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私はこう考える【北朝鮮について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


朝日新聞朝刊 1985年05月24日
'85春・北朝鮮から:9
自然改造
大河を巨大運河に 経済発展めざす原動力
 
 海と見まがうほど広い河口をせき止めるようにして、延々と堤防が続く。その上を鉄道が走り、そのかたわらをトラックが突進する。川上から雨まじりの寒風が横なぐりに吹きつける。ほおが痛い。波打つ川の水が堤防にあたって砕け、しぶきが上がる。全長440キロの大河大同江の河口、南浦で進められている閘門(こうもん)建設は、恐らく世界的にも珍しい大規模な工事である。
 
 堤防の長さは8キロ
 
 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)は、80年代に入ってから経済発展に一段とハッパをかけている。その一環として、81年10月の労働党中央委総会で4大自然改造事業が打ち出された。その中核をなすのが、南浦閘門の建設だ。
 その青写真をひと言でいうなら、大同江河口に延長8キロ、幅14メートルの堤防を築いて流れをせき止めたうえ、堤防に3つの閘門を造り、それぞれ5万トン、2万トン、2000トンの船舶が海から川へ、川から海へ往来できるようにする――というものだ。いわば、大同江を巨大な運河と化してしまう壮大な計画なのだ。
 その狙いは極めて多岐にわたる。まず、水量調節。大同江の上流は急流で、大雨が降ると下流ではんらんすることがある。そこで閘門で水量を調節し、洪水を防ごうというわけだ。
 第2は、農業用水の確保。この国の耕地は200万ヘクタールだが、穀物生産に適しているのは、150万ヘクタール。昨年はここで1000万トンの穀物を収穫したが、この国は80年代末までに1500万トンにまで増やす目標を掲げている。それには耕地の拡大が必要で、現在、西海岸で30万ヘクタールの海面干拓に挑んでいる。このため、除塩に水が必要で、耕地が出来れば水が不可欠となる。
 
 まさに“一石六鳥”
 
 「そこで、閘門建設によって貯水される水をそちらに回そうというわけです。閘門完成によってたたえられる水は27億トンですから、まずは十分です」と、対外文化連絡協会の幹部。
 第3は、工業用水の確保である。大同江の下流には重工業関係の工場が集中しており、ますます水に対する需要が増す。第4は、河川輸送の充実だ。閘門建設によって大同江の水位が上がり、船舶が上流までさかのぼることができるようになる。そこで、川の沿岸の工場に原料を運んだり、製品を運び出すことも容易になる。ゆくゆくは運河化した大同江を東海岸に注ぐ竜興江につなぐ。すると、船が西海岸から東海岸へ行けるようになる。第5は、時間短縮。堤防上には鉄道、車道、歩道が造られるから、大同江で隔てられていた南浦と黄海南道間が一気に縮まる。そのほか、人造湖と化す河口で養魚が可能ではないかと見込まれている……。まさに“一石六鳥”である。
 
 人民軍3万人投入
 
 建設が始まったのは4年前だが、難工事の連続だったようだ。なにしろ、大同江の流れは時速11キロと速く、そのうえ河口の一番深いところの水深は30メートル。満潮時は35―36メートルになる。工事に人民軍兵士3個師団(約3万人)が投入されているということからも、難工事ぶりがうかがえる。
 完成目標は労働党創立40周年にあたる今年の10月10日。私たちが現場を訪れたのは4月下旬だったが、案内の人民軍将校は「堤防8キロのうち5.2キロが土盛り、1.8キロがコンクリート造りです。すでに土盛り部分は5キロまで完成、コンクリート部分も完成間近。3つの閘門づくりも順調に進んでいる。期限までには必ず出来上がります」と自信にあふれていた。
 西側社会では、大規模開発には、生態系の破壊や公害などの心配がつきまとう。開発に次ぐ開発の北朝鮮では、その恐れはないか。対文協幹部は「事前に十分の調査をして工事を進めるので、その恐れはない」と言い切った。その答えが出る日も近い。
 (岩垂 弘記者)
 
 
 
 
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