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私はこう考える【北朝鮮について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


朝日新聞夕刊 1971年11月17日
チュチェの国 北朝鮮:1
首都発見
中心部の25%が緑 人口は80万人以上にせぬ
 
 平壌では、歩道をまっすぐ歩くことができた。人々はかなりせかせか歩くが、ぶつかる心配はなかった。雑踏らしきものといえば、芝居のはねた後の大劇場前と、列車が着いた時のプラットホーム、日曜日のデパートくらいだった。
 どうも、都市らしくない。一番の中心部「人民通り」(スターリン通りと呼んだ時期もあった)の両側のビルは、市民の住宅であった。朝鮮でしあわせのシンボルであるカササギが、濃紺に白い帯を見せて飛び、尾羽の大きなキジまで見た。爆音で見上げると、複葉機から次々と十三人がこぼれ落ち、パラシュートが開いた。青年の間で流行のスカイ・ダイビング。ビルの上に落ちたら、という心配は無用だった。降下したのは大同江川原の広い運動場であった。
 かといって、平壌が首都の機能を備えていないわけではない。日本人記者に初めて公開した内閣庁舎は、万寿台議事堂と並んでそびえ、全国の幹部研修機関である人民経済大は、労働党中央委員会のアパートのそばにある。平壌駅のそばには平壌国際旅館があり、東の方には円形の大サーカス場もある。それでいて、日本での都市という感覚では、どうもしっくりしない。
 
 数千人の独立圏
 
 そのナゾは、表通りのアパ一トをくぐり、中庭にはいってみて、初めて解けた。約五百メートル四方のロの字型に建てられた住宅街の中に、託児所、幼稚園、集会場、飯工場(簡単な副食とたきたてのご飯を売る)、小公園があった。この内部施設とアパート一階の商店街で、日常生活のほとんどが事たりるよう、独立した生活圏を形成していた。
 この独立ブロックは人口五、六千で、末端の行政機関である「洞」、「洞」が集まって八万から十万人の「区域」となり、「区域」が集って「市」となっていた。なにか物足りないと思ったのは、密集した歓楽街など、なかったからだった。
 平壌に「妓生(キーセン)丘」と呼はれる丘があった。市内の一等地であり、迎賓館、劇場のある牡丹峰(モランボン)の別名だが、秀吉の朝鮮侵略に抵抗、犠牲となった“愛国的”妓生の記念の地。妓生丘は公園でもあった。また、二+六年前までは日本人街であり、料亭と遊郭が軒を並べていた大同江西岸も、柳の茂る公園になっていた。
 
 朝鮮戦争で廃虚
 
 朝鮮記者同盟からもらった写真でみると、朝鮮戦争停戦直後の平壌は、東京の焼け野原と同じく一面の廃虚だった。いま、市の中心部の二五%は緑地だ、と平壌市人民委員会からきいた。街路樹が柳ならずっと柳、プラタナスならばまたプラタナスばかりと、いささか画一的な面に、復興の中でいかに緑化を急いだかを見る気がした。公共緑地の面積は、東京の一人当り一・0八平方メートルに対し、平壌は二十五平方メートル。
 平壌人民委員会にある都市計画設計研究所のカン・ジョハン技師長(四五)が語った都市計画の基本の第一は、平壌の人口規模を八十万人以上にしない、そのためには人為的に人口集中を防ぐ、ということだった。人口を多くすると、食糧など生活必需品の供給、交通、衛生環境で問題が出てくるというのだ。「社会主義国も含め、世界的にみて、人口が百万を越えると非常手段が必要となる」ともいった。非常手段とは、たとえば地下鉄、高架道路などをさしていた。
 カン技師長は平壌の都市計画の第一人者であり、解放後一貫して平壌市の建設にたずさわってきたという。すると十九歳のときから、そんな若さで専門的知識を持っていたのか、と驚いてきくと「建築の方は少々。でも、人民生活第一という原則さえ守っていれば、なんでもありません」。とくに外国に学んだわけでもなく、自主、自立、自衛の、チュチェ(主体)思想をここにもみた。
 
 正しかった指示
 
 そして、八十万人を最適規模とした根拠については「実は、私もわかりせん。尊敬する金日成首相のご指示です。しかし、いまになってみると、それがいかに正しかったか、よくわかります」。
 
 朝鮮民主主義人民共和国の首都は平壌だ、と思っていた。しかし、よく注意して聞くと人々は必ず「革命の首都」といった。不審に感じて共和国憲法を調べてみた。第一0三条に「朝鮮民主主義人民共和国の首府は、ソウル市である」とあった。百五十六万平方メートルの敷地を誇る金日成総合大学の模型に高速道路があった。チ・ジャンイク第一副総長はいった――「統一のあかつきには、首都ソウルと平壌を結ぶ幹線となります」。
(宮田前特派員)
 
 
 
 
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