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私はこう考える【北朝鮮について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


朝日新聞朝刊 1997年8月24日
ここから広げたい日朝関係(社説)
 
 国交正常化交渉を再開することが、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)政府との間で合意された。いわゆる日本人妻の一時帰国も近く実現する。
 日本と北朝鮮は日本海をはさむ隣国でありながら、おたがいにとって、もっとも遠い国のひとつだった。
 植民地支配関係の後始末ができないまま、ようやく始まった国交正常化交渉は五年前に中断して今日にいたった。
 冷戦終結後も変化が見られない北朝鮮の政治体制と、日本人拉致疑惑や弾道ミサイルの開発などによって、日本国内の対北朝鮮世論は冷えきっている。
 今回の合意は、日本側が求めてきた日本人妻の里帰りを北朝鮮が認めるかわりに、日本側が正常化交渉の再開に応じた、という図式である。北朝鮮側とすれば、いま何より必要な食糧援助について、日本政府の消極姿勢を転換させたことに、最大の意義があったということだろう。
 これによって、日朝関係は本格的な改善に歩み出すのだろうか。戦後についての「償い」をも求める北朝鮮側の主張が最大の対立点となってきた国交正常化交渉は、前進するだろうか。拉致疑惑をはじめとする両国間の懸案に、解決の道は見いだせるのだろうか。いずれも、容易な前途ではあるまい。
 しかし、だからといって、合意の意義は損なわれない。これを手がかりに日朝間の接触をひろげ、朝鮮半島の平和に寄与しうる対話の場を、維持できるからだ。
 それにはまず両国が、来月をめどに始まる日本人妻の里帰り事業を、人道的な立場から円滑に進めることである。
 千八百人あまりの女性たちが、在日朝鮮人の夫とともに最初に北朝鮮に渡ってから、四十年近くになる。この間、日本への里帰りは許されなかった。消息が判明している人は三分の一にも満たない。
 北朝鮮の国民は構造的な経済、食糧危機に苦しんでいる。里帰りを望む思いと、彼女たちの生活を危惧(きぐ)する肉親の思いに、一刻も早くこたえることだ。
 希望するすべての人に一時帰国が、できれば自由な往来が認められるべきである。双方の赤十字社による連絡協議機関が設けられる。安否や帰国意思の調査には、可能な限りの透明性が求められよう。北朝鮮当局の政治的な恣意(しい)によって、調査や一時帰国の事業が左右されてはならない。
 実績が積み重ねられていけば、日朝関係全体の雰囲気の改善につながる。
 日朝関係の変化の影響は、両国にとどまらない。日朝交渉に対する北朝鮮の積極姿勢には、来月再開される韓国、米国、中国との四者会談の予備協議をにらんで、日韓の連携を揺さぶろうという思惑があるのかもしれない。
 戦前の歴史の総括が十分できないままの日本が、朝鮮半島の秩序づくりに関与することには、おのずと限界がある。日朝関係の進展は、韓国の理解や四者会談の動きと調和がとれたものでなければならない。
 しかし、朝鮮半島エネルギー開発機構による軽水炉の提供事業や四者会談に示される多国間の努力に比べて、いまの日朝関係はあまりに希薄である。
 国際社会が危機感を強める北朝鮮の食糧問題ひとつをとっても、日本国内の関心は明らかに薄い。積極的に支援の輪に加わることで、日本の存在感を北朝鮮に示すことの大切さを、あらためて思う。
 国交正常化の展望は、そうした努力の先に開けるのではあるまいか。
 
 
 
 
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