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私はこう考える【北朝鮮について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


朝日新聞朝刊 1971年9月27日
金日成首相との会見記詳報
 
日本が敵視政策変えれば国交を結びたい
まず貿易・記者交換を
 
【平壌二十六日=後藤基夫東京本社編集局長】二十五日行われた金日成朝鮮民主主義人民共和国首相と私(後藤東京本社編集局長)との会見はきわめてざっくばらんで、かつ、突っこんだものであった。
 
 金日成首相の会見での発言の詳報は次の通り。
 
ニクソン訪中で緊張は緩和
 
アジアを中心として多角的に激動する国際情勢について――
 
 ニクソン(米大統領)の訪中に関連して国際情勢が変ったといわれるが、事実、この問題(ニクソン訪中)は大きく、世界は動いている。しかし、ニクソン訪中に関連してわれわれの対外政策に変化はない。
 ニクソン訪中の背景にはいろいろ理由がある。(1)米国経済の危機(2)米国の内外で米国民の反戦運動の高まり(3)戦争に出口が求められなくなったこと、などがある。だから、別の出口を捜しているのだろう。米国の独占資本が戦争の方向ではだめだという結論を出し、新しい市場を求めているのだと思う。
 国際的にみて、資本主義諸国の間でも米国の同盟国はいまや少なくなり、追随国も少なくなりつつある。米国の世界での人気は五〇年代以来、下り坂を走っている。
 こんな情勢から米国は出口としてニクソン・ドクトリンを打出したが、これを支持する国も少ない。佐藤(首相)のような支持をしている国も少ない。ニクソンはこのような情勢から新しい中米関係を求め、米国経済の危機を打開しようとしているのだ。
 私の考えでは国際情勢はニクソン訪中で一時的ではあろうが緊張緩和の方向に向うだろう。アジアにとっても緊張緩和はいいことだ。
 だが、問題はニクソン・ドクトリンがアジアで実現されるかどうかだ。破たんしよう。日本人は昔の日本人ではない。日本はアジアで米国の身代りをする役割を果すだろろか。(いまの)日本人はそうはすまい。
 
米軍の撤退がなにより重要
 
共和国の対外政策について――
 
 こうした情勢に即して、われわれは対外政策をいま同志たちと検討している。歴史的経験からみて、帝国主義国と社会主義国との関係を一時的に緩和しても、また戦争の起る可能性がある。帝国主義国は一面では緊張緩和、一面では時間をかけて新しい戦争の準備を進めると思う。これに警戒心を高めることが必要だ。ヒトラーのドイツとソ連との不可侵条約にしても、締結一年後にヒトラーはソ連に戦争を仕掛けた。日本も一九四一年にソ連と中立条約を結んだが、これは日本帝国主義が中国を侵略する準備のためのものだったと思う。中国はニクソン訪中を受入れるが、社会主義の立場を投捨てるものではない。
 こういう情勢のもとで、われわれの対外政策は、一貫して友好国とはよい関係をもつ。いま緊張緩和に向いつつある中で、われわれは、情勢に逆行する政策をとるつもりはない。中米関係がどう動くか、私たちと直接の関係はないが、情勢が緩和されるのは歓迎する。米国がわれわれにどんな態度に出るか、注視しようと思っている。
 この点で米軍を南朝鮮から撤退させることが何よりも重要だ。今後もなお、米軍が南朝鮮の占領を続けるなら、中米関係のいかんにかかわらず、われわれは米国と仲よくするわけにはいかぬ。中米関係や米国の他のアジア政策とは関係なく、われわれは独自の対外政策を考える。
 南朝鮮の米軍は国連という看板のもとに来ている。(朝鮮戦争の)停戦協定は、わが国と中国が一方であり、他方は国連軍となっている。これをどう解決するか、今後の宿題だ。
 もともと停戦協定では政治会談を開き、朝鮮問題を平和的に解決する、と書いてある。米国は、それに違反している。もし米国が停戦協定通り、朝鮮問題は朝鮮人にまかせると出ていくか、政治会談を開いて結局は朝鮮人民にまかせる、というのならよい。米国の態度が変らぬ限り、われわれの対米政策を変えるわけにはいかぬ。
 
