央委員会を選出し、そこで総書記を選ぶことになっている。だが、党大会は一九八〇年に開かれてから今日まで開かれておらず、今回も、中央委総会を開催したとの報道はない。
 北朝鮮の公式報道機関、朝鮮中央通信は金正日氏を総書記に推戴(すいたい)する過程で「神秘的な自然現象が相次いだ」とし、「春に咲くナシの白い花が咲き、ユスラウメが時ならぬ花を咲かせた」などと報道した。
 個人崇拝ぶりは、スターリン時代のソ連、毛沢東時代の中国を超えている。神格化は、いっそう強まると予想される。
 それだけに、北朝鮮がどういう道を進むかの選択は、金総書記の手中に握られているといっていい。それは同時に、朝鮮半島に平和は来るか、人々は飢えから解放されるか、という問題でもある。
 現実的な選択肢として、北朝鮮に「対決」の道はない。冷戦時代と違って、いまや北朝鮮を軍事的に支援する国がないというだけではない。崩壊寸前の経済を立て直し、慢性的な食糧不足を改善するには、開放政策をとって、外国と協調し、資金と技術を受け入れるほかはないのだ。
 金総書記に、この現実を受け入れる状況認識があることを期待したい。
 朝鮮半島に平和の枠組みを構築することは、東アジアにとっての最重要課題である。そのためには、まず北朝鮮が、暗礁に乗り上げている韓国、米国、中国との四者会談の予備協議の再開に積極的な姿勢に転じることが必要だ。
 南北対話や日朝の国交正常化交渉も進展させなければならない。それには北朝鮮の「協調」の姿勢が前提になる。
 飢えに苦しむ北朝鮮の子どもや老人に、救いの手を伸ばしたい。しかし、そのためには、実情を知らなければならない。
 北朝鮮がいまなすべきは、国と社会の実態をありのまま伝えることである。金総書記に、それを強調しておきたい。
 
 
 
 
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