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私はこう考える【北朝鮮について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


朝日新聞朝刊 1985年05月16日
'85春・北朝鮮から:3
後継者
実務執る金正日氏 指導力にどこでも賛辞
 
 この国のナンバーワンはいまなお金日成氏だ。73歳。朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の指導政党である朝鮮労働党の総書記であり、国家主席である。
 だから、今回の取材でも、金日成氏がいかに偉大な指導者であるかを繰り返し聞かされた。が、印象深かったのは、それにも増して金日成氏の子息で当年43歳の金正日氏の名前が、いたるところで登場したことだった。
 
 一般家庭にも写真
 
 とにかく、どこへ行っても、「金正日書記」である。例えば、こうだ。
 金日成思想をたたえる主体思想塔で「これは金正日書記の発意と直接指導で建立されました」と、案内の女性。市民の学習センターである人民大学習堂で「これは金正日書記の精力的な指導により、わずか1年9カ月で造られました」と、副館長。アイススケートセンターでも「金正日書記はこの建物を円すい形にせよと指示されました」……
 ある日、対外文化連絡協会(対文協)が映画を上映してくれた。カラーで1時間20分。全編これ、金正日書記が、昨年1年間に各地の工場、企業所、建設現場に出向き、作業服姿で現地指導にあたったのを写した記録映画だった。
 平壌市民の家庭や協同農場の農民の家庭を訪ねる機会もあったが、どちらにも、居間に金日成氏の写真とともに金正日氏の写真が飾られていた。平壌のホテルのロビーには、両氏が抗日武装闘争の根拠地、白頭山の頂に並んで立つ絵が掲げられていた。宴会では、必ず「金日成主席と金正日書記の万年長寿のために」と杯があげられた。
 
 5年前すでに指名
 
 そればかりでない。平壌の金日成総合大学には、金正日氏の活動歴を紹介する展示室が出来ていた。全部で11部屋もあった。「書記は当大学の経済学部を64年に卒業されました」と、大学当局。
 「金正日氏はどんな地位にあるのか」との私たちの問いに、対文協幹部は「主席を補佐しながら、党務と国家活動の全般を取り仕切っている」といった。これらの見聞から判断すると、どうやら、金正日氏は金主席の後継者としての地位をすでに固め終わったと見ていいようである。
 だとすると、いつ、どこで主席の後継者に推されたのだろうか。対文協幹部は「80年の労働党第6回大会です」といった。この時、金正日氏は政治局常務委員、書記、中央軍事委員に選出されている。
 それにしても、金正日氏が金主席の子息であることから、日本などでは「社会主義国での権力世襲は極めて異例」との声が少なくない。その点を許タン・党政治局員兼書記にただすと、「決して人為的なものではない。金正日書記自身が積み上げた業績によって、ごく自然にそうなったのだ。つまり、60年代から党と国家の各分野で精力的な指導をして、その非凡な英知と卓越した指導力が人民に認められたのだ」との答えが返ってきた。
 そして、許タン氏はこう付け加えた。「インドのラジブ・ガンジー首相はインディラ・ガンジー首相の息子である。これについて世襲だなどという非難はないではないか。ラジブ氏が国民会議派の優れた指導者だからである」。なぜ、わが国だけ問題にするのか、と言わんばかりの口調だった。
 
 西側に見せぬ素顔
 
 とはいえ、金正日氏の今の地位が氏の育った環境と全く無関係ということはあるまい。平壌の革命博物館で、興味深い写真を見た。金主席がまだ少年らしさが残る金正日氏を同行して地方で現地指導にあたっている写真だ。撮影の日付は62年11月。とすると、金正日氏はその時大学生だ。金主席は早くから“帝王学”を施していたということであろうか。
 金正日氏の人柄なり業績なりの実像が西側諸国にあまり伝わっていないのは、一つには、氏と西側報道陣との会見がいまだに実現していないことが影響している。「なぜ実現しないのか」と対文協幹部に尋ねると、「主席がまだ元気で活動しているので遠慮しているのでしょう。謙そんからだと思いますよ、きっと」との返事。が、西側報道陣の間では、この国のニューリーダーの素顔に直接触れたい、との希望が強い。会見が実現するのはいつのことだろうか。
 (岩垂 弘記者)
 
 
 
 
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