国連の変化をしばらく静観
 
米国が最も威勢のよいときにつくられた国連に、いま中国も正当な地位を回復しようとしている。この国連の将来の役割をどう見るか――
 
 国連のわが国に対する態度は不平等だ。われわれに(朝鮮問題についての)国連の決定を尊重せよ、と一方的に条件をつけてきている。われわれは国連憲章を尊重しているが、米国の方が違反している。国連の決定をわれわれに尊重しろというが、これはつまり、米国が南朝鮮を占領している現状を合法化しようとすることだ。もし、米国、国連の態度に変化が生ずれば、われわれも話合う。しばらく様子をみなくてはならぬが、われわれも国連内に一定の変化が生ずると思っている。
 中国の国連代表権問題についても、米国は二重代表制を主張している。いまの情勢では、米国が従来の立場にしがみついているのは時代遅れだ。絶対多数の国々が中国を支持している。同じように朝鮮問題についても一定の変化が生れるともいえる。
 なお、資本主義諸国で憶測しているように、中ソ間に戦争が起るとは思わない。確信をもっていえる。
 
干渉なければ平和統一可能
 
南北統一の将来の展望について――
 
 私たちが打出している祖国の自主的、民主主義的な平和統一の方案(具体案)についてはよくご存じだろう。平和的統一を一番妨害しているのは南朝鮮の政権だ。朴正熙(大統領)一味が一番がん強だ。彼らは実力を培養し、そののち統一を、といっているが、さかんに叫んでいた勝共統一と同じものだと思う。われわれはいままで主張してきた統一方案を一つにまとめ、四月の最高人民会議で八項目をアピールとして提案した。
 さらにカンボジア国家元首のシアヌーク殿下を迎えた八月六日の演説で、私は南朝鮮の与党、民主共和党をも含めたあらゆる政党、社会団体、人士たちと話合おうとさらに一歩譲歩した。まず、話合いをやってみようというのだ。
 だが、いまの南朝鮮の支配層には平和統一を進展させようという姿勢はないと思う。南朝鮮の経済体制は南の人民の暮しを高める制度ではない。貧富の差がひどい。日本の新聞に出ていたが、南の高速道路のそばに貧民くつがあると皮肉そうに書いていた。この高速道路建設の金を工業に投じようとはしないからだ。日本は自動車も多く、高速道路が必要だろうが、いまの南朝鮮でどうしてこの種類の道路がいるのだろうか。それは戦争準備のためだ。私たちもあとでやろうかと思っているが、いまはその必要もない。
 板門店での赤十字会談にしても、南朝鮮の金鐘泌(首相)は「時期尚早」「興奮は禁物」といいふらし、会談の引延し戦術に出ている。問題は南朝鮮の人民が立上がって、統一への闘争を強め、いまの支配層に圧力をかけることにかかっている。
 (南の政権に変化があれば、統一問題を話合う南北の協商会議を開く可能性はあるかとの問いに対し)ありうる。われわれはそれを望んでいる。準備もできている。われわれとしては南北の自由な往来だけでも実現させようといっている。われわれの方へ南から来てみてはどうかと呼びかけている。なんの秘密もないのだから。そうしてわれわれの方もいってみてくる。われわれは平和統一を促進させようとしている。そのためには南朝鮮人民がもっと闘争を強め、支配層が平和統一せざるをえないよう圧力をかけるべきだ。
 南の為政者は“南侵”をしないという保障があれば、平和統一の話合いに応ずるといっているが、われわれは“南侵”の方針をもってもいないし、したこともない。平和統一にとってもう一つ重要なことは、南朝鮮が日本、アメリカと結んでいる軍事同盟関係である。われわれは八項目のアピールのなかで、軍事同盟の廃棄を提案している。
 南朝鮮が先にアメリカと軍事同盟を結んだので、われわれもその後ソ連、中国と同盟を結んだ。だから、いま朝鮮で戦争が起れば、局地戦でなく全面戦争になる。ソ連と同盟を結んだとき、私は「平和的統一の障害になるなら、いつでも破棄する」と声明している。われわれの提案は南にだけ一方的に廃棄を要求するものではない。南の反動集団に統一妨害の口実を与えないために、機会をみてこの点を想起させる方案を出そうと考えている。
 (平和統一された朝鮮には軍事同盟はない状態が生ずるとみてよいのだろうか、との質問に、首相は大きくうなずきながら)それを望んでいる。可能性がある。平和統一はアメリカや日本の干渉なしで初めて可能である。南朝鮮の人民の圧力、日本人民、アジア人民の支援で南の為政者も結局は平和統一に応ぜざるをえなくなる。時間はかかるかもしれないが、必ず統一は実現する。
 
