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私はこう考える【北朝鮮について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


朝日新聞夕刊 1971年11月29日
チュチェの国 北朝鮮:9
ウェノム
日本軍へも憎しみ 再び“軍国主義者”を警戒
 
 平壌国際旅館のメニューに「ムオロシ」というのがあった。大根(ム)おろし、だった。「セウテンプラ」もあった。エビ(セウ)のてんぷら。
 
 英語ではJAP
 
 そして、平壌大劇場では「ウェノム」という言葉をきいた。漢字を当てれば「倭奴(わど)」。金日成首相が自ら書下ろしたといわれる、一九三〇年代の抗日武装闘争をテーマとしたオペラ「血の海」の中で、「ウェノム」−「倭奴ども」は何回となく出てきた。舞台のそでにうつされた英語の字幕には、JAPとあった。正確には、単に日本人に対するさげすみだけでなく、朝鮮を侵略し、じゅうりんした日本帝国主義への憎しみとうらみのこもった言葉だった。
 「血の海」の中で、日本軍は容赦なく村を焼払い、朝鮮人を殺した。観客はそのつど、声をあげて泣いた。そして、抗日パルチザンが登場、日本軍をやっつけると、拍手がしばらく鳴りやまなかった。「ウェノム」に対する憎しみにおいて、舞台と客席は一つだった。
社会主義労働青年同盟の機関紙「労働青年」のウ・ジュンハク編集局長に会った時、だしぬけに「あなたは秀吉をどう思いますか」ときかれた。「私をはじめ、朝鮮人はだれでも、秀吉を心の底から憎んでいます。日本では、まだ“朝鮮征伐”と教えているのではないですか」といわれた。答えようがなかった。「ウェノム」は、加藤清正であり、小西行長であり、伊藤博文であり、東条英機であった。
 北京から国際列車で朝鮮民主主義人民共和国にはいり、初めて耳にした朝鮮語は「ミジェ(米帝)侵略者ども」と「日本軍国主義者」への非難だった。ラジオをつければ、毎日「ミジェ」批判があった。そして「ミジェ」の出るとき、つづいて「日本軍国主義者」が必ずヤリ玉にあがっていた。「ウェノム」は演劇や映画の中でのみ使われる一種の歴史用語だった。だが「日本軍国主義者」は日常用語であった。
 平壌の学生少年宮殿の「階級教養室」では「日本軍国主義反対の闘争は、反米反帝闘争の一環である」と教えていた。壁には自衛隊の三矢計画作戦図や、日韓条約の強行採決、在日朝鮮人のデモ隊を警棒でこづく機動隊、などの写真が張ってあった。
 
 在日同胞を弾圧
 
 九月二十七日付の新聞は一斉に「朝鮮総連と在日朝鮮公民に対する日本軍国主義者の弾圧と野蛮な敵視政策」に対する共和国外務省スポークスマンの長文の声明を、大きく載せていた。その声明は「アメリカ帝国主義者の積極的ひ護のもとに復活した日本軍国主義は、南朝鮮への侵略を推し進める一方で、在日朝鮮公民への弾圧を強めている」という出だしで始まっている。
 その具体的迫害の例として「日本の国税当局は根拠のない脱税容疑をデッチあげ、九月三日、在日朝鮮人商工連合会のリ・ジェドン副会長の事務所と工場を百二十人の武装警官で襲い、在日朝鮮公民の営業の権利を踏みにじった。六月四日には、森本という女と他の二人の無頼漢が、名古屋市に住む同胞のパク・サムスさんを殺して湖に車ごと放り込んだ。六月十三日には、日本の無頼漢に大阪・城東区に住む同胞プ・ヨンソンさんが無残に殺害された」と続いた。
 単に自衛隊の増強、韓国への日本資本の進出だけでなく、在日朝鮮人の生命、財産、活動への侵害も「日本軍国主義の頭目である佐藤一派の仕業」だった。
 そして、金日成総合大学で会った世界史学科五年の男子学生キム・ソクボンさん(三○)は、こういった。「日本が過去三十六年間、わが国で悪らつな植民地支配を行なったうえ、いままた南朝鮮を侵略し、さらに共和国北半部への侵略の準備を進めていることを、あらゆる資料で知っています。しかし、私たちは決して日本軍国主義者と日本人民を一緒にしてはいない。日本の人民が、佐藤反動一派と戦っているのも知っているし、わが国の人民の統一への闘争を支持してくれているのも知っています」
 
 キツネ役の日本
 
 金日成首相の「教え」の中に「日本軍国主義者は、歴史的に強者を後ろ盾にして“ボロもうけ”をすることがくせになっています」というのがあった。子どもの遊戯に出てくるオオカミがアメリカ帝国主義なら、日本軍国主義者はキツネ役だった。中国の国連復帰問題で、アメリカと日本の提案が大差で敗れたという報道をきいたとき、キツネは妙に実感があった。
 
 十一月二日付の労働新聞は、東京で続発している日本人高校生による朝鮮人高校生暴行事件を取上げ、次のようにきびしく批判していた。
 「日本の反動当局が、われわれの繰返し述べてきた警告を無視し、在日朝鮮公民への敵視行動を続けるならば、それによって生じるあらゆる重大な結果の全責任を彼らは負わなければならない」(宮田前特派員)
 
 
 
 
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