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私はこう考える【北朝鮮について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


朝日新聞朝刊 1997年7月24日
「日本人妻」の里帰り促進を(社説)
 
 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)が、戦後、同国に移住した日本人妻の一時帰国をめぐる交渉に応じる意向を表明した。
 人数や時期、里帰り期間、渡航の手段などについて、どこまで具体的な話し合いがあったのかは、明らかにされていない。
 とはいえ、六年前の国交正常化交渉で取り上げられながら、その後、放置されてきた課題である。日本側は、交渉を課長から審議官級に格上げすることを提案した。
 この展開が、里帰りを希望する人たちすべての帰国を実現するための糸口となることを、願わずにはいられない。
 在日朝鮮人の北朝鮮への大量帰国が始まったのは、一九五九年だった。この年の二月の本紙上で、日本人を妻に持つ東京都内の三十五歳の在日朝鮮人男性が、帰国を望む心境をこう語っている。
 「働き口さえあれば倉庫番でもいい。女房も一緒に行く気で、毎晩、朝鮮文字を習っている」
 日本赤十字社の当時の調査では、在日朝鮮人の八割が失業状態にあるとされた。終戦直前に徴用されて日本にきたこの男性も失業中だ、と記事にある。
 朝鮮人高校生の言葉もあった。「日本の小中学校ではいじめられ通し。卒業後は就職もできそうにない。祖国に行って建築や農園の仕事をやろうと思う」
 八〇年代前半までに、九万三千人以上が北朝鮮に渡った。夫と行動をともにし、北朝鮮の国籍をとった日本人女性は約千八百人にのぼる。
 帰国が始まってから四十年近くになるが、この間、里帰りを認められた人はひとりもいない。少数が平壌で肉親と再会した例があるだけだ。国内の親族団体によると、消息がつかめている女性は五百人程度だという。
 北朝鮮の経済は、帰国者が希望を抱いた時代と比べて疲弊し、慢性的な食糧危機を国際社会からの援助でしのいでいる。
 そのなかで、彼女たちは肉親との再会の道を断たれ、国内の肉親は、現地でどう暮らしているのかさえ満足に知ることもできない。どちらにとっても、非人道的としかいいようのない状況だろう。
 北朝鮮側は従来、日朝間の国交が正常化すれば一時帰国に便宜をはかる、という主張を基本にしてきた。今回の姿勢の変化については、さまざまな分析が可能だ。
 拉致疑惑を理由に止まったままの日本の支援を再開させる呼び水に、ということかもしれない。金正日書記による権力の正式な継承を前に、膠着(こうちやく)した対日関係を動かす試みという見方もできよう。
 一時帰国を認めるにしても、北朝鮮の体制に不利益な行動をとらないような対象者に限るのではないか。今後の交渉がうまくいかなければ、結局、帰国を認めないのではないのか。そんな疑念もある。
 日本政府にとって重要なのは、これがなにより人道問題なのだという原則を貫くことだろう。希望者全員の里帰りがただちに実現できなくとも、あとに続く道を開くなら、意義のあることではなかろうか。里帰りの資金を日本側が負担することも、検討していい。
 来月初旬には韓国、北朝鮮と米中の四カ国協議の予備会談が開催される。そうした国際環境をもにらみながら、この問題を国際社会に訴えていく努力も必要だ。
 日本人妻問題が、朝鮮半島の南北分断ばかりでなく、日本による朝鮮人の徴用や朝鮮人差別と無縁でないことも、あわせて思い起こしたい。
 
 
 
 
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