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私はこう考える【北朝鮮について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


朝日新聞朝刊 1985年05月30日
'85春・北朝鮮から:13
離散家族
手紙出すすべなく 肉親捜しの合意を祈る
 
 開城は、南北朝鮮を隔てる軍事境界線まで、わずか12キロしか離れていない。朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の首都・平壌から、列車で約5時間。韓国の首都ソウルまでは、約70キロ。松の木が多く、「松都」と呼ばれる町並みは、高麗時代の古都らしいしっとりとしたたたずまいを見せている。
 
 30万市民の70%も
 
 開城は、38度線の南側にある。1945年の独立直後は、南側の領域だった。ところが、1950年6月から3年間にわたって戦われた朝鮮戦争で、まず北の占領下にはいり、ついでまた南となった。激しい攻防戦の末、最終的に引かれた軍事境界線によって、北の領内に。当時の混乱で、肉親が南北に引き裂かれた離散家族は、30万開城市民の70%を占めているという。
 肉親が南にいる3人の女性と開城のホテルで会った。
 貴貞心さん(45)=兄と姉は南に。母と弟は開城。
 姜英玉さん(48)=たった1人の兄は南に。
 禹応福さん(36)=父と兄、姉がソウルに。
 貴さんは開城にある松都大学文学部の講座長。朝鮮戦争が始まったとき兄は、ソウルへ勉強にいっていた。51歳になっているはずだが、生きているかどうか。姉といとこも、1950年11月、米軍が開城を撤退するとき、いっしょに南に行ったまま消息がない。同居している母も81歳になった。
 
 兄に届けと布織る
 
 民族服を着た姜さんは、市内の紡績工場に勤めている。4歳年上の兄は米軍の撤退とともに南へ行った。「米軍は、『アカが来たら原爆を落とす』と市民を脅したのです」と姜さんは当時をふりかえる。兄は「少し様子を見るだけだから、1週間もすれば帰ってくる」といって出かけて行った。そして30年以上。いま、どこに住んでいるのか、それもわからない。
 昨年9月、南で起こった水害に対し、北が救援物資を送ることになった。姜さんは、夜を徹して布を織り上げた。「南の兄に届け」と心に念じた。輸送のトラックが開城を出る時、いっしょに乗って行けるなら、と思った。
 紡績工場の作業班長をしている禹さんは、父の顔を知らない。禹さんが母のおなかにいるとき、朝鮮戦争が起こった。開城の実家に里帰りしていた母と禹さんは、ソウルに住む父や兄、姉と離れ離れになってしまった。
 「叫べば聞こえるほど近いところにいるのに……」。そう思うと、矢も盾もたまらず、禹さんは父にあてて手紙を書いた。が、その手紙を出すすべはなかった。いつしか手紙は束となり、いまは自宅に一抱えほどもある。
 南北合わせて約6000万人の人口のうち、その6分の1は、肉親が南北に別れて住んでいるという。韓国のKBS放送が2年前、南の中で別れ別れになっている家族捜しを呼びかけたところ大きな反応があった。開城のホテルの部屋でも、韓国のラジオ放送がはっきり聞こえる。だが、南北合同の肉親捜しや手紙の往復は、実現していない。
 
 対話の歴史見つめ
 
 南北分断の悲劇の町、開城は、同時に南北対話の北側の基地でもある。板門店やソウルで開かれる南北会談に向かう北の代表は、必ず開城に1泊する。開城市民は、南北対話の歴史をじっと見つめてきた。
 1972年、「自主的、平和的、民族大団結」の統一3原則が南北で合意され、本格的な南北対話が始まった。まず、北から代表団が板門店を通ってソウルに向かい、続いて南の代表団が平壌へ。開城市民は小旗を打ち振って、南北の代表団を迎え、送った。しかし、この対話も1年余りで挫折してしまった。
 28日からソウルで12年ぶりに南北赤十字会談が開かれた。ソウルへ向かった北の代表団を開城の市民はどんな熱い思いをこめて見送ったことだろう。
 (田中 良和記者)
 
 
 
 
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