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私はこう考える【北朝鮮について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


朝日新聞朝刊 1996年6月9日
「北の飢え」は現実の脅威だ(社説)
 
 慢性的な農業不振に大規模な水害が重なり、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の食糧不足がますます深刻になっているようだ。被災地をおとずれた世界食糧計画(WFP)の担当者はこう報告している。
 「倉庫はからっぽ。農家の食卓には野草が主食として並び、副食にコメやムギがあればましな方だった」
 国連人道問題局と国連の援助機関が、総額四千三百六十万ドル(約四十八億円)相当の第二次緊急援助を各国に要請した。これを受けて、米国政府はいち早く六百万ドル相当を拠出する方針を明らかにした。
 北朝鮮の飢えは、地域の安全にも深くかかわる問題だ。日本政府は、米国や韓国と協調しつつ、要請に積極的に応じていくべきである。
 同国の食糧危機がどれほど深刻なのか、はまだよくわからない面がある。体制が極度に閉鎖的なため、援助が本当に飢えた市民に届くのか、軍用に転用されるおそれはないか、といった不信感がぬぐえない。それが各国に援助をためらわせてきた。
 国連は昨年九月にも約二千万ドルの援助を世界に呼びかけ、日本も五十万ドル出した。だが、反応は総じて冷たく、実際に集まったのは目標の半分以下だった。
 韓国はいまでも、北朝鮮は戦時備蓄米を放出しておらず、八月ごろまでの食糧はあるという見方だ。
 しかし、WFPの調査では、成人の一日当たりの配給は、これまでの七百グラムから、二百―二百五十グラムまで減っているという。このところ北朝鮮からの亡命者が急増しているのも、事態が深刻さを増しつつあることを示唆するものだろう。
 「すでに崩壊寸前の状況だ」という一部の見方は極端に過ぎようが、このままでは食糧危機が国内の大混乱につながりかねないことは、留意しておかねばならない。
 食糧援助は人道的見地から行うものだが、同時に、東アジア地域の平和と安定を支える一助になりうるという視点も重要だ。餓死者が出たり、多くの難民が流出したりするような事態になれば、朝鮮半島情勢が重大な局面を迎えかねない。
 日米安保体制の再定義の中で、北朝鮮の軍事的脅威が声高に語られた。日米両国による「日本周辺有事」の研究の主な対象も、朝鮮半島での軍事衝突を想定したものだ。しかしそれ以前に、北の食糧不足こそ、目前で起きている現実的な「脅威」だ。私たちは隣人としてこれを注視し、できることをしていかねばならぬ。
 先の米韓首脳会談で、南北米中の四者会談が提唱された。韓国は大規模な北朝鮮への支援はその進展に応じて進めるよう主張している。だが、国際機関を通じた人道援助はこの枠外で考えるべきではないか。
 北朝鮮の指導者は、国連による再度の援助要請にこたえる各国の善意を、正面から受け止めるべきだ。最低限、援助が困っている人々に本当に渡ったことを、国際社会に示す義務と責任がある。
 今度の国連の支援には、食糧が人々に渡ったかどうかを調査する事業や、耕地復旧、農道建設などが組み込まれている。これらの点も評価できるものだ。
 北朝鮮の人々が慢性的な食糧不足の危機から抜け出すには、当局の政策の誤りで疲弊した農業を、根本から立て直す必要があろう。今回の援助が、農業再建の出発点となることを期待したい。
 いまはまず、世界各国が力を合わせて、北朝鮮の人々の飢えに手を差し伸べることである。
 
 
 
 
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