納得できない日米共同声明
 
日朝関係を友好的に深める必要がある。そのための各分野での交流促進について――
 
 日本との関係で、われわれが佐藤政権を不愉快に感じている第一は、ニクソン・ドクトリンに従い、ニクソンとの共同声明を出したというわれわれに対する非友好的行為だ。日本の歴代内閣のわれわれへの言動は侵略的である。日本政府はまず朝鮮民主主義人民共和国と南朝鮮への態度に変化をもたらさなければならない。過去は過去として朝鮮に対する態度、政策に変化がない限り、内閣が代ったくらいで、朝鮮と日本の関係の解決はできない。日本の人民の大部分はわれわれとの関係をよくしようと願っており、反動派は一部だろうが、日本人民自身が反動派に圧力をかけ、政策をかえさせるのが一番だ。日本軍国主義がたとえ復活しても、日本人民は昔の人民ではないので、戦争政策を阻止できないとはだれもいえまい。七0年代の日本人民は軍国主義が復活したかどうかの論争をするより、侵略政策の阻止のために団結すべきだ。
 日本が、わが国に対する敵視政策をかえれば、平等と内政不干渉、相互主義(ギブ・アンド・テイク)の原則で、友好関係を結ぶことはできるし、われわれは前からその方針でいる。経済関係をみても、友好関係が結ばれれば、日本にも有利だし、われわれにも有利だ。日本が封鎖政策をとっているので仕方なくフランス、イギリス、オランダなどまで行って取引しなければならない。国交関係はなくても貿易を発展させていく方針で、国連軍に参加して戦争の敵となったフランスやオランダとも貿易関係をもっている。しかし、日本との関係は現在一方的で、日本の技術者はわが国にこられるけれども、わが国の技術者は日本に行くことができない。直接、工場や機械を見なくては注文もできない。
 日本との国交はもちろんだが、その前段としてできることがたくさんある。貿易、自由往来、文化交流、記者交換など、われわれは実現を望んでいる。その具体的方法はともかくとして、要は日本政府の態度にかかっている。たとえ与党(自民党)の代議士だろうと、友好促進のためにわが国を訪問されるなら、政党のいかんを問わず歓迎する。
 
