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私はこう考える【北朝鮮について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


朝日新聞夕刊 1971年11月25日
チュチェの国 北朝鮮:6
英雄たち
千里馬運動の象徴 ノルマ達成に競争や報償も
 
 建設の速さを誇る
 
 平壌市の中心牡丹峰の丘の上に、高さ二十三メートルの天馬が翼を広げている。チョンリマ(千里馬)の像。乱世を平定する英雄は、きまってこの天馬にまたがり、一日に千里を天かけて現れた、と伝説にある。千里馬ラジオがあり、千里馬セッケンがあった。「チュチェ」がうたわれる以前には、社会主義建設のスピードを誇って「千里馬の国」ともいっていた。
 解放前は湿地帯で、一ヘクタール当り一トンの米を収穫するのがやっとだった、というミゴク共同農場は、今年一ヘクタール当り七トンの収穫をあげて千里馬農場の称号を受けていた。
 咸興市にある大型工作機械工場の「母親工場」(機械を作る機械を作るので、文字通りこう呼ばれていた)。朝鮮戦争停戦後の製品第一号は、一輪の手押し車だった。いまは八メートルターニング盤や各種自動旋盤を備え、千里馬工場の栄誉を示す赤い絹地に金のぬいとりの旗が飾ってあった。
 解放前に一年間で生産した量をいま、十六日間で作り出す「大冶金基地」と説明を受けた降仙製鋼所は、「千里馬の故郷」と呼ばれていた。公称能力が年産六万トンしかない圧延炉で、一九五七年には二倍の十二万トンを生産、大増産運動である「千里馬運動」の口火を切った、として。
 
 「群衆路線」の威力
 
 当時、南北対立が再び緊張の度を強め、一方で国際共産主義運動の中に修正主義、教条主義論争が始るなど、情勢がきびしかった。そんな中で、金日成首相は、直接工場を訪ね、従業員を前に、こう演説したといわれる――「李承晩はアメリカに頼って、北進を叫んでいる。われわれはだれに頼ればよいのか。それは、わが国の労働者階級と人民でしかない。そしていま、われわれは鉄鋼を必要としている」。労働者たちはふるいたち、能力の倍を生み出す奇跡をなしとげたというのだ。
 案内役をつとめてくれた鄭準基記者同盟委員長は、当時を回想していった。「大衆を信じ、生産への大衆の自発的参加を呼びかけた、首相同志のけんめいな指導のたまものです。大衆が立上がれば、物差では測れない、偉大な力を発揮するものです」。「群衆路線」といった。
 あらゆることを自力でまかなうためには、最大限の増産と節約がスローガンであり、そのためには「べルトを引締めて(ひもじさでズボンのすり落ちるのをがまんしての意味)やってきた」ともいった。「兄弟国」から一定の援助もあったが、戦後の復興期(一九五四−五六年)でも、国家収入の五%程度でしかなかった、と強調された。
 多くの英雄の話もきいた。ビナロン工場建設の際には二十三人の英雄が出、八千七百人が勲章を受けた、といわれた。英雄の一人リ・インシス青年(当時十九歳)は、高さ四十メートルのコンクリートの柱を支えていたワイヤロープが切れた時「素手でこのワイヤを押え、血が吹出し、からだをひきずられながらも決して放さなかった」と。
 降仙製鋼所の掲示板には、優秀な成績をあげた工員の写真と、いかにして成績をあげたかを書いて、ズラリと張ってあった。水田の稲刈りでは、各作業班がそれぞれの旗を押したて、早さを競っていた。ビルの建設現場にも、色とりどりの旗が林立していた。そして、一カ月もたつと、新しいビルがそこに出現した。
 
 今また大増産運動
 
 競争があり、報償があった。賃金体系にも、それはあった。「都給制賃金」という。金日成総合大学経済学部のキム・チェウン教授(四五)にきいた説明では、職種別に標準作業量が決められ、上回る成績をあげれば、それだけ賃金があがる、一種の歩合制。ただし、病気で全休したとしても、社会保障から七0%が支給され、党務で休んだ揚合は一00%保障と、固定部分が大きかった。「むろん、故意にサボった場合は、別ですよ」。
 新六カ年経済計画の始った今年、また大増産運動が展開されていた。元山市の郊外チョンサム共同農場で見た作業班のポスターに「わが班は目標額を三五0%超過達成する」と書いてあった。平壌市の郊外にある万景台ニワトリエ場の作業班のには、六三0%という数字もあった。新聞では「スンリ総合自動車工場の偉大な革新」「フィチョンエ作機械工場の赤い機械製作者たちは十月に一千台の機械製造を達成」と報道していた。
 サービス部門労働者に千里馬の称号が贈られた、との報道もあった。平壌国際旅館の四十がらみのウェートレスも、その一人だった。彼女はいった。
 「ウリナラ(わが国)は労働者階級の国です。そして、働くことこそ、私たち人民のつとめであり、喜びです」。(宮田前特派員)
 
 
 
 
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