六年後に欧州なみ生活水準
 
国際的に創造的な方向をもって進めておられる貴国の社会主義革命と社会主義建設、とくに新六カ年計画の展望について――
 
 前七カ年計画は、やむをえない情勢から昨年まで十年間かけたが、これで経済の基礎を築くことができた。中ソ対立、日本や米国による封鎖政策、国防問題と非常に困難な条件下だったが、全国の農村の電化、水利化を完成、九年制義務教育の実施、農村の現物税廃止などやれることをほとんどやった。
 ことしからの六カ年計画は、この基礎の上で国防費をずっと減らして、経済をより発展させることができ、人民生活の向上をはかれる。
 六カ年計画では、三大技術革命の課題を打出した。重労働と軽労働の差、農業労働と機械労働の差の解消と、婦人の家庭労働からの解放だ。重労働、軽労働の差の解消のため、炭鉱などの機械化、自動化を進めるため工作機械増産の大キャンペーンを行なっている。
 農業労働と工業労働との差の解消のためには農業の機械化が必要で、それに合う土地整理を進め、農業労働が工業労働と同じように八時間労働になることを目ざしている。農村と都市の差異をなくすため最大の努力を払っており、こうしなければ他の社会主義国で都市に青年が集中している例のように、青年たちは農村にいつかなくなるだろう。
 わが国の工業部門の労働力の四八%は女性であり、生活の習慣もあって婦人の負担は大きい。婦人を社会に進出させ、労働者階級化するためには、家庭労働からの解放が必要だ。そのために食品工業を発展させるとともに、婦人が便利なようにせんたくもの工場などの増設にも力を入れている。このような技術革命の課題を解決するためには、いろいろな建設を進めなけれはならないが、初年度の成果をみるとよい展望を持つことができる。
 文化面では十年制教育の準備をしており、全人民が高級中学を終えるようにしようとしている。物質的な基礎と同時に思想的基礎が重要であり、社会主義国の中にも思想的に腐敗した例がある。西欧の腐敗した文化の侵入を防ぐため、青年たちに合った新しい社会主義文化の建設にも留意している。
 生活水準はまだヨーロッパの諸国に比べ、豊かとはいえないが、六カ年計画を行い、努力すればその水準にも達するだろう。
 
金日成首相
14歳で革命戦線へ 千里馬運動で祖国再建 自主路線歩む
 
 一九一二年平壌市に生れる。五十九歳。社会主義国のなかではキューバのカストロ首相らと並ぶ最も若い指導者の一人であり、その業績を記した伝記はそのまま朝鮮民主主義人民共和国の建国の歴史であるといえよう。
 日峰著「金日成伝」によると、反日地下組織「朝鮮国民会」の指導者、金亨稷氏の長男として生れた金日成氏は、十四歳のときに祖国解放をめざして鴨緑江を渡り、二年後には中国東北の吉林で共産主義青年同盟を組織、朝鮮革命のたたかいに加わる。柳条溝事件(九・一八事変)のあと、パルチザンの総責任者となった将軍は中国国境にそびえ立つ白頭山に根拠地を置いて日本軍を相手に徹底的な抗日遊撃戦を展開した。
 四五年八月、朝鮮人民革命軍をひきいて祖国に凱旋(がいせん)。四六年二月、北朝鮮人民委員会を樹立、その委員長。四八年九月、朝鮮民主主義人民共和国の成立とともに三十六歳の若さで首相に就任した。五○年六月からの朝鮮戦争では人民軍最高司令官。戦争が終ると将軍は「自力更生」を訴え、有名な千里馬(チョンリマ)運動を全国民の規模に広げ、荒廃した祖国の再建に取組んだ。
 千里馬はけわしい山脈を一気に越え、雲をついて日に千里を駆けたという朝鮮の伝説に出てくる天馬。金日成首相と共和国の国民が打ち出した「千里馬運動」は社会の革命だけでなく、「人間改造」までを急ピッチですすめるという革命運動であり、その精神は七〇年の朝鮮労働党第五回大会で行われた総括報告にも強調された。この大会で同首相は「五六年から七〇年までに工業総生産を二・六倍にふやした」と、経済建設が着実に進んでいる状況を報告した。
 また朝鮮民主主義人民共和国は、中ソ対立のなかで、六六年八月自主路線を打出し、自主、自立、自衛の主体思想を「核」とする国家づくりに進んでいく。「自分のイスがあるのに、なんで他人の二つのイスの間に腰かける必要があろうか」と人民に語りかける金日成首相の姿にいまの共和国のすべてが語りつくされているようでもある。
 朝鮮半島の安全を日本の安全に「緊要」として結びつけた六九年十一月の日米共同声明後の極東情勢に対して、いち早く「日本軍国主義の復活」を強調し、翌七〇年四月の平壌で発表された周恩来中国首相との中朝共同声明でインドシナ三国人民の解放闘争との連帯を叫んだ。国際情勢の推移を見るに実に鋭敏。中ソの間でむつかしい自主路線外交の実をあげつつ、「アジア反帝統一戦線」の結集を提唱してやまぬ革命家である。
 
 
 
 
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